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真相
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ビューロー侯爵夫人とその娘は前妻の娘であるセシリアの存在を快く思っておらず、長い間虐げてきた。セシリアを幼い頃からわが子のように育ててきた乳母のマリーは、セシリアを一人残して国へ戻る事が何よりも心残りであった。そしてステーリアに戻った後でも何か自分に出来ることはないかと密かに侯爵家の様子を気にかけていたのである。そこへ目を付けたのがフェルナンドの母、ステーリア王妃だった。『可哀そうな姪を助けたいのだ』と言葉巧みに乳母に囁き、様々な手を使ってビューロー侯爵家の事を調べ始めた。
乳母の遠縁の者がヴィルヘルム王宮に侍女として勤めることになったのは1年ほど前のことだ。その頃にはステーリア国内の主だった王太子妃候補者も出揃っていたが、王妃とフェルナンドの目に適う者は誰一人いない…。王妃はヴィルヘルム王宮の侍女を通じて更にビューロー侯爵家の様子を探り、同時に侯爵夫人とその娘を利用し唆すことにした。──決してセシリアを傷付けることはせず追い詰め、侯爵家から追い出すよう仕向けること。しかし王妃の計画は間もなく狂い始める。ビューロー侯爵夫人とその娘は暴走しはじめ、セシリアはよりによってジークフリートの手の内に逃げ込んでしまったのだ。
フェルナンドは決断を迫られていた。手遅れになる前に、早急にセシリアを取り戻しに行かなければならない。
フェルナンドが求めて止まないのはセシリアの中に流れる『血』であった。セシリアにはフェルナンドと同じ由緒正しいステーリアの『血』が流れている。フェルナンドはステーリア王家の血筋を何よりも誇りに思っているし、もちろん自らの妻になる者にもそれを求めた。ところが現在ステーリアにいる王太子妃候補の中に、フェルナンドのお眼鏡に叶うような『血』と『知』を兼ね備えた者は居ない。一番の有力候補であるリーナ王女ではステーリアの『血』を半分しか残すことが出来ないのだ。この際、セシリアの父親がヴィルヘルムの者である事には目を瞑るしかないだろう。全ては未来のステーリア王家の為なのだから。
フェルナンドは直ちにヴィルヘルムへと向かうことに決めた。
長年心に思い描いていたセシリア──。ヴィルヘルムの王宮でその姿を見つけた時、一目でこの人だと分かった。自分と同じ色の髪、紺色の知的で真っ直ぐな瞳、透き通るように白く滑らかな肌──そしてその震える声まで、何もかもが完璧だった。
それなのに──フェルナンドの目の前で、セシリアはこの手から逃げようとしている。迷子のセシリアに差し伸べられる救いの手は自分のこの手である筈だったのに…。自分は間に合わなかったというのか?
──ジークフリートの邪魔さえ無ければ…。
乳母の遠縁の者がヴィルヘルム王宮に侍女として勤めることになったのは1年ほど前のことだ。その頃にはステーリア国内の主だった王太子妃候補者も出揃っていたが、王妃とフェルナンドの目に適う者は誰一人いない…。王妃はヴィルヘルム王宮の侍女を通じて更にビューロー侯爵家の様子を探り、同時に侯爵夫人とその娘を利用し唆すことにした。──決してセシリアを傷付けることはせず追い詰め、侯爵家から追い出すよう仕向けること。しかし王妃の計画は間もなく狂い始める。ビューロー侯爵夫人とその娘は暴走しはじめ、セシリアはよりによってジークフリートの手の内に逃げ込んでしまったのだ。
フェルナンドは決断を迫られていた。手遅れになる前に、早急にセシリアを取り戻しに行かなければならない。
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フェルナンドは直ちにヴィルヘルムへと向かうことに決めた。
長年心に思い描いていたセシリア──。ヴィルヘルムの王宮でその姿を見つけた時、一目でこの人だと分かった。自分と同じ色の髪、紺色の知的で真っ直ぐな瞳、透き通るように白く滑らかな肌──そしてその震える声まで、何もかもが完璧だった。
それなのに──フェルナンドの目の前で、セシリアはこの手から逃げようとしている。迷子のセシリアに差し伸べられる救いの手は自分のこの手である筈だったのに…。自分は間に合わなかったというのか?
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