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お勉強は好きですか?
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凛花は部屋に置いてある地図を眺めていた。そもそもこの国の名前すら読めない。オルランド侯爵領がこの地図のどこにあるのかも、今自分がいる場所すら分からない。調べる方法を未だに持っていないのは致命的だった。
情報が欲しい。言葉を話せるのだからこれは死ぬ気で読み書きを覚えるしかないだろう。
「また受験勉強一からやり直しか。いや、ここはあれだわ。いっそ外国に留学したと思えば…。」
受験勉強に費やしたあの日々が遠く感じられた。せっかく合格した大学にももう通う事は出来ないだろう。例えこの世界からどうにかして元の世界に戻れたとしても、時間まで巻き戻されるとは到底思えなかった。
「大学かぁ。一人暮らししてバイトして人並みに恋愛して…。それで?」
大学に進学後自分で進む道を決めるつもりだった。これといった明確な目標があって決めた訳ではなく得意科目から妥当な線で狙って受験をした総合大学。
もちろん異世界で役に立つような知識は凛花の頭の中にはほとんどない。
ピンク色の髪で緑の目をした日本の記憶があるという、きのしたあおい。
あおいは日本でどんな人生を送っていたのだろうか?生まれ変わったと言うのならば日本で死んだ記憶もあるのかもしれない。ひょっとしてこの世界での生活の方が既に長い可能性もある。あおいにはこちらの世界にも家族がいるのだろうか?こちらで生まれて、学園にも通っていたはずなのだから友達も出来ているのかもしれない。
三年前数多くの貴族子息を誘惑して回ったという話だけを聞けばとても意気投合できるとは思えなかった。しかし日本の話を分かってくれるのは今の所彼女しかいない。
「話、出来ないかな、あおいさんと。」
──日本の話って思い出話?そんなのしてもしょうがないか。この異世界のストーリーを教えてもらう?でもそれなら私も少しだけど思い出してる。だったら何を話すの?あおいさんが今何周目で誰狙いかを聞く?違う…。
「私……会って何を話したいの?」
──あっちの世界に帰る方法があるのか、聞く?聞いて、もし『ない』と言われたら?
凛花は地図に並ぶ読めない文字を訳もなくじっと見つめていた。凛花は自分とは違って読み書きも出来るはずのあおいを少しだけずるいと思った。
「迷子だ、私。異世界迷子…。」
どうして、凛花は凛花のままでなければならなかったのだろうか。
凛花の知っている影の騎士ディーのストーリーでは、日本の記憶を持つのはヒロイン一人だけだったはずなのに。
「そっか。私、ヒロインのイベントを邪魔してるんだ?もしかしたらあおいさんは次の転生が出来なくなっちゃうかもしれない?」
あおいはディーと二人で修道院から逃げたりしない。大雨で崖崩れは起きるかもしれないが二人の乗った馬車は巻き込まれないだろう。
「待って?そもそも、あおいさんはストーリーが分かってるのに何でわざわざバッドエンドになったりするの?」
前から気になっていたことが再び頭をよぎる。
ストーリーが分かっているのならばあおいは次の転生を待つ必要などない。初めからルートに乗るよう動けないものだろうか?
王太子狙いならば他の貴族など目に入れずに王太子向けのイベントのみをこなせばいい。
「フィリップ殿下狙いではなかった?」
宰相の息子との婚約は破棄されたと言っていたはずだ。
そうなると次の狙いはダニエルか?でもそうなると国外逃亡で崖崩れ……。いや、違う。崖崩れが起こると事前に分かっているのだから回避すればいいだけの話だ、ちょうど今ダニエル達がそうしようとしているように……。
「それに、ダニエルが殿下の身代わりをしていた時にあおいさんが誘惑してきたって言ってた気が…。」
あおいが王太子ではなくダニエルだと分かっていて行動をしていたのだとしたらどうだろうか?
「最初から…ダニエル狙い?どうしよう?」
何年も前から…ひょっとして前世から下準備をしていたあおいが、ぽっと出の凛花にダニエルを横取りされたと知ったならば……。
「カテリーナ殿下の次はあおいさんなの…?私、殺される???」
──どうして?メインヒーローはフィリップ殿下でしょ?影の騎士は目立たないはずなのに!どこかでストーリーが狂ってる?
凛花は顔を上げて窓の外を見た。今日も朝目覚めると既にダニエルは王宮へ行った後だった。きっと昨日の続きを話し合うためにフィリップ王太子に会いに行っているのだろう。
「ダニエル……。」
本人は三年前に影武者の役目は終わったと言っていた。でも昨日の王太子とダニエルの様子を見る限り、今でも二人の間には特別な信頼関係がある。第二騎士団の副団長だなんてただの肩書にすぎない。王太子に何か起こる前に駆けつけ、その身を持って守るのがきっとダニエルにしかできない本来の役割なのだろう。ダニエルはカテリーナ王女の目に留まる為だけに存在している剣も使えない『顔だけの騎士』ではなかった。
「王太子との信頼関係…。やっぱり、微妙にストーリーが変わってる。」
顔にコンプレックスを持った孤独な影の騎士ディー。この異世界にはそんな人物などもはや存在しない──。
情報が欲しい。言葉を話せるのだからこれは死ぬ気で読み書きを覚えるしかないだろう。
「また受験勉強一からやり直しか。いや、ここはあれだわ。いっそ外国に留学したと思えば…。」
受験勉強に費やしたあの日々が遠く感じられた。せっかく合格した大学にももう通う事は出来ないだろう。例えこの世界からどうにかして元の世界に戻れたとしても、時間まで巻き戻されるとは到底思えなかった。
「大学かぁ。一人暮らししてバイトして人並みに恋愛して…。それで?」
大学に進学後自分で進む道を決めるつもりだった。これといった明確な目標があって決めた訳ではなく得意科目から妥当な線で狙って受験をした総合大学。
もちろん異世界で役に立つような知識は凛花の頭の中にはほとんどない。
ピンク色の髪で緑の目をした日本の記憶があるという、きのしたあおい。
あおいは日本でどんな人生を送っていたのだろうか?生まれ変わったと言うのならば日本で死んだ記憶もあるのかもしれない。ひょっとしてこの世界での生活の方が既に長い可能性もある。あおいにはこちらの世界にも家族がいるのだろうか?こちらで生まれて、学園にも通っていたはずなのだから友達も出来ているのかもしれない。
三年前数多くの貴族子息を誘惑して回ったという話だけを聞けばとても意気投合できるとは思えなかった。しかし日本の話を分かってくれるのは今の所彼女しかいない。
「話、出来ないかな、あおいさんと。」
──日本の話って思い出話?そんなのしてもしょうがないか。この異世界のストーリーを教えてもらう?でもそれなら私も少しだけど思い出してる。だったら何を話すの?あおいさんが今何周目で誰狙いかを聞く?違う…。
「私……会って何を話したいの?」
──あっちの世界に帰る方法があるのか、聞く?聞いて、もし『ない』と言われたら?
凛花は地図に並ぶ読めない文字を訳もなくじっと見つめていた。凛花は自分とは違って読み書きも出来るはずのあおいを少しだけずるいと思った。
「迷子だ、私。異世界迷子…。」
どうして、凛花は凛花のままでなければならなかったのだろうか。
凛花の知っている影の騎士ディーのストーリーでは、日本の記憶を持つのはヒロイン一人だけだったはずなのに。
「そっか。私、ヒロインのイベントを邪魔してるんだ?もしかしたらあおいさんは次の転生が出来なくなっちゃうかもしれない?」
あおいはディーと二人で修道院から逃げたりしない。大雨で崖崩れは起きるかもしれないが二人の乗った馬車は巻き込まれないだろう。
「待って?そもそも、あおいさんはストーリーが分かってるのに何でわざわざバッドエンドになったりするの?」
前から気になっていたことが再び頭をよぎる。
ストーリーが分かっているのならばあおいは次の転生を待つ必要などない。初めからルートに乗るよう動けないものだろうか?
王太子狙いならば他の貴族など目に入れずに王太子向けのイベントのみをこなせばいい。
「フィリップ殿下狙いではなかった?」
宰相の息子との婚約は破棄されたと言っていたはずだ。
そうなると次の狙いはダニエルか?でもそうなると国外逃亡で崖崩れ……。いや、違う。崖崩れが起こると事前に分かっているのだから回避すればいいだけの話だ、ちょうど今ダニエル達がそうしようとしているように……。
「それに、ダニエルが殿下の身代わりをしていた時にあおいさんが誘惑してきたって言ってた気が…。」
あおいが王太子ではなくダニエルだと分かっていて行動をしていたのだとしたらどうだろうか?
「最初から…ダニエル狙い?どうしよう?」
何年も前から…ひょっとして前世から下準備をしていたあおいが、ぽっと出の凛花にダニエルを横取りされたと知ったならば……。
「カテリーナ殿下の次はあおいさんなの…?私、殺される???」
──どうして?メインヒーローはフィリップ殿下でしょ?影の騎士は目立たないはずなのに!どこかでストーリーが狂ってる?
凛花は顔を上げて窓の外を見た。今日も朝目覚めると既にダニエルは王宮へ行った後だった。きっと昨日の続きを話し合うためにフィリップ王太子に会いに行っているのだろう。
「ダニエル……。」
本人は三年前に影武者の役目は終わったと言っていた。でも昨日の王太子とダニエルの様子を見る限り、今でも二人の間には特別な信頼関係がある。第二騎士団の副団長だなんてただの肩書にすぎない。王太子に何か起こる前に駆けつけ、その身を持って守るのがきっとダニエルにしかできない本来の役割なのだろう。ダニエルはカテリーナ王女の目に留まる為だけに存在している剣も使えない『顔だけの騎士』ではなかった。
「王太子との信頼関係…。やっぱり、微妙にストーリーが変わってる。」
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