思い出に花を、君に唄を

コップ

文字の大きさ
6 / 20

燃えた書類と閉まった扉

しおりを挟む
 俺たちはクビにならなかったまでも、責任を全て逃れたわけではなかった。
 だからこそ、俺は問題をよく生み出す部下と燃えカスになってしまった紙の山の片付けと、燃えてしまった記録をパソコン上のデータに起こす作業を行っている。
「いや~。あの上司、本当にウザいですね。故意に燃やしたわけじゃないって言ってるのに、聴きやしない。あの頭でっかち、何とかならないですかね?」
 部下は燃えカスを箒で集めながら、上司への文句を垂れ流している。
 正直、部下が何を言おうと俺には知ったこっちゃないが、これに答えて声をかけてやるのがいい上司というものだろう。
「元はと言えば、故意ではなかったにしろお前が火事を引き起こしたからこんなことになったんだろう?まぁ、これで書類の管理はだいぶ楽になったんだから、結果的には良かったんじゃないか?」
 元々、クビにならないように自分達が提案したことだ。言い出しっぺであるからには、ある程度のことはしなければならない。
「そうなんすかねぇ……」
 部下はどこか納得のいかない様子だったが、それ以上文句は言わずに黙って箒でゴミを集め始めた。


「やっと終わった~」
 黙々と作業を続け、整理が全て終わったのは時計の針が24時を通り越した頃だ。
「何とか終電までには間に合いそうですね!」
 仕事をやり遂げたように部下は満足そうだが、こいつが間違ってデータを消したり、ゴミをぶちまけたりしなければもっと早く終わるはずだった。
「そうだな。戸締まりするから先帰れ」
 そう言って部下を部屋から追い出す。
 あいつがこれ以上ここに居ると、また新しい問題を起こしかねない。
「分かりました!それじゃあ、また明日もお願いします!お疲れ様です!」
 元気いっぱいに挨拶をして、部下は帰って行った。
 俺は軽く部屋の掃除をし、戸締まりをした後、会社を出た。
 外に出ると、真っ暗な景色と冷たい風に迎えられた。大変な作業を終えた後にこの冷たい風は体に染みる。
 特に何を考えるでもなく、朝とは違う風の冷たさ、静かさに身を任せて帰路に着く。
 

 家に辿り着き、ドアノブを捻る。
 ガチャガチャ。
 鍵が閉まっていた。
 普段なら開いているのだが、心配性な妻が閉めてしまったのだろう。
 俺は諦めて、家のインターホンを鳴らす。
 インターホンを鳴らすと、すぐに妻が扉を開けて出てきてくれた。
「何か言うことはある?」
 何故だか妻は怒っていた。
 きっと、まだ眠れていないのが原因だと踏んだ俺は口を開く。
 「俺が遅かった時は先に寝ていて構わない。何なら、鍵も閉めなくていいよ」
 「そうじゃないでしょ!」
 俺の予想は大外れしたらしい。
 妻は俺の言葉を聞くや否や「もう知らない!」と吐き捨てて、怒ったまま寝室へ行ってしまった。
 謝ろうと思ったが、寝室の扉には鍵がかけられ、入れなくなっていた。
 こういう時はそっとしておいた方がいい。
 そう思った俺はお風呂に入り、机の上に置かれた晩御飯を食べた。
 ご飯は冷めきっていたが、それでも疲れた体に良く効いた。
 このまま寝たいところだが、今は寝室に入ることすらできない。
 俺は諦めて、ソファの上で寝ることにした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...