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第一章
第二十話 ヒーローになれるかも
しおりを挟むあの日、黒いタコと白いタコを偶然助けた。思いつきで家に連れて帰った。とても頭の良いタコだとは思っていたが、まさか、まさかの異星人。
黒いタコが男性であの阿形像、本人だった。白いタコが女性で阿形の奥さんで、吽形像本人だった。彼らは長年、この八重寺島を守ってきたと教えてくれた。それだけの力を持っていることも。
そして、一八は偶然だが彼らの眷属になったのだという。彼らの身体のつくりと同じような効果を持ってしまったのだという。
それは『傷が治りやすいことや、疲れが出にくいこと』らしい。あくまでもらしいというのは、実際どうなのかは調べてみないとわからない。だが、釘を刺される。常識の範囲内で、やってはいけないことは駄目だと。
(そしたらどうやって調べようかな?)
小学六年十二歳の男の子。そんな一八がじっとしていられるわけがなかった。
まだ晩ごはんまでには時間がある。それならとにかく散歩をしてみよう。一八は、水槽に向かってこう言った。
「ちょっと散歩をしてきますね」
水槽に両手を差し伸べる。すると阿形も吽形も触手を伸ばして手に触れてくる。
(大丈夫です。約束は守ります)
『あぁ、行っておいで』
『気をつけるのですよ?』
(はい。気をつけていってきます)
二人に見送られながら、部屋を出て行く。先ほどまでのことが夢でないことを確認できたことが嬉しくて仕方がなかった。
一階の喫茶室『碧』から戻っていていた隆二は、夕食の仕込みを始めていた。
「お父さん、僕ちょっと散歩してくるね」
「あぁ、気をつけていっておいで」
「うん。いってきます」
外はまだ残暑厳しい真夏の日差し。日焼け防止のために、長袖のインナーの上にオレンジ色の半袖Tシャツ。軽い運動をするためのハーフパンツのその下には、踝までのインナーパンツ。帽子を被って水の入ったボトルを持って準備完了。
(それじゃ行ってきますか-)
軽くジョギングをするくらいの小走り気味で進んでいく。人気のある商店街をぐるっと回って、街中を一周。そのあと船着き場を抜けて、ビーチのある海岸へ。
今日も観光客が沢山いる。誰が観光客かは見ただけでわかってしまう。なぜなら『水着を着ている人はほぼ間違いなく観光で来た人たちである』ということ。
この八重寺島もそうだが、沖縄に住む人はあまり水着を着て海へ泳ぎに来ることがない。海が近くにあるからといって、泳ごうという気にもなれないのが普通。例えばスキー場に近いところに住んでいる人たちが、毎日スキーをするだろうか? そういうことなのである。
(うん。これはおかしいよね。ずっと走ってきたはずなのに、全然息が苦しくならないよ)
おそらくこれが、吽形が教えてくれた身体の変化、そのひとつなのだろう。
続けてまたしばらく走ってみた。今度はちょっと速いテンポで。運動会の五十メートル走で走る速さほどではないが、それに近いくらいまでペースを上げてみる。
これはおかしい。息が上がらないのである。聡い一八は思った。
(あぁこれ、学校では手加減しないと駄目なヤツだ……)
別にスポーツ選手になりたいわけじゃない。一八は将来、家族の手伝いをしたいと思っていただけ。だから学校で授業が終わると、まっすぐ家に帰って二人の手伝いをしていた。それが楽しかったからである。
誰もいない海沿いの遊歩道に出た。ここは日中、日差しが強いときは歩く人はほぼいない。人が集まってくるのは、涼しくなる夕方あたりである。だから先を見ても、歩いている人は誰もいない。
一八は今彼自身が出せる全力で走った。足は速いほうではない。運動会でも選手になることはなかった。別に猫を被るようなことはしない。元々、運動は得意なほうではなかったからである。
(ぜんぜん疲れない。汗はかくけど、息がそれほど上がらない。これはもしかしたら僕、ヒーローになれちゃうかも?)
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