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心の旅
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「なるべく早く空港には来ててくださいって言ってたけど、何かな? 笑可さん」
「あっ、ゆりあさん。2曲聴いて飛行機に乗ってくれませんか?」
ボクは笑可とゆりあさんのやりとりを微笑ましく見ていた。
「心の旅か。しかもチューリップ版を1番でやって2番はテンポがガラリと変わってケラリーノ・サンドロヴィッチさんのかつての有頂天のほうの心の旅のパンク風のカバーを真似するとか面白いじゃない」
「もちろんゆりあさんからみっちり音楽修行させてもらった成果も見せるつもりです」
「このフォルダに入ってる新曲2がそれか?」
「はい。ゆりあさんを想って作りました」
誰もがもがき続けて
何かをつかもうとしている
知識を詰め込んでも
情報を得てみても
なんだか空虚ね
目の前にいるあなたに
届かない言葉とかだったら
何の意味もないから
あなたの悩みに気付けなくて
私に何ができるかな
旅に出ても私は忘れません
いつかお酒の1杯でも
おごらせてください
それではアディオース
聴き終えたゆりあさんは「まだ使うコード進行にdimが想定内の使われ方してるから、意外な使い方教えないとね」と言い残して笑可を抱きしめて「行ってくる、何か言いたいことは?」と話した。
「今までゆりあさん、武者修行に付き合ってくれてる時に全くハグしなかったのに初めてハグしてくれましたね」
「それは……私、すごく照れ屋な性格で小心者だからバンドメンバーの返信もなかなか見れずじまいだったの。ある日脱退したいとかメッセージきたら怖いなって思って」
「旅先ではマイペースでいいので返信お願いしますよ。ゆりあさんって繊細でまじめでかわいいですね」
「……今、豹馬くんはピック持ってる?」
ボクはポケットから赤いピックを取り出した。
「これでいつもベース弾きながら、玖蘭さんって僕らの共通の知人からの銀のピックは使ってないです。
使うのもったいなくて。この赤ピックがどうしたんですか?」
「旅先でたまにギター弾きたくなったら、豹馬くんのピック使うよ。……もらっていいかな」
「どうぞどうぞ。音楽やめるんじゃなかったんですか?」
あえてイジワルな質問をしてしまう。
「成功とか追いかけてなかった頃に戻って、無心でギター弾きたいなって笑可を見てて思ったの。まあ音楽へのトラウマが邪魔をするから、なかなか弾けないかもだけど」
「いいな、豹馬」
「笑可にまだ何も渡してなかったね。これもらっといてくれるかな?」
ゆりあさんは猫の形のキーホルダーをカバンから出すと渡してきた。
「まだ出発までは30分あるね。純粋に歌詞だけ批評するから新曲もう一度聴かせて」
笑可は笑顔でスマホを操作する。
「2番の歌詞の理屈を並べるのはやめて傷ついた手同士を繋ぎ合わせて愛を刻もうはいい歌詞ではあるけど、私だったら繋げられるはずなく愛もないって歌詞にしてしまうかな」
「けっこうペシミストなんですね」
「ラブソングは失恋するくらいのがいいのよ」
長い髪を揺らしてゆりあさんは持論を述べた。
時間の20分前まで他愛もない話をして、彼女は搭乗口へ行った。
とっておきの新曲ガンガン作ったから、とりあえずバンドメンバーでやってみたいと笑可は言った。
「虫食いたいとかいうふざけた歌は何だったの?」
「あれ、結局テレビで流されたんだぞ」
「ウソでしょ!?」
「笑可より早く地上波デビューしちゃったわ」
虫全般がダメな笑可にとっては、聞きたくない曲だったようだ。
「あっ、ゆりあさん。2曲聴いて飛行機に乗ってくれませんか?」
ボクは笑可とゆりあさんのやりとりを微笑ましく見ていた。
「心の旅か。しかもチューリップ版を1番でやって2番はテンポがガラリと変わってケラリーノ・サンドロヴィッチさんのかつての有頂天のほうの心の旅のパンク風のカバーを真似するとか面白いじゃない」
「もちろんゆりあさんからみっちり音楽修行させてもらった成果も見せるつもりです」
「このフォルダに入ってる新曲2がそれか?」
「はい。ゆりあさんを想って作りました」
誰もがもがき続けて
何かをつかもうとしている
知識を詰め込んでも
情報を得てみても
なんだか空虚ね
目の前にいるあなたに
届かない言葉とかだったら
何の意味もないから
あなたの悩みに気付けなくて
私に何ができるかな
旅に出ても私は忘れません
いつかお酒の1杯でも
おごらせてください
それではアディオース
聴き終えたゆりあさんは「まだ使うコード進行にdimが想定内の使われ方してるから、意外な使い方教えないとね」と言い残して笑可を抱きしめて「行ってくる、何か言いたいことは?」と話した。
「今までゆりあさん、武者修行に付き合ってくれてる時に全くハグしなかったのに初めてハグしてくれましたね」
「それは……私、すごく照れ屋な性格で小心者だからバンドメンバーの返信もなかなか見れずじまいだったの。ある日脱退したいとかメッセージきたら怖いなって思って」
「旅先ではマイペースでいいので返信お願いしますよ。ゆりあさんって繊細でまじめでかわいいですね」
「……今、豹馬くんはピック持ってる?」
ボクはポケットから赤いピックを取り出した。
「これでいつもベース弾きながら、玖蘭さんって僕らの共通の知人からの銀のピックは使ってないです。
使うのもったいなくて。この赤ピックがどうしたんですか?」
「旅先でたまにギター弾きたくなったら、豹馬くんのピック使うよ。……もらっていいかな」
「どうぞどうぞ。音楽やめるんじゃなかったんですか?」
あえてイジワルな質問をしてしまう。
「成功とか追いかけてなかった頃に戻って、無心でギター弾きたいなって笑可を見てて思ったの。まあ音楽へのトラウマが邪魔をするから、なかなか弾けないかもだけど」
「いいな、豹馬」
「笑可にまだ何も渡してなかったね。これもらっといてくれるかな?」
ゆりあさんは猫の形のキーホルダーをカバンから出すと渡してきた。
「まだ出発までは30分あるね。純粋に歌詞だけ批評するから新曲もう一度聴かせて」
笑可は笑顔でスマホを操作する。
「2番の歌詞の理屈を並べるのはやめて傷ついた手同士を繋ぎ合わせて愛を刻もうはいい歌詞ではあるけど、私だったら繋げられるはずなく愛もないって歌詞にしてしまうかな」
「けっこうペシミストなんですね」
「ラブソングは失恋するくらいのがいいのよ」
長い髪を揺らしてゆりあさんは持論を述べた。
時間の20分前まで他愛もない話をして、彼女は搭乗口へ行った。
とっておきの新曲ガンガン作ったから、とりあえずバンドメンバーでやってみたいと笑可は言った。
「虫食いたいとかいうふざけた歌は何だったの?」
「あれ、結局テレビで流されたんだぞ」
「ウソでしょ!?」
「笑可より早く地上波デビューしちゃったわ」
虫全般がダメな笑可にとっては、聞きたくない曲だったようだ。
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