海岸でタコ助けたらスーパーヒーローになっていた。 ~正義の味方活動日記~

はらくろ

文字の大きさ
21 / 56
第一章

第二十一話 やっぱり駄目でした

しおりを挟む



 足を止めて汗を拭く。水を飲んで一息ついた。阿形と吽形がいるから慌てて父隆二、母日登美、姉千鶴に相談する必要はないだろう。ただある程度だがわかってしまった。

 しばらく全力で走り続けたのだが、疲れがそれほどない。あれだけ全力で走ったにもかかわらず、軽い筋肉痛にもなる感じがない。

 足が速くなったわけではないが、持久走などの運動だと違和感がはっきりと出てしまうだろう。これが間違いなく、阿形と吽形の眷属になった結果だ。

(これだけ走っても、足がだるくなったりしないんだ。これも駄目でしょ?)

 いくら小学六年十二歳の一八でも、駄目だということは自覚できる。油断して目立った時点で、注目されてしまうのだ。なぜなら、千鶴から借りた漫画などに、同じようなシチュエーションが起きる、主人公の葛藤があったからだ。

 別に夢が絶たれた瞬間でもなかったからか、一八は『ま、いっか』程度にしか思えなかったのは幸いだったかもしれない。

 汗をかくと喉が渇く。それ自体が変化したわけではない。だからボトルが空になる前に戻らなければならない。一八はまだスマホを持たされていないから、家族を心配させないために、付き添いの家族がいない場合は早く帰らなければならないのである。

 一八は別に落ち込むことなく家に戻ってくる。

「ただいまお父さん」
「おかえり。一八くんは、明日からの準備はできているのかな?」
「これからだよ。僕はほら、そんなに持って行くものもないし」
「そうなんだね。それならあとで、千鶴ちゃんのを手伝ってあげるといいよ」
「うん。お姉ちゃんは『あれ』だからね……」
「そっか。まだ直ってなかったんだね……」

 隆二も知っていたのだろう。千鶴その見た目に反してずぼらな性格だということを。

 一八は部屋に帰ってきた。そのまま鍵を閉めて、水槽の前にある椅子に座る。水槽の縁に両手を乗せて準備完了。すると、阿形も吽形も触手をそっと乗せてくれた。

(ただいま。阿形さん、吽形さん)
『あぁ、おかえり。でいいのかな?』
『お帰りなさい。一八さん。これでいいんですよ、あなた』
(それでですね、早速ですけど、僕の身体に起きていることを調べてきました――)

 あれこれ、『かくかくしかじかはちはちたこたこ』という感じに、

『やはりそうだったのですね。確かに一八さんの解釈は間違ってはいません。ご負担をかけてしまって、本当に申しわけありません』
『申し訳ない。一八君……』
(いいんです。吽形さん、阿形さんも)
『なぜですか? スポーツ選手になるという夢を持つのは普通ではありませんか?』
『あぁ、そうだな』

 本当に、長年この八重寺島を、この島の人たちを見守ってくれていた。それほどの理解度だと一八でも思っただろう。

(いえ、その。僕はほら、もうひとつのパターンだったりするんですよ。例えば、女の子だったら『魔法少女になりたい』と思ったりですね)
『確か、日曜日の朝に放映されているテレビ番組、でした?』
『そうだな。「ニチアサ」だったか? となると、一八君もその「魔法少女」――』

 もの凄く俗っぽい知識も持ち合わせていた。

(いえいえいえ、そっちじゃなくて。僕はヒーローに、正義の味方に、なりたいと思っていたほうなんです)

『戦隊ものだと、人数が足りないからな』
『なるほど、戦隊もののヒーローではなく、海外映画的なヒーローなのですね?』
(あははは。阿形さんも吽形さん、よく知ってるね)

 なんという特殊な理解度。一八は思わず、苦笑してしまった。

(あ、そうだ。忘れていました)
『どうしたのですか?』
(僕、今夜から明明後日まで、こちらにいないんです。お姉ちゃんと一緒に東京に行くんですね)

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

田舎おじさんのダンジョン民宿へようこそ!〜元社畜の俺は、民宿と配信で全国初のダンジョン観光地化を目指します!〜

咲月ねむと
ファンタジー
東京での社畜生活に心身ともに疲れ果てた主人公・田中雄介(38歳)が、故郷の北海道、留咲萌町に帰郷。両親が遺したダンジョン付きの古民家を改装し、「ダンジョン民宿」として開業。偶然訪れた人気配信者との出会いをきっかけに、最初の客を迎え、民宿経営の第一歩を踏み出す。 笑えて、心温かくなるダンジョン物語。 ※この小説はフィクションです。 実在の人物、団体などとは関係ありません。 日本を舞台に繰り広げますが、架空の地名、建造物が物語には登場します。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

MP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...