日常の何かが狂ってる

水月虹

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通学路

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徒歩で片道三十分の通学路を今日も一人歩いている。

朝から何とも憂鬱な気分で、空模様の真っ黒さは自身の心の内を映しているようだ。

何か特別なことが起きないかなと心から願い、十分は歩く必要のある長い下り坂をとぼとぼと歩いていく。

七時二十分に家を出て、七時半に下り坂の始まり、七時四十分には下り坂が終わり、七時五十分に学校に着く。

普段ならそのはずなのに、今日は何かおかしい。

足が重たく感じてきて、下り坂は終わりのないように思えてしまう。

無限とも思えるその道を歩いて歩いて、下り続ける。

この下り坂には元々民家がたくさん建っていたはずなのだが、それらは全て崩壊していた。

苔や蔦に浸食され、長い期間使われていないような雰囲気が漂ってくる。

植物は茂っているが、誰もいない。

誰もいない。

自分以外には誰もいない。

そう思った時ドッと疲れがやってきて、その場に立ち止まってしまった。

すると目の前に人影が現れる。

あれは自分の後ろ姿だ。

その影がゆっくりと足を進めるものだから、導かれるようにしてついて行った。

そして目の前に大きな病院とも工場とも見えるのような施設が現れた。

その施設に自分の影はたどり着く。

ほぼそれと同時にその建物内から六人ほどの人間が出てきた。

そいつらはクラスメイトだった。

ここはなんの施設なのだろうか。

自分の影が中に入ってしまったので、それを追いかける。

建物内は真っ暗でほとんど見えない。

分かることと言えば異臭と機械的な爆音、それと変な雑音があるということだけ。

機械音はメトロノームのように一定のリズムを刻んでいる

自分の影はその音の方に近づいていく。

それを追跡してみると、たくさんの人間が一列に並んでいて、ゆっくりと前進していた。

ガシャン、ガシャン。

大きな音と共に人が前へ進んで行く。

かなり奥に進んだ頃にようやく何が行われているのか分かった。

ゴミを圧縮するように人間を一定のリズムで潰していたのだ。

自分の影も同じように、大きな金属製のハンマーに押しつぶされ血しぶきをあげ、紙のようにぺちゃんこになる。

しかし、すぐに元の人型に再生した。

そして僕の影はすでに一度潰されたクラスメイトの所へ行き、こんな事を言い出す。

「今日の授業は楽しかったね。」
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