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釈迦
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ちょうど笑可と同じ境遇の少女たちから色々とリプが飛ぶようになったこの頃。
季節は2月を迎え、それでも彼女たちはバレンタインどころじゃなかった。
笑可が「この子気になってしまう」と言われ1件のDMに目を通す。
『私は消えちゃいたいです。
1ヶ月前に男に塾帰りの時にお腹を殴られつつ、脅されて襲われました。笑可さんや玖蘭さんが二人で歌い合う動画見て笑可さん知りました。
豹馬さんって男性もついてきてもいいので、こんな私に会いにきてくれませんか?』
ボクはこのDMを見せられ、彼女の力になりたいと思った。
名前は『ルミ』という。
奇しくも笑可の家から隣駅に彼女の住むアパートはあったので、お互いにとって行きやすい距離だった。
約束した日の朝。
カナリアボックスを聴いて気合いを入れる。
あなたに会えてよかったって言われるような対応をしよう。
10:30。
学校を休んでいるボクらと同じくそんなルミちゃんの対面ができた。
やつれた顔で「笑可さんたち……来てくれたんですね」
そう細い声でルミちゃんが迎えたのだった。
黒髪セミロングの真面目そうな女の子。
「笑可さん、ギター持ってきたんですね。弟のミニアンプでいいなら使ってください。
まだ家族には真実を話してなくて、学校でいじめられてるってサイテーな嘘をついちゃいました」
ルミちゃんはサイテーじゃない。
そんな嘘をつかせる性犯罪者が悪いんだ。
笑可はルミの弟のコードを借りて、ギターを弾き始めた。
「これくらいのテンポだと1小節に歌詞を6文字は入れられるから……」
何やら即興で曲を作ろうとしている笑可はコード進行を書いていく。
Gm Am
心が枯れた
Dm B♭
そんな時は
F C
私が今
F C
あなたのそばに
以下(FとCのコードの繰り返し)
いるから だから
もう大丈夫
あなたを脅(おびや)かす
暗いビート
かき消してく
ルミちゃんは笑可の歌を聴きながら、静かに涙を流し始めた。
「私も学校の人達に性被害の状況知られるの嫌すぎて高校行かないうちに行きづらくなって、未だに行ってないんだ。
理不尽だよね。でもルミちゃんの心で鳴り始めてる暗いビートを私や玖蘭先輩が消してく、消せるはずって思いながらこれからも音楽やっていくから」
シリアスな空気に耐えられないボクはROCKET DIVEを歌い始めた。
しかし、昼のアパートで誰もいないことを意識したからか思い切り声を張り上げてしっかり歌ったからなのか、聞き入られてしまう。
「hideさんじゃん、その曲」
年齢的に知らなくてもおかしくないのに、ルミちゃんは知ってた。
「弟(15)がXのファンなんです。というか父親がXやhideのCD持ってて、弟が一番好きなのはROCKET DIVEなんですよね」
そうだったのか。
2人を笑わせたくて、インディーズ時代の筋少の釈迦をオーケンの歌声を声帯模写するノリで歌うと、今度は笑わせられた。
2人とも筋少は知らなかったので、色々説明した。
「音楽って、どんな人種にも伝わるからいいよな」
そう切り出すと「そうだね。釈迦はいい人だったからぁ!」と笑可が可愛い声で歌った。
「どろろのノウズイ~♪」
3人でサビを歌い合う。
メタルは弾けない笑可だから、完全にアカペラだけど。
ルミちゃんは「笑可さんのライブやる時、私忘れそうなのでLINEで知らせてくれませんか?」と伝えてくるので笑可は「そんなことなら」と彼女にLINEを教えた。
「今日は笑可さんに歌を披露してもらってとても幸せでした。
かなり遅れたクリスマスプレゼントだったのかも」
そんな嬉しい言葉をルミちゃんは言ってくれた。
「今は何も見えないかもしれない。豹馬がいい人だから、家族以外の男性を唯一ここに入れてくれたんだよね。
ありがとう、ルミちゃん。
私も死にたくは、この世から消えたくはなるけれど今日ルミちゃんに会えた体験を胸に刻むから最後にこれを聴いて」
Gのコードを弾く時点で予想はできた。
笑可はカナリアボックスを演奏し始めた。
1番を歌わず、僕らは独りで強くなる必要なんかないんだよの2番から笑可が歌い始めた。
「あなたに会えて良かった。泣いて笑えて良かった~」以降の歌詞を笑可と一緒に歌う。
すっかりもはや笑可のオリジナルソング同様に重要なカバー曲と化したことを小高芳太朗さんはどう思うだろう。
そして近い将来、奇跡が起きるとは知らなかった。
ついこの時は。
感動で泣くルミちゃんと握手して、「絶対また会おうね」と約束してボクらは彼女のアパートをあとにした。、
季節は2月を迎え、それでも彼女たちはバレンタインどころじゃなかった。
笑可が「この子気になってしまう」と言われ1件のDMに目を通す。
『私は消えちゃいたいです。
1ヶ月前に男に塾帰りの時にお腹を殴られつつ、脅されて襲われました。笑可さんや玖蘭さんが二人で歌い合う動画見て笑可さん知りました。
豹馬さんって男性もついてきてもいいので、こんな私に会いにきてくれませんか?』
ボクはこのDMを見せられ、彼女の力になりたいと思った。
名前は『ルミ』という。
奇しくも笑可の家から隣駅に彼女の住むアパートはあったので、お互いにとって行きやすい距離だった。
約束した日の朝。
カナリアボックスを聴いて気合いを入れる。
あなたに会えてよかったって言われるような対応をしよう。
10:30。
学校を休んでいるボクらと同じくそんなルミちゃんの対面ができた。
やつれた顔で「笑可さんたち……来てくれたんですね」
そう細い声でルミちゃんが迎えたのだった。
黒髪セミロングの真面目そうな女の子。
「笑可さん、ギター持ってきたんですね。弟のミニアンプでいいなら使ってください。
まだ家族には真実を話してなくて、学校でいじめられてるってサイテーな嘘をついちゃいました」
ルミちゃんはサイテーじゃない。
そんな嘘をつかせる性犯罪者が悪いんだ。
笑可はルミの弟のコードを借りて、ギターを弾き始めた。
「これくらいのテンポだと1小節に歌詞を6文字は入れられるから……」
何やら即興で曲を作ろうとしている笑可はコード進行を書いていく。
Gm Am
心が枯れた
Dm B♭
そんな時は
F C
私が今
F C
あなたのそばに
以下(FとCのコードの繰り返し)
いるから だから
もう大丈夫
あなたを脅(おびや)かす
暗いビート
かき消してく
ルミちゃんは笑可の歌を聴きながら、静かに涙を流し始めた。
「私も学校の人達に性被害の状況知られるの嫌すぎて高校行かないうちに行きづらくなって、未だに行ってないんだ。
理不尽だよね。でもルミちゃんの心で鳴り始めてる暗いビートを私や玖蘭先輩が消してく、消せるはずって思いながらこれからも音楽やっていくから」
シリアスな空気に耐えられないボクはROCKET DIVEを歌い始めた。
しかし、昼のアパートで誰もいないことを意識したからか思い切り声を張り上げてしっかり歌ったからなのか、聞き入られてしまう。
「hideさんじゃん、その曲」
年齢的に知らなくてもおかしくないのに、ルミちゃんは知ってた。
「弟(15)がXのファンなんです。というか父親がXやhideのCD持ってて、弟が一番好きなのはROCKET DIVEなんですよね」
そうだったのか。
2人を笑わせたくて、インディーズ時代の筋少の釈迦をオーケンの歌声を声帯模写するノリで歌うと、今度は笑わせられた。
2人とも筋少は知らなかったので、色々説明した。
「音楽って、どんな人種にも伝わるからいいよな」
そう切り出すと「そうだね。釈迦はいい人だったからぁ!」と笑可が可愛い声で歌った。
「どろろのノウズイ~♪」
3人でサビを歌い合う。
メタルは弾けない笑可だから、完全にアカペラだけど。
ルミちゃんは「笑可さんのライブやる時、私忘れそうなのでLINEで知らせてくれませんか?」と伝えてくるので笑可は「そんなことなら」と彼女にLINEを教えた。
「今日は笑可さんに歌を披露してもらってとても幸せでした。
かなり遅れたクリスマスプレゼントだったのかも」
そんな嬉しい言葉をルミちゃんは言ってくれた。
「今は何も見えないかもしれない。豹馬がいい人だから、家族以外の男性を唯一ここに入れてくれたんだよね。
ありがとう、ルミちゃん。
私も死にたくは、この世から消えたくはなるけれど今日ルミちゃんに会えた体験を胸に刻むから最後にこれを聴いて」
Gのコードを弾く時点で予想はできた。
笑可はカナリアボックスを演奏し始めた。
1番を歌わず、僕らは独りで強くなる必要なんかないんだよの2番から笑可が歌い始めた。
「あなたに会えて良かった。泣いて笑えて良かった~」以降の歌詞を笑可と一緒に歌う。
すっかりもはや笑可のオリジナルソング同様に重要なカバー曲と化したことを小高芳太朗さんはどう思うだろう。
そして近い将来、奇跡が起きるとは知らなかった。
ついこの時は。
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