彷徨うペンギン

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小さなキリンの小さな勇気

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 謝罪をしたのは、大きなキリンではなく、今にも泣き出しそうな小さなキリンだった。
 前に出てきた小さなキリンは、少し押せば倒れてしまいそうなほど震えていた。

 ペンギンは、そんな小さな勇気のある小さなキリンの言葉を待った。

 「ごめんなさい。僕が弱いせいで。僕が泣き虫なせいで。お父さんは僕らのためにできることは何でもしてくれたんだ。だから、お父さんを責めないでください。お願いします!」

 小さなキリンは震える体。震える声で、ペンギンに言った。「ゆるしてくれ」と。

 小さな勇者にここまでされて何も感じないほどペンギンは馬鹿じゃない。
 ペンギンはそれだけの自制も理性も備えているつもりだった。少し思うところが無くはないが、それでも、この小さなキリンの勇気には答えてあげるべきだ。

 「小さなキリン君。君はすばらしいよ。君のお父さんいできなかったことをあっさりとやってのけてしまえるのだから。そういう意味では、君はお父さんを超えているね。さぁ、子供にここまで言わせたんだ。あなたはどうする?」

 もちろん子供の勇気には答えてあげる。しかし、ペンギンの中ではそれとこれとはやはり違った。
 子供がここまで言えるのなら、親が言えない。それはそれで別の問題が出てくる。

 それすらいえない親は子供を育てる資格がない。

 キリンが歯ぎしりをしているのが聞こえるが、ペンギンは静かにキリンの言葉を待った。
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