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大切なキャラメル
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「あ~えっと、とりあえず気がすむまで泣いとく?ついててやるから…。」
参った、これは…どうしたものか?
レジナルドは目の前で大泣きする小さな男の子にどう声をかけたらいいのか迷っていた。兄弟の居ないレジナルドにとって小さい子供とはただでさえ言葉の通じない異国人のような存在であるというのにこの子ときたらさっきから泣いてばかりだ。
久しぶりに王都の商店街でもぶらつこうかと休日に街まで降りてきた所ですぐに泣き声に気が付いた。とりあえず怪我がないことだけは確認したから、少し落ち着くまで待っておくしかないだろう…。
──それにしても…。
レジナルドは辺りを見回して迷子を探しているような人物がいないかと先程から探しているのだが…。一向に現れる気配もない。それどころか周りの大人は目をそらすかのようにこの子を避けて通っている。
もう一度男の子を見る。4歳か5歳だろうか、薄汚れた服から覗く手足はやせ細っており、髪や肌の色艶も決していいとは言えない…。どこかの施設から抜け出してでも来たのだろうか?このままだと騎士団まで連れて行って身元がわかるまで保護することになるが──。
そこまで考えた所で路地の物陰からこちらを見つめているもう一人の男の子が居ることに気が付いた。レジナルドがそちらを見ると決まりが悪そうな顔をして一瞬目を逸らしたが、すぐに思い直したかのように飛び出して駆け寄ってくる。
「騎士様、コイツ連れてかないで?連れてくなら俺にしてよ!」
泣いている子より一回りほど大きな体をしたその子はいきなりレジナルドに詰め寄ってきた。
「君はこの子の友達なの?」
男の子は大きく頷くと泣き止まない男の子を肘で小突いた。
「いい加減泣きやめよ!さっき俺はちゃんと謝ったんだからな?」
「…だって…謝っても…戻ってこない…だろ?」
「食べちゃったものはしょうがないだろう?」
レジナルドはようやく事情が掴めてきてほっと胸を撫で下ろした。二人で食べ物の取り合いで喧嘩になったというところなのだろう。
「君がこの子の食べ物を取っちゃったから泣いてるの?」
「…そうだよ。この前教会に来てた女の人から貰ったお菓子、コイツこっそり隠してたんだよ?」
「大事に取っておいただけなの!」
「見つけたのは俺だもん!」
「まぁまぁ、それで隠してたのを見つけて食べちゃったんだね?」
「…俺、謝ったよ?」
「俺のキャラメル返せよ!」
キャラメルか、争いの原因は…。可愛らしい喧嘩の理由にレジナルドは必死に笑いをこらえると、昨日セシリアから貰ったままポケットに入れっぱなしだったお菓子の包みがまだそこにあるか手探りで確認した。
「それで、君は幾つキャラメルを隠してたの?」
「…二つ」
「じゃあ君は自分の二つとこの子の隠してたの二つの全部で四つ食べたのかな?」
「うん…多分そうだと思う。」
ポケットから包みを取り出して、男の子達の目の前でおもむろに広げてみせる。
「あ!これ俺のと同じキャラメルだ!どうして騎士様が持ってるの?」
「馬鹿!あの女の人から貰ったに決まってるだろ?きっとケッコンしてるんだよ!」
レジナルドは泣いていた男の子の手をとるとそこにキャラメルを二つ置いてやった。
「いいかい?これが君が隠してた分だ、それからこれは私から…。」
その手に三つ目のキャラメルを置いてやる。それを見ていたもう一人にも一つだけ…。
「悪い事をしたと分かって謝ったのは偉かった、だから君にも一つ、これで喧嘩は終わりだ、いいね?」
男の子達はありがとうの言葉を言い終わらないうちに包みを開けて口にキャラメルを放り込む。
「隠してたらまた取られちゃうかもしれないからもうすぐに食べることにした!」
頬に涙の筋を付けたまま男の子が得意そうに二つ目のキャラメルの包みを解いて口に入れる。
レジナルドは空になった包みをポケットに突っ込むと、乱暴に二人の頭を撫でた。
「私が大切に取っておいたキャラメルなんだからよく味わうんだぞ?」
「騎士様はまた貰えるんでしょう?ケッコンしてるんだから!」
レジナルドはその言葉に曖昧に頷いておいた。この子達はキャラメルをくれたのが未来の王妃だなんてきっと知らない、今はまだそれでいい。そんなことを知ったところでこの子達の腹の足しにはならない。
──今日はこのまま王宮に戻ろう。
それにしても…俺、もう結婚してるように見えるのかな?まだ16なんだけど…。
やっぱり子供は異国人と同じで何を考えているのかよく分からない。
参った、これは…どうしたものか?
レジナルドは目の前で大泣きする小さな男の子にどう声をかけたらいいのか迷っていた。兄弟の居ないレジナルドにとって小さい子供とはただでさえ言葉の通じない異国人のような存在であるというのにこの子ときたらさっきから泣いてばかりだ。
久しぶりに王都の商店街でもぶらつこうかと休日に街まで降りてきた所ですぐに泣き声に気が付いた。とりあえず怪我がないことだけは確認したから、少し落ち着くまで待っておくしかないだろう…。
──それにしても…。
レジナルドは辺りを見回して迷子を探しているような人物がいないかと先程から探しているのだが…。一向に現れる気配もない。それどころか周りの大人は目をそらすかのようにこの子を避けて通っている。
もう一度男の子を見る。4歳か5歳だろうか、薄汚れた服から覗く手足はやせ細っており、髪や肌の色艶も決していいとは言えない…。どこかの施設から抜け出してでも来たのだろうか?このままだと騎士団まで連れて行って身元がわかるまで保護することになるが──。
そこまで考えた所で路地の物陰からこちらを見つめているもう一人の男の子が居ることに気が付いた。レジナルドがそちらを見ると決まりが悪そうな顔をして一瞬目を逸らしたが、すぐに思い直したかのように飛び出して駆け寄ってくる。
「騎士様、コイツ連れてかないで?連れてくなら俺にしてよ!」
泣いている子より一回りほど大きな体をしたその子はいきなりレジナルドに詰め寄ってきた。
「君はこの子の友達なの?」
男の子は大きく頷くと泣き止まない男の子を肘で小突いた。
「いい加減泣きやめよ!さっき俺はちゃんと謝ったんだからな?」
「…だって…謝っても…戻ってこない…だろ?」
「食べちゃったものはしょうがないだろう?」
レジナルドはようやく事情が掴めてきてほっと胸を撫で下ろした。二人で食べ物の取り合いで喧嘩になったというところなのだろう。
「君がこの子の食べ物を取っちゃったから泣いてるの?」
「…そうだよ。この前教会に来てた女の人から貰ったお菓子、コイツこっそり隠してたんだよ?」
「大事に取っておいただけなの!」
「見つけたのは俺だもん!」
「まぁまぁ、それで隠してたのを見つけて食べちゃったんだね?」
「…俺、謝ったよ?」
「俺のキャラメル返せよ!」
キャラメルか、争いの原因は…。可愛らしい喧嘩の理由にレジナルドは必死に笑いをこらえると、昨日セシリアから貰ったままポケットに入れっぱなしだったお菓子の包みがまだそこにあるか手探りで確認した。
「それで、君は幾つキャラメルを隠してたの?」
「…二つ」
「じゃあ君は自分の二つとこの子の隠してたの二つの全部で四つ食べたのかな?」
「うん…多分そうだと思う。」
ポケットから包みを取り出して、男の子達の目の前でおもむろに広げてみせる。
「あ!これ俺のと同じキャラメルだ!どうして騎士様が持ってるの?」
「馬鹿!あの女の人から貰ったに決まってるだろ?きっとケッコンしてるんだよ!」
レジナルドは泣いていた男の子の手をとるとそこにキャラメルを二つ置いてやった。
「いいかい?これが君が隠してた分だ、それからこれは私から…。」
その手に三つ目のキャラメルを置いてやる。それを見ていたもう一人にも一つだけ…。
「悪い事をしたと分かって謝ったのは偉かった、だから君にも一つ、これで喧嘩は終わりだ、いいね?」
男の子達はありがとうの言葉を言い終わらないうちに包みを開けて口にキャラメルを放り込む。
「隠してたらまた取られちゃうかもしれないからもうすぐに食べることにした!」
頬に涙の筋を付けたまま男の子が得意そうに二つ目のキャラメルの包みを解いて口に入れる。
レジナルドは空になった包みをポケットに突っ込むと、乱暴に二人の頭を撫でた。
「私が大切に取っておいたキャラメルなんだからよく味わうんだぞ?」
「騎士様はまた貰えるんでしょう?ケッコンしてるんだから!」
レジナルドはその言葉に曖昧に頷いておいた。この子達はキャラメルをくれたのが未来の王妃だなんてきっと知らない、今はまだそれでいい。そんなことを知ったところでこの子達の腹の足しにはならない。
──今日はこのまま王宮に戻ろう。
それにしても…俺、もう結婚してるように見えるのかな?まだ16なんだけど…。
やっぱり子供は異国人と同じで何を考えているのかよく分からない。
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