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親子会議
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スコール団長の指揮する第一騎士団は近衛兵なので王族の警護が主な役割だ。毎年王都で開催される花祭りにはこれまで国王も王太子も参加することがなかった為、唯一お忍びで参加する王女にだけは護衛がしっかりと就けられた。それでもそれほど多くの人数が必要ではない為、余剰人員は例年通りならば市中の警邏にあたる第二騎士団の応援に駆けつけることになる。
「セシリア様は花祭りに降りられないとおっしゃったのだな?」
「はい、ジークにも確認しましたのでそれで間違いありません。」
スコール団長は目の前の名簿に目を落とすと何やら考え込んだ。花祭りでの第一騎士団の配置をどうするか父子で考えているところだった。
「父上、一人リーナ様につけていただきたい騎士がいるのですが…。」
「リーナ様に?誰だ?」
「それが…名前が分からないのです。」
スコール団長は怪訝な顔で息子を見やった。無理もない、例の騎士と話すのは甘いものの事ばかりでこちらから名前を聞く機会がなかったのだ。レジナルドは思いつく限りの特徴を伝えることにした。
「歳は30歳前後、背は高く大柄です。甘いものが好きでよく商店街に通っているようで、少し前はパン屋の娘に、今は果物屋の娘に入れあげている男なのですが…。」
「菓子が好きでパン屋に果物屋…」
何か言いたそうな目で息子を見ながら、スコール団長は再び名簿に目をやった。
「…その特徴から行くとエリックだろうな。」
指さされた先にあるのはエリック・ハイデンの名、伯爵家の次男らしい。金に困った様子はなかったが貴族の出身だったとは予想外だ。
「お願いできますか?」
「…あぁ、いいだろう。しかしなんでエリックを?まさかお前の代わりとでも?」
「違います!ただ、ある人がリーナ様は騎士のようながっしりした体つきの男が好みなのではないかと…。あと、甘いものが好きな方が好ましいということは以前本人もおっしゃってましたし。」
「それは…お前のことを暗にほのめかして…。」
「…分かっていますが、万が一という事もありますし。」
「万が一か…。しかしフェルナンド殿下がエリックと天秤にかけられる日がくるとはな…。」
「父上…」
我が父ながらかなりの毒舌である。だが確かにあの美貌の王太子と一騎士を同列に語るなどおこがましいにも程がある。
「まぁ花祭りの日だからな、身分は問わんが…。」
「父上は例の花祭りの言い伝えを信じておられるのですか?」
「私が?まさか。だが、女性は運命だ宿命だという話が好きだからな。そういえばお前の母上もそうだった…。」
母上が…。
「母上は男爵家の出身だ、父である男爵は騎士団におられたが、私と母上では本来ならば身分が違いすぎた。」
「…運命の相手…だったとおっしゃるのですね?母上は。」
「その結果…亡くなった。運命の相手だと思っていても結ばれることで誰もが幸せになれるとは限らない。」
「それでも母上と結ばれて父上はひと時でも幸せだったのでしょう?」
スコール団長はその問いには答えずにペンを手に取ると、名簿に何かを書き始めた。
地位も名誉も跡継ぎも年齢を考えると信じられないほど整ったその容姿も、全てを兼ね備えた父にただ一つ欠けているものは伴侶の存在だ。レジナルドは知っている。父親にはこの年になっても縁談の話が途絶えたことがない。ひょっとしたら息子である自分よりもその数は多いのではないかと思ったこともあるほどだ。
「私が今望む一番の幸せは、一人息子が幸せになる姿を見ることだろうな…。」
「は?俺?」
「運命はさておき、早く相手を見つけないとジーク様のお子様と同級生の子供を持てないぞ?」
「…そこは申し訳ないけどもう間に合わないと思うよ。」
息子の幸せってより公爵家の跡取りの心配じゃないか?
「セシリア様は花祭りに降りられないとおっしゃったのだな?」
「はい、ジークにも確認しましたのでそれで間違いありません。」
スコール団長は目の前の名簿に目を落とすと何やら考え込んだ。花祭りでの第一騎士団の配置をどうするか父子で考えているところだった。
「父上、一人リーナ様につけていただきたい騎士がいるのですが…。」
「リーナ様に?誰だ?」
「それが…名前が分からないのです。」
スコール団長は怪訝な顔で息子を見やった。無理もない、例の騎士と話すのは甘いものの事ばかりでこちらから名前を聞く機会がなかったのだ。レジナルドは思いつく限りの特徴を伝えることにした。
「歳は30歳前後、背は高く大柄です。甘いものが好きでよく商店街に通っているようで、少し前はパン屋の娘に、今は果物屋の娘に入れあげている男なのですが…。」
「菓子が好きでパン屋に果物屋…」
何か言いたそうな目で息子を見ながら、スコール団長は再び名簿に目をやった。
「…その特徴から行くとエリックだろうな。」
指さされた先にあるのはエリック・ハイデンの名、伯爵家の次男らしい。金に困った様子はなかったが貴族の出身だったとは予想外だ。
「お願いできますか?」
「…あぁ、いいだろう。しかしなんでエリックを?まさかお前の代わりとでも?」
「違います!ただ、ある人がリーナ様は騎士のようながっしりした体つきの男が好みなのではないかと…。あと、甘いものが好きな方が好ましいということは以前本人もおっしゃってましたし。」
「それは…お前のことを暗にほのめかして…。」
「…分かっていますが、万が一という事もありますし。」
「万が一か…。しかしフェルナンド殿下がエリックと天秤にかけられる日がくるとはな…。」
「父上…」
我が父ながらかなりの毒舌である。だが確かにあの美貌の王太子と一騎士を同列に語るなどおこがましいにも程がある。
「まぁ花祭りの日だからな、身分は問わんが…。」
「父上は例の花祭りの言い伝えを信じておられるのですか?」
「私が?まさか。だが、女性は運命だ宿命だという話が好きだからな。そういえばお前の母上もそうだった…。」
母上が…。
「母上は男爵家の出身だ、父である男爵は騎士団におられたが、私と母上では本来ならば身分が違いすぎた。」
「…運命の相手…だったとおっしゃるのですね?母上は。」
「その結果…亡くなった。運命の相手だと思っていても結ばれることで誰もが幸せになれるとは限らない。」
「それでも母上と結ばれて父上はひと時でも幸せだったのでしょう?」
スコール団長はその問いには答えずにペンを手に取ると、名簿に何かを書き始めた。
地位も名誉も跡継ぎも年齢を考えると信じられないほど整ったその容姿も、全てを兼ね備えた父にただ一つ欠けているものは伴侶の存在だ。レジナルドは知っている。父親にはこの年になっても縁談の話が途絶えたことがない。ひょっとしたら息子である自分よりもその数は多いのではないかと思ったこともあるほどだ。
「私が今望む一番の幸せは、一人息子が幸せになる姿を見ることだろうな…。」
「は?俺?」
「運命はさておき、早く相手を見つけないとジーク様のお子様と同級生の子供を持てないぞ?」
「…そこは申し訳ないけどもう間に合わないと思うよ。」
息子の幸せってより公爵家の跡取りの心配じゃないか?
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