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「20xx/xx/xx[xxx]」

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 もはや、その「怪異」には、彼女の面影は、ない。

 ジュグウ、ウゥ……

 彼女の黒髪は強酸で燃え、身体は毒々しい、紫色に染まり、溶け。

――……クン――

 ただ、その唇と瞳、それだけが。

――……君――

 僕に、訴える。

「……」

 明確な言葉は解らない、だが。

――クシュ、ルゥ……――

 この「彼女」の、気持ちは、解る。

「……新宮さん」

 この最後の任務、これが終わったら。

――結婚しよう、小田切君……――
――……ああ――

 怪異共との「聖戦」は、まもなく終わりを告げる。

「……僕たちは、勝ったんだよな、神楽?」

 しかし、その前に、僕がこの聖戦に参加している理由、それが。

「そうだよね、新宮さん、神楽ちゃん?」

 終わりを。

「……そうだと、言ってよ」

 告げた。

「……神楽」

 そして、僕は、この手に持った銃を。

……チャ、カ

 断末魔の怪異、二人で追い詰めた、実に、とるに足らない強さの怪異に、取り込まれた、取り込まれてしまった、彼女に。

……ゴァア!!

 恋人、に。

「……さようなら、神楽」

 叩きつけた。



////////////////



 何も、無くなった所に、佇む。

「……」

 カグツチ・コピー、炎の刀。

――彼女の、心か……――

 それは、錆び付き、かつての鮮やかな朱、その色合いを失った。

――まるで、今、彼女と生死を共にしたかのような――

 彼女の「新宮神楽」の愛刀。

――全て、溶けて、消えた、彼女の、最期の――

 何も、形見も何もない、全てが消え失せた彼女の、僕の恋人が。

「……神楽」

 唯一、残した品物。

「……」

 グゥ……

 それを、僕はそっと、両手で抱き締める。

――まあ、結婚と言っても、ね――
――……ん?――

 想い出と、共に。

――出来ちゃった婚、だけど――
――……ええっ!?――

 ああ、そうか。

「……僕は」

 自分の、将来の奥さんと。

「……そして」

 未来を、全てこの手で、終わらせたんだ……

 トゥ……

 虚無に、ただ落ちる。

 トゥ、ウン……

 僕の、涙。



////////////////



 僕は、その終末を想像すら出来なかった。

――もしも、この聖戦が終わったら――

 彼女との結婚、その約束を守り、そして。

――旦那さんと、奥さんと、産まれた……――

 その、未来を信じていた。

――……神楽さん――

 そし

////////////////

 て。

――私は、もはや――

 彼女の顔も、名前すらも、おぼろ気である。

――あれは、あの制服を纏った、彼女は……――

 夢、だったのではないだろうか?

――幻覚、いや幻影……――

 学校、コーコーセイ、そして私の昔の名前。

――あれは、現実だったので、あろうか?――

 今の、私の目前に拡がるのは、昔のニホンとは、似ても似つかぬ。

――滅び行く、文明世界――

 私の力をもってしても、行き詰まりの統治区、そしてこの。

――昔など、想い出などに浸る暇すら与えてくれない、この――

 苦痛の、世界。




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