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第二章:浸透
変えるべきもの(3)
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「サブリナは宰相の娘だけど、帝国法について学んだことはある?」
「すべてを覚えているわけではありませんが、ある程度のことは兄も私も父から教わりました」
やはり。サブリナは帝国法に通じているようだ。
「じゃあ、帝国で法を変えたいとなったら、どうすればいいか知ってる?」
「法を、変える……ですか?」
「そう。たとえば、新しい法を作るとか、今の法を変えるとか……今の法を廃止させるとか」
私の問いにサブリナは小さくうつむき、首を横に振る。
「すみません。そういった知識は今の私にはなく……家で調べればすぐにわかると思うのですが」
「やっぱり、すぐにとはいかないのね。じゃあ、わかったらすぐ教えてもらってもいいかしら?」
「構いませんが……何か帝国法を変えたいのですか?」
サブリナの問いに私は小さくうなずいて。
「『決闘法』を、なくしたいの」
力強くそう言った。
「決闘法、ですか……しかし、あれはステラリアにとって有利な法ではないのですか?」
たしかに、今の私は帝国でも最上位の剣の実力を持っていると自負している。
だからこそ婚約披露パーティーでは躊躇なく手袋を投げることができたし、私に反発することが得策でないことを認識させることができた。
だけど、それだけではなかった。
令嬢たちは私に反発しないだけでなく、反対の意見を述べることにすら恐怖を覚えてしまっている。
それは、私の望むところではない。
「令嬢たち……ひいては帝国民全員が、私に怯えることなく自由に意見を述べてもらいたいのよ。そのために、『私は異なる意見が出てもすぐに決闘で自分の意見を押し付けるようなことはしない。真摯に受け止めて対応する』と令嬢たちに伝えているんだけど。それに加えて、そもそもすぐに決闘を申し込めるようになっている決闘法自体にも手を入れたいと思っているの」
「なるほど。たしかに、ステラリアの不興を買えば即座に手袋を投げつけられるというのは、あのパーティーに参加していた者であれば誰もが想像することでしょう」
サブリナにも同意されてしまった。
あの一件が必要なことだったのは間違いない。
だから、私に必要なのはこれからどうするか、だ。
「おそらく、今もっとも決闘法を利用した方が都合のいい人物である私が、自ら決闘法の危険性を訴え、廃止を求める。そうすれば、廃止の必要性についても理解してもらえるんじゃないかと考えているの」
「わかりました。まずは決闘法を対象に、法改正の方法を調べてご連絡します」
「ありがとう、サブリナ」
協力的な姿勢を見せてくれたサブリナに、私は心からの感謝を述べるのだった。
私としてはどうしても話したかった本題を切り出すことができて満足していたが、「皇太子の婚約者」としてはそうもいかない。
その後、少し会話のペースを落としながら私たちはノーステッド侯爵家の発展について議論した。
驚いたのは、サブリナ自身も家門の現状を調べ、改善案を持ってきてくれたことだった。
「日頃から気にかけていたのですが、父も兄も聞き入れてくれなかったのです。ステラリアのおかげで私の考えをお見せできます」
それまで無表情だったサブリナが、このときばかりは明るく見えた。
「すべてを覚えているわけではありませんが、ある程度のことは兄も私も父から教わりました」
やはり。サブリナは帝国法に通じているようだ。
「じゃあ、帝国で法を変えたいとなったら、どうすればいいか知ってる?」
「法を、変える……ですか?」
「そう。たとえば、新しい法を作るとか、今の法を変えるとか……今の法を廃止させるとか」
私の問いにサブリナは小さくうつむき、首を横に振る。
「すみません。そういった知識は今の私にはなく……家で調べればすぐにわかると思うのですが」
「やっぱり、すぐにとはいかないのね。じゃあ、わかったらすぐ教えてもらってもいいかしら?」
「構いませんが……何か帝国法を変えたいのですか?」
サブリナの問いに私は小さくうなずいて。
「『決闘法』を、なくしたいの」
力強くそう言った。
「決闘法、ですか……しかし、あれはステラリアにとって有利な法ではないのですか?」
たしかに、今の私は帝国でも最上位の剣の実力を持っていると自負している。
だからこそ婚約披露パーティーでは躊躇なく手袋を投げることができたし、私に反発することが得策でないことを認識させることができた。
だけど、それだけではなかった。
令嬢たちは私に反発しないだけでなく、反対の意見を述べることにすら恐怖を覚えてしまっている。
それは、私の望むところではない。
「令嬢たち……ひいては帝国民全員が、私に怯えることなく自由に意見を述べてもらいたいのよ。そのために、『私は異なる意見が出てもすぐに決闘で自分の意見を押し付けるようなことはしない。真摯に受け止めて対応する』と令嬢たちに伝えているんだけど。それに加えて、そもそもすぐに決闘を申し込めるようになっている決闘法自体にも手を入れたいと思っているの」
「なるほど。たしかに、ステラリアの不興を買えば即座に手袋を投げつけられるというのは、あのパーティーに参加していた者であれば誰もが想像することでしょう」
サブリナにも同意されてしまった。
あの一件が必要なことだったのは間違いない。
だから、私に必要なのはこれからどうするか、だ。
「おそらく、今もっとも決闘法を利用した方が都合のいい人物である私が、自ら決闘法の危険性を訴え、廃止を求める。そうすれば、廃止の必要性についても理解してもらえるんじゃないかと考えているの」
「わかりました。まずは決闘法を対象に、法改正の方法を調べてご連絡します」
「ありがとう、サブリナ」
協力的な姿勢を見せてくれたサブリナに、私は心からの感謝を述べるのだった。
私としてはどうしても話したかった本題を切り出すことができて満足していたが、「皇太子の婚約者」としてはそうもいかない。
その後、少し会話のペースを落としながら私たちはノーステッド侯爵家の発展について議論した。
驚いたのは、サブリナ自身も家門の現状を調べ、改善案を持ってきてくれたことだった。
「日頃から気にかけていたのですが、父も兄も聞き入れてくれなかったのです。ステラリアのおかげで私の考えをお見せできます」
それまで無表情だったサブリナが、このときばかりは明るく見えた。
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