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プルシアンブルー
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「ごめん、やっぱりなんか怖くなってきた。緊張で吐きそう。踏み出すのが怖い。
私の作った歌に意味はあったかな」
これからライブをするって日曜日の17:45。
12時にリハを終えた笑可は儚い笑みを浮かべつつ、言った。
「しょうがないなあ。今からこの曲歌ってみるよ」
そしてhideさんのROCKET DIVEを歌った。
「今のは?」
「XJAPANのギタリストhideさんの遺した歌、ROCKET DIVEだよ。
山沢さんが高校時代にX好きな友達に勧められても人から何か勧められると逆に乗っかりたくないってなるひねくれた性格の彼が十何年も経ってから、なんとなくX調べてラーメン屋で暴れまくる元気が出るテレビでのXを見てから、彼らにハマってオレにも勧めてきたんだ。
赤い髪のエイリアンのロック、かっこよくないか?」
「待ってるだけの昨日にアディオースとかよかった」
「いいか? 心に火を灯してけ。激しいヘビメタ、胸の奥で鳴り響かせろ。
今日という今日に後悔するな。
もう、笑可が活動するだけで励まされる男女がいることを胸に刻んで歌え!」
ボクは弱気なアイドルを送り出すマネージャーのような感覚で彼女の背中を押した。
「完璧なロケットになった気分でがんばってくるね」
ついにステージへゆっくり進んでく笑可。
1人の観客(彼女の友達)が拍手をする。
「ありがとう」と短く答える彼女。
ステージの脇から笑可を見つめる。
君ならやれるはずだ!
1曲目を震える声で歌う笑可。
うっすら涙を浮かべているような気がする。
それでも彼女は画面の向こうの観客や目の前の友達の為に歌っていた。
3曲目を歌い終えた後、笑可はMCをし始めた。
「……性被害を受けた時はこの世の終わりかと思いました。今日ここに立てたのは私を真剣に心配してずっといてくれた親友の豹馬くんって人のおかげです。……出てきてほしい」
そう促され、ステージへボクは上がる。
「いきなり呼ぶなよ。ビックリしたじゃないか」
「でも今まで本当にありがとう。これからもよろしくね。今日はハーモニカ持ってきてないんだ」
「演奏すれば盛り上がったな。次は持ってくる。
それじゃまた引っ込むけど最後まで頑張れよな」
「今のは私の幼なじみでもちろん事件のことも知ってます。それでも私をひたすら元気づける行動をしてくれたイケメンです。
彼がいなかったら、どうなってたかわからないです。
死のうと思って橋の手すりに手をかけてた私を彼は走って駆けつけてくれました」
ここで事情を全て知った彼女の友達がすすり泣く声が聞こえてきた。
「弓歌ちゃん、泣かないでよ。私まで泣きそうになるから」
「だって、笑可がそんな大変な目に遭ってるの知らなかったから。もっと早く相談してくれれば良かったのに。
私は小学生の時に好きな男の子への想いを勝手にバラされてイヤな思いしたから、人の秘密とかを話さないし」
「まあ、だから弓歌のことは呼んだんだけどね。初ライブなんだけどどうかな?」
「一生懸命歌ってて、笑可ちゃんカッコイイよ。有名になっちゃったら私に最初のサイン書いて欲しい」
ボクはカバンの筆箱からマジックを取り出し、笑可の元まで走っていった。
「あれ、豹馬どうしたの? あっ、これは」
「今から書けるよね」
笑可は「どこに書いて欲しい?」と聞きながら弓歌に尋ねた。
「ここに!」と白シャツを指して弓歌が答える。
弓歌の着ている長袖のシャツにマジックでemikaと書いていく彼女。
「うわあ、本当に私が初サインの持ち主になっちゃった。いつまでも大切にとっとく!」
カメラを撮る女性カメラマンも笑顔で映像を撮り続けている。
なんだよ、この空間。
ボクいちゃダメなんじゃないか?
女子会の光景を作りたい。
がために、カバンに入れといた新品の紫髪ロングのウイッグを急いで手入れしてかぶる。
PAの女性(未婚彼氏探し中)がボクを見て微笑む。
5曲目に笑可は気合いの入ったMCをして、カナリアボックスをカバーした。
彼女が希望に満ちた歌詞を歌うと説得力がおかしい。
もちろんオリジナルのLUNKHEADの小高さんの歌も
ブログで性被害に遭った女性を通して『同じ男として許せない』と書いているからこそ、どこまでも推せる!ってなるのだけど。
明るい歌なのに、笑可が歌うと原曲よりもシリアスに聞こえる。
弓歌ちゃんはもう大声で泣いてる。
つられて笑可すら泣きそうになってる。
最後に茜色の夕日(フジファブリック)をカバーし始めた笑可。
最後のサビの前の僕じゃきっと出来ないな~の部分でついに笑可は泣き続けて歌えなくなってしまった。
舞台脇から出て、ボクはステージのマイクの前に立ち最後のサビを歌い上げる。
笑可もそんなボクの乱入に驚きつつ、最後の歌詞の部分だけ歌った。
笑可の初ライブは成功に終わった。
その後、疲れたのか言葉少なな彼女を放っておいてやりXで#エミカライブで検索かけたりすると、性被害の女性たちが「いいライブだった」
「紫髪のウイッグの男の子が彼女の大切な人なんだよね」
「久しぶりにライブ見たけど、笑可ちゃんにはもっと有名になってほしい」
「レイプ犯は女性の心を殺せた気でいるんだろうけど、私たちのアイコンは美しい歌を歌った」
など絶賛の嵐だった。
これでよかったんだ。
日曜日の夕日を見逃したけれども。
打ち上げに弓歌を呼び、3人で少しだけライブを見返しカナリアボックスと茜色の夕日のカバーの部分で3人で泣いてしまった。
食事をしながら、弓歌ちゃんは空気をよんで「学校に来なよ」みたいな話はしなかった。
その代わり、笑可のライブの感想をひたすら述べて彼女の手首の傷を見つめて触りつつ「悲しみが手首に現れたんだよね」と言った。
2人して泣くから、ボクはコウメ太夫のモノマネをして必死に彼女たちを笑わせることにしたのだった。
私の作った歌に意味はあったかな」
これからライブをするって日曜日の17:45。
12時にリハを終えた笑可は儚い笑みを浮かべつつ、言った。
「しょうがないなあ。今からこの曲歌ってみるよ」
そしてhideさんのROCKET DIVEを歌った。
「今のは?」
「XJAPANのギタリストhideさんの遺した歌、ROCKET DIVEだよ。
山沢さんが高校時代にX好きな友達に勧められても人から何か勧められると逆に乗っかりたくないってなるひねくれた性格の彼が十何年も経ってから、なんとなくX調べてラーメン屋で暴れまくる元気が出るテレビでのXを見てから、彼らにハマってオレにも勧めてきたんだ。
赤い髪のエイリアンのロック、かっこよくないか?」
「待ってるだけの昨日にアディオースとかよかった」
「いいか? 心に火を灯してけ。激しいヘビメタ、胸の奥で鳴り響かせろ。
今日という今日に後悔するな。
もう、笑可が活動するだけで励まされる男女がいることを胸に刻んで歌え!」
ボクは弱気なアイドルを送り出すマネージャーのような感覚で彼女の背中を押した。
「完璧なロケットになった気分でがんばってくるね」
ついにステージへゆっくり進んでく笑可。
1人の観客(彼女の友達)が拍手をする。
「ありがとう」と短く答える彼女。
ステージの脇から笑可を見つめる。
君ならやれるはずだ!
1曲目を震える声で歌う笑可。
うっすら涙を浮かべているような気がする。
それでも彼女は画面の向こうの観客や目の前の友達の為に歌っていた。
3曲目を歌い終えた後、笑可はMCをし始めた。
「……性被害を受けた時はこの世の終わりかと思いました。今日ここに立てたのは私を真剣に心配してずっといてくれた親友の豹馬くんって人のおかげです。……出てきてほしい」
そう促され、ステージへボクは上がる。
「いきなり呼ぶなよ。ビックリしたじゃないか」
「でも今まで本当にありがとう。これからもよろしくね。今日はハーモニカ持ってきてないんだ」
「演奏すれば盛り上がったな。次は持ってくる。
それじゃまた引っ込むけど最後まで頑張れよな」
「今のは私の幼なじみでもちろん事件のことも知ってます。それでも私をひたすら元気づける行動をしてくれたイケメンです。
彼がいなかったら、どうなってたかわからないです。
死のうと思って橋の手すりに手をかけてた私を彼は走って駆けつけてくれました」
ここで事情を全て知った彼女の友達がすすり泣く声が聞こえてきた。
「弓歌ちゃん、泣かないでよ。私まで泣きそうになるから」
「だって、笑可がそんな大変な目に遭ってるの知らなかったから。もっと早く相談してくれれば良かったのに。
私は小学生の時に好きな男の子への想いを勝手にバラされてイヤな思いしたから、人の秘密とかを話さないし」
「まあ、だから弓歌のことは呼んだんだけどね。初ライブなんだけどどうかな?」
「一生懸命歌ってて、笑可ちゃんカッコイイよ。有名になっちゃったら私に最初のサイン書いて欲しい」
ボクはカバンの筆箱からマジックを取り出し、笑可の元まで走っていった。
「あれ、豹馬どうしたの? あっ、これは」
「今から書けるよね」
笑可は「どこに書いて欲しい?」と聞きながら弓歌に尋ねた。
「ここに!」と白シャツを指して弓歌が答える。
弓歌の着ている長袖のシャツにマジックでemikaと書いていく彼女。
「うわあ、本当に私が初サインの持ち主になっちゃった。いつまでも大切にとっとく!」
カメラを撮る女性カメラマンも笑顔で映像を撮り続けている。
なんだよ、この空間。
ボクいちゃダメなんじゃないか?
女子会の光景を作りたい。
がために、カバンに入れといた新品の紫髪ロングのウイッグを急いで手入れしてかぶる。
PAの女性(未婚彼氏探し中)がボクを見て微笑む。
5曲目に笑可は気合いの入ったMCをして、カナリアボックスをカバーした。
彼女が希望に満ちた歌詞を歌うと説得力がおかしい。
もちろんオリジナルのLUNKHEADの小高さんの歌も
ブログで性被害に遭った女性を通して『同じ男として許せない』と書いているからこそ、どこまでも推せる!ってなるのだけど。
明るい歌なのに、笑可が歌うと原曲よりもシリアスに聞こえる。
弓歌ちゃんはもう大声で泣いてる。
つられて笑可すら泣きそうになってる。
最後に茜色の夕日(フジファブリック)をカバーし始めた笑可。
最後のサビの前の僕じゃきっと出来ないな~の部分でついに笑可は泣き続けて歌えなくなってしまった。
舞台脇から出て、ボクはステージのマイクの前に立ち最後のサビを歌い上げる。
笑可もそんなボクの乱入に驚きつつ、最後の歌詞の部分だけ歌った。
笑可の初ライブは成功に終わった。
その後、疲れたのか言葉少なな彼女を放っておいてやりXで#エミカライブで検索かけたりすると、性被害の女性たちが「いいライブだった」
「紫髪のウイッグの男の子が彼女の大切な人なんだよね」
「久しぶりにライブ見たけど、笑可ちゃんにはもっと有名になってほしい」
「レイプ犯は女性の心を殺せた気でいるんだろうけど、私たちのアイコンは美しい歌を歌った」
など絶賛の嵐だった。
これでよかったんだ。
日曜日の夕日を見逃したけれども。
打ち上げに弓歌を呼び、3人で少しだけライブを見返しカナリアボックスと茜色の夕日のカバーの部分で3人で泣いてしまった。
食事をしながら、弓歌ちゃんは空気をよんで「学校に来なよ」みたいな話はしなかった。
その代わり、笑可のライブの感想をひたすら述べて彼女の手首の傷を見つめて触りつつ「悲しみが手首に現れたんだよね」と言った。
2人して泣くから、ボクはコウメ太夫のモノマネをして必死に彼女たちを笑わせることにしたのだった。
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