日常の何かが狂ってる

水月虹

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街路樹

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僕が産まれたのと同時に街路樹が十本ほど植えられたという話を聞いた。

なぜ街路樹の話をされたかというと、小学校に通うための道にそれらが植えてあるからだ。

それを目印にして学校に行く。それが小学校に入る前に教えられたこと。

僕はそれらの樹と共に成長し、身長も少しは大きくなったのだが、列の一番前というのは変わらなかった。

小学五年生の頃には背が小さい事でからかわれたりしたけど、樹を見ると励ましてもらえるような気がして元気が出た。

そして僕は中学生になるときにこんな本を読んだ。

『大きな木』

内容は特殊な輝きを放ち人々を魅了する大きい木があり、御神体として崇められていたのだが、それの近くに行けば急に力が抜ける。

それを調査していくというお話だった。

そして真実は増えすぎた人間を減らすために、人間の栄養を食らう植物を地球が生み出したというものだった。

それを読んでから僕は考え方が変わってしまった。

今まで励ましてくれていたと思っていた樹は、僕の成長のための栄養を食べていたのではないか。

僕はそう考えてから樹の近くを通ることがあっても、なるべく距離を保って歩いた。

それのおかげか中学二年生になってグンと背が伸び嬉しく思った。

中学を卒業し高校に入った頃には、ちゃんと背が伸びてすっかり街路樹のことは気にしなくなっていた。

「お前、高校卒業したらどこ行くの?」

「まだ決めてない。そっちは?」

「兄貴みたいに家出てどこか旅にでも行こうかなって思ってる。」

こんな会話もしつつ、時は流れて行った。

ある時テレビで環境問題について語られていて、街路樹はそれを抑制してくれるという話を聞いた。

それのおかげで、この地域の街路樹がたくさん増えている事実に深く納得した。

それから僕は街路樹のあるところに足を運んだ。

今まで疑っていたことへの謝罪と環境を支えてくれていることへの感謝のためである。

僕は街路樹に近づきそれに触れる。

すると微かな揺れを感じた。

急に怖くなり、すぐに手を離した。

樹皮がボロボロと剥がれ落ち、黒い糸のような物がたくさん見えた。

これは一体何なのかと樹皮をさらに剥いだ。















人間だ。
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