11 / 21
一年前の後悔
しおりを挟む
長い、長い、長い1日だった気がする。でもまだ土曜日、3月9日まであと6日……と言っても、学校がある平日には先輩と会う事はできない。
「そっか、1週間じゃなくなったんだった……。」
どうしてそういう話になったんだったかとぼんやりと考えていると、ある事が気になり始めベッドの上でがばっと起き上がる。慌てて机の上のカレンダーに手を伸ばした。
「卒業式が3月2日……引っ越しはその10日後って言ってたから、3月12日?月曜日なんだ……平日、か。」
3月9日までだった期限が3日間だけ延長されたという事ならば、最後にもう1度一緒に週末を過ごすことが出来るかもしれないと気が付いた。きっとそれが最後──。
「あ、今日ひな祭りだったんだ……全然気が付かなかった。」
ベッドの枕元に置いたスマホから鈍い音がした。先輩からのメールだろうか?
数日前までは着信があろうがメールが来ようが気が向くまでスマホを放置していた自分が、スマホの鳴らす音に妙に敏感になっていることが寂しくも笑えた。
” 美優、明日暇? ”
「幸?──ていうか何これ、漢字だらけじゃん。」
” 暇じゃないけど、何? ”
” 暇じゃないならいいや ”
” 何それ?逆に気になる ”
” 部室の鍵持ってるよね?ちょっと忘れ物。急ぎじゃないから月曜でもいいんだけど ”
「あー。鍵か。」
” いいよ、明日取りに来る? ”
” 助かる。午前中家にいる?9時くらいに取りに行く ”
” OK ”
幸太の家は一つ先のバス停近くだったと思う。中学校が別だったから知らなかったけれど、お互いに意外と家が近い場所だった事が分かった時は随分と驚いた記憶がある。それ以来、幸は部活帰りにバスが同じになったりすると家の前まで送ってくれることもあった。
それきり会話は終わったものだと思っていたら、しばらくして幸の方から着信がきた。
『 ごめん、今いい? 』
「うん、いいよ。どうした?」
『 明日さ、美優も一緒に行く? 』
「学校?忘れ物取りに行くんでしょ?鍵なら月曜日に学校に持って来てくれればいいから。」
『 月曜の朝はムリ。俺朝は部室に顔出さない主義なの知ってるでしょ? 』
「あ…そうでした。」
『 何か予定があるの?明日。 』
「ううん、特には……」
少し棘を含んだ幸の物言いにもやっとしながら時計に目を向ける。まだ夜の8時だ。先輩は夕方から用事があると言っていたからもしかしたらまだ帰って来ていないかもしれない。
──そういえば、先輩と何も約束できなかったな。明日も休みなのに。
幸には今まで散々相談にのってもらってきたというのに、卒業式後先輩との間に起きたことに関してはまだ何も話せていなかった。電話で話すような内容でもないし、明日直接幸に会って話すのがいいかもしれない。
『 じゃあ一緒に来いよ。 』
「うん……分かった。」
『 明日9時ね。 』
その後、何度スマホをチェックしてみても、先輩からの連絡は来ていなかった。
──ノープランのままこっちから連絡とるのも気まずいけど、貴重な休日をもやもやしたまま過ごしたくないし。もう少ししたら、私の方から連絡してみよう。
そう考えるものの自分の行きたい場所もなければ先輩を連れて行きたい所も一緒にしたいことも何一つとして思い浮かばなかった。とにかく、口実は何でもよかった。──ただ先輩に会えればそれだけで。
机の上には広げたままのノートが放置されている。高2の3学期もあと少しで終わりというこの時期に一体自分は何を新しく始めようとしているんだろう。
とにかく時間がない、焦る気持ちは強かった。もう少し動き出すのが早かったら……1年前だったら状況は違っていたかもしれない。部活終わりに話をしながら一緒に帰るだけで、週末にぽっかりと空いた少しの時間で連絡を取り合うだけで──普通に幸せを感じていただろうか?
でも、1年前の私は何もしなかった。自分が何かを行動に移すことによって、今の状況が壊れるのが怖かった。先輩をこっそりと目で追いかける事すらできなくなるくらいなら何もしたくなかった。
──今はもう何をどう頑張ったって会えなくなるのが分かってるから、あの時とは違う。
” 会いたいです ”
このシンプルなたった6文字を送ろうかどうしようか……。文字を打って消しての繰り返しでどんどん時間が過ぎていく。
「あー駄目だ、無理。とりあえずお風呂入ってからにしよう。」
立ち上がろうとスマホを置いたところで、着信のバイブが響いた。
「そっか、1週間じゃなくなったんだった……。」
どうしてそういう話になったんだったかとぼんやりと考えていると、ある事が気になり始めベッドの上でがばっと起き上がる。慌てて机の上のカレンダーに手を伸ばした。
「卒業式が3月2日……引っ越しはその10日後って言ってたから、3月12日?月曜日なんだ……平日、か。」
3月9日までだった期限が3日間だけ延長されたという事ならば、最後にもう1度一緒に週末を過ごすことが出来るかもしれないと気が付いた。きっとそれが最後──。
「あ、今日ひな祭りだったんだ……全然気が付かなかった。」
ベッドの枕元に置いたスマホから鈍い音がした。先輩からのメールだろうか?
数日前までは着信があろうがメールが来ようが気が向くまでスマホを放置していた自分が、スマホの鳴らす音に妙に敏感になっていることが寂しくも笑えた。
” 美優、明日暇? ”
「幸?──ていうか何これ、漢字だらけじゃん。」
” 暇じゃないけど、何? ”
” 暇じゃないならいいや ”
” 何それ?逆に気になる ”
” 部室の鍵持ってるよね?ちょっと忘れ物。急ぎじゃないから月曜でもいいんだけど ”
「あー。鍵か。」
” いいよ、明日取りに来る? ”
” 助かる。午前中家にいる?9時くらいに取りに行く ”
” OK ”
幸太の家は一つ先のバス停近くだったと思う。中学校が別だったから知らなかったけれど、お互いに意外と家が近い場所だった事が分かった時は随分と驚いた記憶がある。それ以来、幸は部活帰りにバスが同じになったりすると家の前まで送ってくれることもあった。
それきり会話は終わったものだと思っていたら、しばらくして幸の方から着信がきた。
『 ごめん、今いい? 』
「うん、いいよ。どうした?」
『 明日さ、美優も一緒に行く? 』
「学校?忘れ物取りに行くんでしょ?鍵なら月曜日に学校に持って来てくれればいいから。」
『 月曜の朝はムリ。俺朝は部室に顔出さない主義なの知ってるでしょ? 』
「あ…そうでした。」
『 何か予定があるの?明日。 』
「ううん、特には……」
少し棘を含んだ幸の物言いにもやっとしながら時計に目を向ける。まだ夜の8時だ。先輩は夕方から用事があると言っていたからもしかしたらまだ帰って来ていないかもしれない。
──そういえば、先輩と何も約束できなかったな。明日も休みなのに。
幸には今まで散々相談にのってもらってきたというのに、卒業式後先輩との間に起きたことに関してはまだ何も話せていなかった。電話で話すような内容でもないし、明日直接幸に会って話すのがいいかもしれない。
『 じゃあ一緒に来いよ。 』
「うん……分かった。」
『 明日9時ね。 』
その後、何度スマホをチェックしてみても、先輩からの連絡は来ていなかった。
──ノープランのままこっちから連絡とるのも気まずいけど、貴重な休日をもやもやしたまま過ごしたくないし。もう少ししたら、私の方から連絡してみよう。
そう考えるものの自分の行きたい場所もなければ先輩を連れて行きたい所も一緒にしたいことも何一つとして思い浮かばなかった。とにかく、口実は何でもよかった。──ただ先輩に会えればそれだけで。
机の上には広げたままのノートが放置されている。高2の3学期もあと少しで終わりというこの時期に一体自分は何を新しく始めようとしているんだろう。
とにかく時間がない、焦る気持ちは強かった。もう少し動き出すのが早かったら……1年前だったら状況は違っていたかもしれない。部活終わりに話をしながら一緒に帰るだけで、週末にぽっかりと空いた少しの時間で連絡を取り合うだけで──普通に幸せを感じていただろうか?
でも、1年前の私は何もしなかった。自分が何かを行動に移すことによって、今の状況が壊れるのが怖かった。先輩をこっそりと目で追いかける事すらできなくなるくらいなら何もしたくなかった。
──今はもう何をどう頑張ったって会えなくなるのが分かってるから、あの時とは違う。
” 会いたいです ”
このシンプルなたった6文字を送ろうかどうしようか……。文字を打って消しての繰り返しでどんどん時間が過ぎていく。
「あー駄目だ、無理。とりあえずお風呂入ってからにしよう。」
立ち上がろうとスマホを置いたところで、着信のバイブが響いた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる