騎士様は甘い物に目がない

ゆみ

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型抜きパンプキンクッキー

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「コレは食べては駄目!」
「え?駄目なの?」
「そうよ?父上に先に渡すんだから…。」
「そっか…。じゃ、後でくれるの?」
「レジー、今から持って行くから着いてきて頂戴!」
「あ、うん…分かった。」
 レジナルドが先程から向こうで本を読んでいるジークフリートに目を向けると勝手に行ってこいと言うように手を振っている。レジナルドは先を行くリーナを小走りで追いかけた。
「今日は何かあったの?陛下の誕生日じゃないよね?」
「別に何かの記念日という訳では無いの。」
 部屋から廊下に出て最初の角を曲がったところで、前を歩いていたリーナが急に立ち止まった。
「わ、危ない!ぶつかるとこだったじゃん!」
 リーナは手に持ったクッキーの包みを何も言わずにレジナルドに向けて一つ差し出した。
「何?」
 さっき食べては駄目だと言われたのに急に目の前に差し出されたその包み。レジナルドはリーナがどうして欲しいのか正直分からなかった。
「…やっぱり気が変わったの。レジーに先にあげるわ。」
 リーナは驚くレジナルドに突然クッキーを押し付けると真っ赤な顔をして背を向けた。
「あ、いいの?」
「いいの、私にはレジーが一番だから!」
 レジナルドがクッキーを手にポカンとしているうちにリーナは走る様に先へ行ってしまった。
「…着いて来いって自分で言ったくせに。」
 国王の部屋はそんなに遠い訳でもないからもう追いかける必要もないだろう。レジナルドはしばらくクッキーの包みを手に持ったままどうしようかと迷ったが、そのままジークフリートのいる所に戻ることにした。

「なんだ、随分と早かったな?」
 ジークフリートは手にしていた本から目を上げると直ぐにレジナルドの手にしていた包みに気が付いた。
「これリーナ様がくれたんだ。さっきはあんなに駄目だって言ってたのにさ。ジークも一緒に食べるだろ?」
 レジナルドがジークフリートの隣に腰掛け包みを開けるとまだほんのりと暖かいオレンジ色のクッキーが中から現れた。
「パンプキンクッキーかな?」
 ジークフリートはそれを一つ手に取るとレジナルドの目の前に突きつけた。
「レジーこれ見てみろ、全部ハートの形にくり抜いてある。」
 言われてみればクッキーは全て綺麗なハート形をしている。一つも割れや欠けたものは見当たらない。
「…リーナ様が作ったのかな?」
 ジークフリートは手に持ったクッキーをレジナルドの口に無理矢理押し込むとにっこりと笑った。
「姉上の気持ちだ、受け取ってやれよ?」
 クッキーはカボチャの香りがしてとても甘かった。レジナルド好みの甘いクッキーだ。しかし二枚目を口にするのは戸惑われる。
「どうした?食べないのか?」
「ジークが変な事言うから食べにくいだろ?」
「姉上はレジーに渡す時何も言わなかったのか?」
 レジナルドは先程のリーナの行動を最初から全て思い返してみた。
「そういえば、私にはレジーが一番だからって言ってた気がする。」
 ジークフリートは呆れたようにレジナルドを肘でつついた。
「それ、姉上にしては頑張った方だと思うぞ?」
 レジナルドはジークフリートをじっと見つめた。どうしてリーナはジークフリートの様にハッキリと分かりやすく言わないのだろう…。いい加減周りの者は皆気付いているというのに、リーナがハッキリしないものだからこちらとしても何も出来ない。
「頑張った方かもしれないけど…。」
「またレジーが何か言う前に逃げられたか?」
「そう。…また。」
 ジークフリートは本の続きを読もうと言うように視線を本に戻した。
「お前は…姉上の事どう思ってる?」
 何でもない様に聞いてくるが、きっとそれが一番気になっているのだろう。
「…リーナ様は…リーナ様だよ。大切な人だよ?」
「一番ではないのか?」
 レジナルドはそれには答えずにクッキーを一つ口にした。パンプキンクッキーは美味しいけれどクッキーの中で一番好きなものでは無い気がする。
「今はまだよく分からない。俺の一番はジークだから。」
 誤魔化すようににっと笑ってみせると手を伸ばしてきたジークフリートはクッキーを一つ横取りした。
「じゃあ仕方ない、一枚だけ食べるの手伝ってやる。」
「仕方ないってなんだよ?嬉しいんだろ?本当はさ。」
「なんでレジーに一番だって言われて喜ばないといけないんだよ?」
 じゃれ合う二人の声が廊下に響き、部屋へ入ろうとしていたリーナはそのまま回れ右をした。
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