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第三章:潮目
騎士団育成計画(3)
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翌朝。私との顔合わせのためということですべての騎士が鍛錬場に集められた。
バスティエ領の騎士は全員イクリプス王国侵攻戦に参加しておらず、帝都での私の活動も風のうわさ程度にしか把握していない。つまり、私がどれほどの技量を持っているか知る者はいないということ。
「私が元イクリプス王国ディゼルド騎士団長、ステラリア・ディゼルドである。バスティエ伯爵の希望により、ここに立っている」
声を張り上げる。こういうとき、通りやすい女性の声は都合がいい。
「伯爵が私を呼んだのは、諸君らを鍛えなおしてほしいからとのことだ。……だが、これはわたしにとってチャンスでもある」
言って、私は剣を抜く。皇太子の剣を。
何事かと騎士たちがざわつき始める。が、それを無視して私は言葉を続ける。
「私は今の今まで、イクリプス王国が帝国から侵略を受けた屈辱を忘れたことなど一瞬もなかった。だから、時間をかけて皇太子の信頼を勝ち取り、皇太子から離れる機会を待った」
私は微笑を浮かべて、剣を天にかざす。磨き抜かれた剣先が、陽光を受けてまばゆく煌めく。
「これは、私にとっての好機。貴様らバスティエ騎士団を葬り、ルナリア王国軍を領内に引き入れれば、帝国は混乱に陥るだろう! 我がディゼルド軍も混乱に乗じて侵攻すれば、帝国の崩壊なんてあっという間だ」
「お嬢様ッ!」
激高したクラリスが斬りかかってくる。私はそれを軽く受け止めると、強く弾き返した。
「きゃあっ!?」
クラリスが思い切り吹き飛び、地面に叩きつけられる……フリをする。加減はしてあるし、彼女は受け身も的確だ。
「覚悟ッ!」
私は吹き飛んだクラリスに目もくれず、百名を超える騎士たちへと単身斬りかかる。
事態をようやく飲み込んだ騎士たちは、慌てて剣を抜いて立ち向かってくるが……。
「遅い!」
「鋭……っ」
相手が剣を振りかぶった頃には、私の剣が肩を撃ち抜き剣を取り落とす。
「騎士が剣を落とすとは何事か!」
叱咤するように首筋を剣の柄で殴って昏倒させた。
それを見た騎士たちはいよいよ危機感を持って一斉に切りかかってくる。
だが、それでもまだ足りない。
「腰が高い!」
「踏み込みが甘い!」
「一撃で終わった気になるな!」
「一撃で体勢を崩されるな!」
騎士を斬り倒すたびに、未熟な点を指摘していく。
それを何十人と繰り返し、百を超えたかというところで、これは敵わんと逃げ出す者が現れ始めた。
「さすがに逃亡は許されんな」
鍛錬場の出口に控えていたバスティエ伯爵が、逃亡しようとしていた騎士の前に立ちはだかる。
「伯爵様!?」
驚愕に足を止める騎士たち。伯爵はこちらに視線を送り、
「ステラリア様、そろそろよいか」
「ええ、これで十分でしょう」
向かってきた最後のひとりを胴への一撃で悶絶させて、私は剣を鞘に戻した。
「これでわかったか! お前たちがいかに愚かで、未熟であったか! その程度の技量で国境を、帝国を守れると思うな!」
倒れ伏した騎士たち、そして入口前で立ち尽くした騎士たちに、私はそう言い放つ。
「私に倒されて地に伏したとき、おのれの未熟のせいで国を守れなかったと後悔しただろう! 自分の力では敵わないと自覚したとき、至らない自分を恥じただろう! その気持ちを忘れるな! そして、もう二度と味わいたくないと思え! これからの私の指導は、そのためのものだ! わかったか!」
言葉は返ってこない。
しかし、私の耳には届いた。無力を嘆く嗚咽が。地面に打ち付けた拳の音が。
なら、この騎士団は強くなれる。そう、確信した。
バスティエ領の騎士は全員イクリプス王国侵攻戦に参加しておらず、帝都での私の活動も風のうわさ程度にしか把握していない。つまり、私がどれほどの技量を持っているか知る者はいないということ。
「私が元イクリプス王国ディゼルド騎士団長、ステラリア・ディゼルドである。バスティエ伯爵の希望により、ここに立っている」
声を張り上げる。こういうとき、通りやすい女性の声は都合がいい。
「伯爵が私を呼んだのは、諸君らを鍛えなおしてほしいからとのことだ。……だが、これはわたしにとってチャンスでもある」
言って、私は剣を抜く。皇太子の剣を。
何事かと騎士たちがざわつき始める。が、それを無視して私は言葉を続ける。
「私は今の今まで、イクリプス王国が帝国から侵略を受けた屈辱を忘れたことなど一瞬もなかった。だから、時間をかけて皇太子の信頼を勝ち取り、皇太子から離れる機会を待った」
私は微笑を浮かべて、剣を天にかざす。磨き抜かれた剣先が、陽光を受けてまばゆく煌めく。
「これは、私にとっての好機。貴様らバスティエ騎士団を葬り、ルナリア王国軍を領内に引き入れれば、帝国は混乱に陥るだろう! 我がディゼルド軍も混乱に乗じて侵攻すれば、帝国の崩壊なんてあっという間だ」
「お嬢様ッ!」
激高したクラリスが斬りかかってくる。私はそれを軽く受け止めると、強く弾き返した。
「きゃあっ!?」
クラリスが思い切り吹き飛び、地面に叩きつけられる……フリをする。加減はしてあるし、彼女は受け身も的確だ。
「覚悟ッ!」
私は吹き飛んだクラリスに目もくれず、百名を超える騎士たちへと単身斬りかかる。
事態をようやく飲み込んだ騎士たちは、慌てて剣を抜いて立ち向かってくるが……。
「遅い!」
「鋭……っ」
相手が剣を振りかぶった頃には、私の剣が肩を撃ち抜き剣を取り落とす。
「騎士が剣を落とすとは何事か!」
叱咤するように首筋を剣の柄で殴って昏倒させた。
それを見た騎士たちはいよいよ危機感を持って一斉に切りかかってくる。
だが、それでもまだ足りない。
「腰が高い!」
「踏み込みが甘い!」
「一撃で終わった気になるな!」
「一撃で体勢を崩されるな!」
騎士を斬り倒すたびに、未熟な点を指摘していく。
それを何十人と繰り返し、百を超えたかというところで、これは敵わんと逃げ出す者が現れ始めた。
「さすがに逃亡は許されんな」
鍛錬場の出口に控えていたバスティエ伯爵が、逃亡しようとしていた騎士の前に立ちはだかる。
「伯爵様!?」
驚愕に足を止める騎士たち。伯爵はこちらに視線を送り、
「ステラリア様、そろそろよいか」
「ええ、これで十分でしょう」
向かってきた最後のひとりを胴への一撃で悶絶させて、私は剣を鞘に戻した。
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「私に倒されて地に伏したとき、おのれの未熟のせいで国を守れなかったと後悔しただろう! 自分の力では敵わないと自覚したとき、至らない自分を恥じただろう! その気持ちを忘れるな! そして、もう二度と味わいたくないと思え! これからの私の指導は、そのためのものだ! わかったか!」
言葉は返ってこない。
しかし、私の耳には届いた。無力を嘆く嗚咽が。地面に打ち付けた拳の音が。
なら、この騎士団は強くなれる。そう、確信した。
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