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最後だから
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大きな音に負けないよう、必要以上に至近距離で会話を続けようとする自称友人たちにイラつくと黙って席を立った。
「ト イ レ」
口の動きだけでそう伝えるとスマホを片手に部屋から外に出る。これでしばらくは戻らなくてもいいだろう。
3年間部活が同じだった友人にこれが最後だから付き合えと呼び出され向かった先はカラオケボックスだった。大体の予想はついていたが今回はいつもより人数が多い上に、中には話したことも無いような連中の顔もチラホラあった。
――わざわざ来なくてもよかったかな。
数時間前に別れたばかりの彼女の事が頭から離れなかった。どうせくだらない話を聞くくらいなら、彼女と少しでも長く一緒にいてやるべきだった――いや、そうしたかったのはむしろ自分の方かもしれない。
『 なしにしてもらえませんか 』
そう言い出しながら既に泣いているのは向こうの方だった。相手から振られるのはこれで何回目だったか――しかも今回は最短記録になりそうな勢いだった。と言うよりもそれ以前の問題か――まだ告白すらされていないという事実。
あんな風に泣かれたらこっちだけが悪者になった気分だった。
「なんであんなことしちゃったんだ、俺。」
「なーに、でっかい独り言?」
「……ヒロト。」
「出るか?ココ。」
「いーのかよ、呼び出したのお前じゃないの?」
「アイツラならいーよ、別にまた直ぐに会えるし。県外に行くのなんてお前と安野くらいじゃない?あと誰かいたっけ?」
「……さぁ。」
廊下をまっすぐ歩いた先にはダーツが数台置かれたスペースがあった。BGMが賑やかに流されてはいるが今は無人だ。なんとなく店外に出るのも気が引けるのでとりあえず椅子を引っ張ってきてそこで二人で座り込むと、ヒロトは向かい側で早速スマホをいじりはじめた。
「ここにいること一応教えとく……かな。」
「そういうとこマメだよな、お前。」
「俺は普通だろ?お前みたいにクールぶっててウケるのが稀なんだよ。」
「……別に、ウケてねーし。」
「そんで?隼くんは何落ち込んでんのさ?」
「は?」
「さっきからスマホばっか気にしてため息ついてんじゃん?当ててやろうか?また女に捨てられたんだろ?」
「残念でした違います。ていうか、またって言い方にかなり悪意がこもってるよね?」
「更に嫉妬を含んでいると思われるな。」
友人――ヒロトはスマホから目を離さずにイヒヒと小さく笑った。3年も同じ部活で過ごしていればお互いの恋愛事情も少しくらいは分かるものだ。
ヒロトは2年の時にバスケ部に付き合っている彼女がいたが半年経たないうちに二股をかけられていたことが分かって別れた。それから今まで特定の相手はいなかったはずだ。
「相手は?誰?」
「……お前も知ってる奴。」
「お、意外!誰だろ……。」
「美術部の、あの子。」
「は?みゆちゃん?マジで?お前フラれたの?」
「……だから振られてはない。」
「んじゃ何なの?つーかいつの間に告られた?卒業式でか?うわー、そうだったんか。」
「いや、告られても……ない。」
ヒロトはスマホから視線を上げるとえ?と言いながら固まった。
「どういう事?いつもなら告られても放置でフラれる感じでしょ?今回は違うバージョン?」
「いや、だから俺もそれがよく分かんないから困ってんじゃん。」
「はぁ?」
「ため息つきたくなるだろ?」
「まぁ、よく分かんねぇけど。でもお前アレだよな、前から俺思ってたんだけど、面倒くさいって言わないのな、みゆちゃんに関しては。」
ヒロトは再びスマホの画面に戻るとどうでも良さそうに画面を適当にタッチし始めた。暇つぶしにゲームでも始めたのだろう。
「そう……かな。今まで面倒くさいと思うほどの関わりもなかったし。」
「だな。で?」
「……」
「何かあったんでしょ?みゆちゃんと。」
「あぁ……なんか……あったね。」
「何?そんなに気にするくらいならお前の方から連絡とればいいじゃん?」
「……」
「うわ……もしかしてマジなヤツ?どうしたんだ隼?」
「お前ウゼェわ、マジで。」
「何で今頃覚醒した訳?遅すぎじゃね?お前来週には東京――」
「分かってるって!」
「……」
「それは俺自身が一番よく分かってる。」
ヒロトはいきなり椅子から立ち上がると、スマホを無造作にポケットに突っ込んだ。
「あー。俺、そろそろ戻るわ。隼は?帰るんだろ?」
「……」
「まだ引っ越しまでもう少し時間あるんだしさ、お前よく考えろよ、イロイロと。」
「……分かってる。……イロイロありがと。」
「ウワ、今めっちゃ寒気がした。」
ヒロトはもう一度イヒヒと笑うと、まぁがんばれよと小さな声で言いながら手を振って戻って行った。
入れ代わるように見知らぬ客が3人大声で騒ぎながらダーツルームに近付いてくる。
──俺こんなとこで何してんだろ。
「ト イ レ」
口の動きだけでそう伝えるとスマホを片手に部屋から外に出る。これでしばらくは戻らなくてもいいだろう。
3年間部活が同じだった友人にこれが最後だから付き合えと呼び出され向かった先はカラオケボックスだった。大体の予想はついていたが今回はいつもより人数が多い上に、中には話したことも無いような連中の顔もチラホラあった。
――わざわざ来なくてもよかったかな。
数時間前に別れたばかりの彼女の事が頭から離れなかった。どうせくだらない話を聞くくらいなら、彼女と少しでも長く一緒にいてやるべきだった――いや、そうしたかったのはむしろ自分の方かもしれない。
『 なしにしてもらえませんか 』
そう言い出しながら既に泣いているのは向こうの方だった。相手から振られるのはこれで何回目だったか――しかも今回は最短記録になりそうな勢いだった。と言うよりもそれ以前の問題か――まだ告白すらされていないという事実。
あんな風に泣かれたらこっちだけが悪者になった気分だった。
「なんであんなことしちゃったんだ、俺。」
「なーに、でっかい独り言?」
「……ヒロト。」
「出るか?ココ。」
「いーのかよ、呼び出したのお前じゃないの?」
「アイツラならいーよ、別にまた直ぐに会えるし。県外に行くのなんてお前と安野くらいじゃない?あと誰かいたっけ?」
「……さぁ。」
廊下をまっすぐ歩いた先にはダーツが数台置かれたスペースがあった。BGMが賑やかに流されてはいるが今は無人だ。なんとなく店外に出るのも気が引けるのでとりあえず椅子を引っ張ってきてそこで二人で座り込むと、ヒロトは向かい側で早速スマホをいじりはじめた。
「ここにいること一応教えとく……かな。」
「そういうとこマメだよな、お前。」
「俺は普通だろ?お前みたいにクールぶっててウケるのが稀なんだよ。」
「……別に、ウケてねーし。」
「そんで?隼くんは何落ち込んでんのさ?」
「は?」
「さっきからスマホばっか気にしてため息ついてんじゃん?当ててやろうか?また女に捨てられたんだろ?」
「残念でした違います。ていうか、またって言い方にかなり悪意がこもってるよね?」
「更に嫉妬を含んでいると思われるな。」
友人――ヒロトはスマホから目を離さずにイヒヒと小さく笑った。3年も同じ部活で過ごしていればお互いの恋愛事情も少しくらいは分かるものだ。
ヒロトは2年の時にバスケ部に付き合っている彼女がいたが半年経たないうちに二股をかけられていたことが分かって別れた。それから今まで特定の相手はいなかったはずだ。
「相手は?誰?」
「……お前も知ってる奴。」
「お、意外!誰だろ……。」
「美術部の、あの子。」
「は?みゆちゃん?マジで?お前フラれたの?」
「……だから振られてはない。」
「んじゃ何なの?つーかいつの間に告られた?卒業式でか?うわー、そうだったんか。」
「いや、告られても……ない。」
ヒロトはスマホから視線を上げるとえ?と言いながら固まった。
「どういう事?いつもなら告られても放置でフラれる感じでしょ?今回は違うバージョン?」
「いや、だから俺もそれがよく分かんないから困ってんじゃん。」
「はぁ?」
「ため息つきたくなるだろ?」
「まぁ、よく分かんねぇけど。でもお前アレだよな、前から俺思ってたんだけど、面倒くさいって言わないのな、みゆちゃんに関しては。」
ヒロトは再びスマホの画面に戻るとどうでも良さそうに画面を適当にタッチし始めた。暇つぶしにゲームでも始めたのだろう。
「そう……かな。今まで面倒くさいと思うほどの関わりもなかったし。」
「だな。で?」
「……」
「何かあったんでしょ?みゆちゃんと。」
「あぁ……なんか……あったね。」
「何?そんなに気にするくらいならお前の方から連絡とればいいじゃん?」
「……」
「うわ……もしかしてマジなヤツ?どうしたんだ隼?」
「お前ウゼェわ、マジで。」
「何で今頃覚醒した訳?遅すぎじゃね?お前来週には東京――」
「分かってるって!」
「……」
「それは俺自身が一番よく分かってる。」
ヒロトはいきなり椅子から立ち上がると、スマホを無造作にポケットに突っ込んだ。
「あー。俺、そろそろ戻るわ。隼は?帰るんだろ?」
「……」
「まだ引っ越しまでもう少し時間あるんだしさ、お前よく考えろよ、イロイロと。」
「……分かってる。……イロイロありがと。」
「ウワ、今めっちゃ寒気がした。」
ヒロトはもう一度イヒヒと笑うと、まぁがんばれよと小さな声で言いながら手を振って戻って行った。
入れ代わるように見知らぬ客が3人大声で騒ぎながらダーツルームに近付いてくる。
──俺こんなとこで何してんだろ。
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