カナリアボックス〜あなたに会えてよかった〜

本田すみれ

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リンダリンダ

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その日、笑可は絶不調だった。
前日に市販薬ODしたらしく青白い顔で声に元気がなかった。
「夢にあの二人が出てきたの」
「それならオレの夢を見て!」
そう言いながら彼女を優しく抱きしめた。

静かに泣く笑可。
こんな時に空気を読んでるのか読まずなのか、KANの愛は勝つが流れ出した。

心配ないからね
君の想いが誰かに届く
明日がきっとある

きっとと断言しないのがいいのか、悪いのか。
そんなことすらひたすら続く全部サビみたいな贅沢なメロディでどうでもよくなる。

どんなに困難でくじけそうでも~から
必ず最後に愛は勝つの力強い歌詞でイントロの歌詞を超えていく。
もう、国歌これでいいでしょ。

笑可の体温がどんどん熱くなる。
泣いてるからなのか、なんなのか。
「母がスゴく好きな歌で一時期聞かされてたけどこんなにいい歌だったんだね」

サブスクからはFLYING KIDSのとまどいの時を超えても流れ出す。
今の時代の歌より、明るく前向きな歌が多い印象だ。
やたら早口で何を伝えたい歌詞なんかより、言葉を大切にメロディがしっかり頭に残る90年代、00年代、あとは昭和歌謡の歌の方が好きかもしれない。

山沢さんがやたら、最近の音楽に否定的で自分の作風がミドルテンポな歌が多く時代についていけないのも大きいか。
山沢さんはヒマな時にひたすらボクや笑可に80年代~00年代の音楽のプレイリストをLINE MUSICで渡してくる。

いつしか、笑可との話題は色んな歌の感想になっていた。
あるいは最近やはりバズってるピーナッツくんの刀ピークリスマス2023の歌だったり。

今年もピーナッツくんは期待値を超えてきた。
あの豆め。イキリ豆め。

笑可は調子を取り戻したらしく、「家にいても勉強と作曲以外やることなくてヒマだよぉ」とぼやく。
ボクは「早く15曲くらい作って聞かせてよ。プロのバンドのデモテープ聞かせ合い並に意見するから」
と伝えた。
すると、彼女は困った顔で「どうしても同じようなコード進行の曲ばかりになっちゃうよぉ」とぼやいた。

「どうせ歌のコード進行なんて、余程の音楽マニア以外注意深く聴いてないからひたすら同じコード進行で何百曲つくっても気付かれないよ。
これは山沢さんの発言の受け売りな」

山沢さんも相当音楽に気合いを入れてるんだか、手を抜いてるんだかわからない人物である。

「笑可ちゃんに対しては普段即興でテキトーに歌詞を歌ってる人間が突然ノートにある程度推敲して歌詞書くようなスタンスで、接していきたいよ」とボクは伝える。
すると、笑可は笑みを浮かべて「私のこと、そんなに大切に思ってくれるんだね」と白い息を吐きつつ言った。

寒い。
手がかじかむ。
今日は笑可の体調悪いし、ボクも気乗りしないから家庭教師ごっこはいいか。

「愛のバクダンもっとたくさん落っことしてくれぇ!」
ボクがいきなりシャウトすると、笑可はビックリした表情で「どうしたの?」と言った。

「元気なさそうだったから、B’zの暑苦しさが必要かなって」
「でも、今日見た悪夢をだんだん忘れれてるよ。豹馬くんのおかげで」
「それならよかった」

2人で居間で温かいココアを飲む。
日中、共働きの笑可の両親はいない。
事件当初は3日だけ母がいてくれたようだ。
それでも娘が市販薬をODするのには否定的で、「あんたをそんなコに産んだ覚えはない」とドギツイ言葉を投げかけられたこともあるらしい。

「小さい頃の話でもしよっか」
「そうだね、そうしよう笑可」

彼女は何を話し出すんだろう?

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