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プロローグ
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「ん?なんだお前。踏むぞ」
肌を焼く強い日差しと、頭をおかしくする大きな蝉の声の中。騒がしい夏の中。唯一落ち着いているその声が、君との出会いだった。
「おい、寝転んでたら踏んじまうだろ。さっさと起きて、そこのベンチにでも座っとけ」
続いて声が降ってきて、読んでいた本を閉じた。
ギラギラと光る金髪。白いTシャツに短パンの青年が、こちらを見下ろしている。
「なにボケッとしてんだよ。聞いてんのか?」
そう言われ、重い体を起こす。ほんの少し動いただけでも、暑くて死にそうだ。
キリッとした目と、スッと通った鼻筋が印象的な、なかなかにカッコいい彼は腕を組んで仁王立ちしている。
よっこらせと言いながら立ち上がると、見上げていた彼を見下ろすかたちになった。高校生あたりであろう彼は、キリッとした顔立ちの割にどこか幼げだ。
「おじさん。そこに寝っ転がられると、ガキどもがビビって日陰で休憩できねぇだろ。寝転ぶなら家帰れ」
僕を見上げながらそう言い放った彼は、ふんっと息を吐く。
広い公園には、声をあげて汗だくになりながらサッカーをする少年たちがいた。僕はそういうことかと納得する。「すまなかった」
僕が頭を下げてからベンチに座ると、僕が退いて満足したのか、青年は背中を向けて走って行った。
今年の夏は暑い。例え陽が傾いても、風が少なく、暑い空気が呼吸をする度に喉を焼く。そんな屋外に比べ、室内である、エアコンの効いたこの職場は楽園だ。それどころか、ホワイト・オブ・ホワイトであるこの企業は定時退社が約束されている。そして、夏の長期休みもしっかりとある。ちょうど明日からだ。
もうじき退社時刻がやってくる。残りの仕事を片づけていると、部長である青柳さんから声がかかった。
「藍兎。悪いんだが、仕事が終わったらちょっとこっちに来てくれるか?頼みたいことがあるんだ」
「はい。了解しました」
疑問に思いながらも返事をする。青柳さんは誰もが尊敬する、どんなに難しい仕事でもこなし、面倒見が良くしっかりとした人だ。そんな彼が頼み事とは、少し違和感があった。
仕事が終わり、パソコンの電源を落として鞄の帰り支度だけ済まして青柳さんのデスクへ向かうと、彼もこちらを見て立ち上がった。
「すぐ終わる。荷物持って、着いてきてくれ」
このオフィスには各フロアに、自販機や、小さなテーブルと椅子が並べてある、社員が自由に使える休憩スペースの様なところがあり、青柳さんに連れていかれたのはそこだった。
青柳さんはイチゴオレを、僕はコーヒーを買って、互いに向き合うかたちで椅子に座る。
そして彼は、いつもの明るげな表情とは変わった、真剣な面持ちで話し始めた。
「俺には大学生の息子がいるんだが、最近反抗的になってしまったというか、なんというか。早くに嫁に先立たれてしまって、父子家庭だが、これまで、ほんっとうに落ち着いた良い子に育ってくれていたんだ。なのに、突然髪を染めてくるわ、言葉遣いが荒くなるわ。親子の衝突も増えてしまって。これまで我慢をさせてきてしまったのかもしれないが、とうとう口も聞いてくれなくなってな。そこでなんだが、職場で一番若くて、息子と年が近い君に、明日から長期休みに入るだろう。暇な日で良いから、息子、陽斗と話をして欲しいんだ」
立て続けでそう言われた僕は、部長に奥さんと子供がいたという、思ってもいなかった事実に混乱し、なにも考えずにその頼み事を受けてしっまった。
長期休み初日、僕はとある風変わりな建物へ向かった。
看板はどこにもなく、色鮮やかできらきらと水滴が光る花々に囲まれたその建物は、アンティークな雰囲気が漂う、ツルが這う焦げ茶色の外壁と、ステンドグラスのような窓、磨かれた金色のドアノブが光るドアを持っていた。
ドアノブを捻り一歩踏み入れるとそこは、暖かな、包み込むような黄色の光で満たされた、照明のみを取り扱う専門店だった。
天井に吊るされた、クリスタルが散りばめられたシャンデリア、球の形をしたペンダントライト、紐が垂れ下がる和風照明。形が全く異なる照明が同じ部屋で光るその様は、まるで異世界だった。
かなり空調の効いた涼しく心地よい店内が、先ほどまでいた暑苦しい屋外との対比を感じさせ、余計に異なる世界に踏み込んだかのような錯覚に陥りさせる。
頭上の照明に夢中になっていると、一人の青年が脚立を持って店の奥からやって来た。
「いらっしゃいま……え、公園の……」
目を丸くする彼は、先日公園で声をかけてきた金髪の青年、陽斗君だった。前回会ったとは違い彼は、白いYシャツに黒いズボンを履いていた。どこか服に着られている感がある。
「こんにちは、陽斗君。お父さんに話は聞いているかな?僕は菅谷藍兎。これからよろしく」
挨拶をすると、彼は眉を寄せあからさまに不快な顔をし「帰ってくれ」と言い放った。
「いや、僕も頼まれてるから。あっさり帰るわけにはいないんだ」
「知らねぇ。帰ってくれ」
「いや、だからぁ」
「いや、大人だろ。何とかしろ」
「えぇ」
陽斗君はとうとう、僕を無視して脚立を立て、照明の埃を落とし始めた。雑巾で照明を拭きながら、ふんっと息を吐く。
僕は近くに置いてあった椅子に腰を掛ける。陽斗君は更に眉を寄せた。
「話すことなんか、なんもねぇよ」
彼は脚立を降りながらそう言い、店の奥へ戻ってしまった。その背中を見て、思わず僕はため息をつく。
拒絶されてしまった。今日のところは引き下がろうと、僕は店を出ていった。
「なんもねぇって」
翌日、またお店を訪れると、陽斗君は第一声、いらっしゃいませではなく、そう言った。彼は僕を無視し、床を箒で掃く。僕は椅子に座りそれを眺めた。
その翌日、彼は店の外で、花壇に水をやっていた。僕は花壇のそばにしゃがんでそれを眺めた。
そのまた翌日、彼は床を磨いていた。僕は脱いだ靴を持ち、椅子にあぐらをかいて座りそれを眺めた。
更に翌日、彼は店の奥から一度顔を覗かせて、それ以降出てくることはなかった。僕は椅子に座り照明を眺めた。
更にその翌日、彼は窓を磨いていた。僕は椅子に座りそれを眺めた。
毎日、特にすることもなかった僕は、お店に通った。その間に僕は、お店が「きらひかり」という名前だということ。花壇に咲いている花がペチュニアという花だということ。照明には小さな値札がついていて、価格は様々だが、一番高いものは十万を超えるということ。お店の店長は年配の方で、お客さんが来た時のみ、陽斗君に呼ばれて店内に現れるということ。陽斗君は、ネックレスを必ず着けているということを知った。
お店に行くと必ず、陽斗君はいた。彼は休みを入れていないのだろうか。
「まだ来んのかよ」
呆れた口調で言う彼は、小さなテーブルを担いでいる。
「うん。このお店、かなり居心地良いんだよね。それに毎日暇だし。陽斗君と仲良くなりたいし」
「そう……っすか」
陽斗君はボソッと言いながら、椅子に座る僕の前にテーブルを置いた。そして、ズカズカと、これまでにない程に大きな歩幅で店の奥に入って行った彼は、アイスコーヒーの入ったグラスを片手に、直ぐに戻って来た。
「アイスコーヒー、好きだろ」
レースのコースターと共に、グラスをテーブルの上に置く。
「え?」
「外暑かったろ。だから飲みもん」
「ど、どうも……」
「あとこれも。食え」
どこから出したのか、大量の駄菓子が出される。小学生を卒業してから見ることがなかった駄菓子たちはどれも懐かしい。
「全部食え、ゴミはここ入れろ」
「は、はい」
小さな紙袋が置かれる。状況がなかなか飲み込めず陽斗君を見ると、相変わらず呆れた顔をしているが、以前まで剃らしていた目を合わせてくれる。
「痩せすぎなんだよ。心配になるわ」
「す、すみません?」
そう言うとふんっと息を吐いて、照明を拭き始めた。
駄菓子はこんなに食べられないが、少し心を開いてくれたのかもしれないと思うと、とても嬉しかった。
背伸びをしながら高い所を拭く背中や、たくさんの駄菓子を見ていると、先輩は大学生と言っていたが、どうも幼く見えた。
彼はどうして変化してしまったのか、全くもって見当もつかないが、変わった彼はとても素敵な人間に感じた。
肌を焼く強い日差しと、頭をおかしくする大きな蝉の声の中。騒がしい夏の中。唯一落ち着いているその声が、君との出会いだった。
「おい、寝転んでたら踏んじまうだろ。さっさと起きて、そこのベンチにでも座っとけ」
続いて声が降ってきて、読んでいた本を閉じた。
ギラギラと光る金髪。白いTシャツに短パンの青年が、こちらを見下ろしている。
「なにボケッとしてんだよ。聞いてんのか?」
そう言われ、重い体を起こす。ほんの少し動いただけでも、暑くて死にそうだ。
キリッとした目と、スッと通った鼻筋が印象的な、なかなかにカッコいい彼は腕を組んで仁王立ちしている。
よっこらせと言いながら立ち上がると、見上げていた彼を見下ろすかたちになった。高校生あたりであろう彼は、キリッとした顔立ちの割にどこか幼げだ。
「おじさん。そこに寝っ転がられると、ガキどもがビビって日陰で休憩できねぇだろ。寝転ぶなら家帰れ」
僕を見上げながらそう言い放った彼は、ふんっと息を吐く。
広い公園には、声をあげて汗だくになりながらサッカーをする少年たちがいた。僕はそういうことかと納得する。「すまなかった」
僕が頭を下げてからベンチに座ると、僕が退いて満足したのか、青年は背中を向けて走って行った。
今年の夏は暑い。例え陽が傾いても、風が少なく、暑い空気が呼吸をする度に喉を焼く。そんな屋外に比べ、室内である、エアコンの効いたこの職場は楽園だ。それどころか、ホワイト・オブ・ホワイトであるこの企業は定時退社が約束されている。そして、夏の長期休みもしっかりとある。ちょうど明日からだ。
もうじき退社時刻がやってくる。残りの仕事を片づけていると、部長である青柳さんから声がかかった。
「藍兎。悪いんだが、仕事が終わったらちょっとこっちに来てくれるか?頼みたいことがあるんだ」
「はい。了解しました」
疑問に思いながらも返事をする。青柳さんは誰もが尊敬する、どんなに難しい仕事でもこなし、面倒見が良くしっかりとした人だ。そんな彼が頼み事とは、少し違和感があった。
仕事が終わり、パソコンの電源を落として鞄の帰り支度だけ済まして青柳さんのデスクへ向かうと、彼もこちらを見て立ち上がった。
「すぐ終わる。荷物持って、着いてきてくれ」
このオフィスには各フロアに、自販機や、小さなテーブルと椅子が並べてある、社員が自由に使える休憩スペースの様なところがあり、青柳さんに連れていかれたのはそこだった。
青柳さんはイチゴオレを、僕はコーヒーを買って、互いに向き合うかたちで椅子に座る。
そして彼は、いつもの明るげな表情とは変わった、真剣な面持ちで話し始めた。
「俺には大学生の息子がいるんだが、最近反抗的になってしまったというか、なんというか。早くに嫁に先立たれてしまって、父子家庭だが、これまで、ほんっとうに落ち着いた良い子に育ってくれていたんだ。なのに、突然髪を染めてくるわ、言葉遣いが荒くなるわ。親子の衝突も増えてしまって。これまで我慢をさせてきてしまったのかもしれないが、とうとう口も聞いてくれなくなってな。そこでなんだが、職場で一番若くて、息子と年が近い君に、明日から長期休みに入るだろう。暇な日で良いから、息子、陽斗と話をして欲しいんだ」
立て続けでそう言われた僕は、部長に奥さんと子供がいたという、思ってもいなかった事実に混乱し、なにも考えずにその頼み事を受けてしっまった。
長期休み初日、僕はとある風変わりな建物へ向かった。
看板はどこにもなく、色鮮やかできらきらと水滴が光る花々に囲まれたその建物は、アンティークな雰囲気が漂う、ツルが這う焦げ茶色の外壁と、ステンドグラスのような窓、磨かれた金色のドアノブが光るドアを持っていた。
ドアノブを捻り一歩踏み入れるとそこは、暖かな、包み込むような黄色の光で満たされた、照明のみを取り扱う専門店だった。
天井に吊るされた、クリスタルが散りばめられたシャンデリア、球の形をしたペンダントライト、紐が垂れ下がる和風照明。形が全く異なる照明が同じ部屋で光るその様は、まるで異世界だった。
かなり空調の効いた涼しく心地よい店内が、先ほどまでいた暑苦しい屋外との対比を感じさせ、余計に異なる世界に踏み込んだかのような錯覚に陥りさせる。
頭上の照明に夢中になっていると、一人の青年が脚立を持って店の奥からやって来た。
「いらっしゃいま……え、公園の……」
目を丸くする彼は、先日公園で声をかけてきた金髪の青年、陽斗君だった。前回会ったとは違い彼は、白いYシャツに黒いズボンを履いていた。どこか服に着られている感がある。
「こんにちは、陽斗君。お父さんに話は聞いているかな?僕は菅谷藍兎。これからよろしく」
挨拶をすると、彼は眉を寄せあからさまに不快な顔をし「帰ってくれ」と言い放った。
「いや、僕も頼まれてるから。あっさり帰るわけにはいないんだ」
「知らねぇ。帰ってくれ」
「いや、だからぁ」
「いや、大人だろ。何とかしろ」
「えぇ」
陽斗君はとうとう、僕を無視して脚立を立て、照明の埃を落とし始めた。雑巾で照明を拭きながら、ふんっと息を吐く。
僕は近くに置いてあった椅子に腰を掛ける。陽斗君は更に眉を寄せた。
「話すことなんか、なんもねぇよ」
彼は脚立を降りながらそう言い、店の奥へ戻ってしまった。その背中を見て、思わず僕はため息をつく。
拒絶されてしまった。今日のところは引き下がろうと、僕は店を出ていった。
「なんもねぇって」
翌日、またお店を訪れると、陽斗君は第一声、いらっしゃいませではなく、そう言った。彼は僕を無視し、床を箒で掃く。僕は椅子に座りそれを眺めた。
その翌日、彼は店の外で、花壇に水をやっていた。僕は花壇のそばにしゃがんでそれを眺めた。
そのまた翌日、彼は床を磨いていた。僕は脱いだ靴を持ち、椅子にあぐらをかいて座りそれを眺めた。
更に翌日、彼は店の奥から一度顔を覗かせて、それ以降出てくることはなかった。僕は椅子に座り照明を眺めた。
更にその翌日、彼は窓を磨いていた。僕は椅子に座りそれを眺めた。
毎日、特にすることもなかった僕は、お店に通った。その間に僕は、お店が「きらひかり」という名前だということ。花壇に咲いている花がペチュニアという花だということ。照明には小さな値札がついていて、価格は様々だが、一番高いものは十万を超えるということ。お店の店長は年配の方で、お客さんが来た時のみ、陽斗君に呼ばれて店内に現れるということ。陽斗君は、ネックレスを必ず着けているということを知った。
お店に行くと必ず、陽斗君はいた。彼は休みを入れていないのだろうか。
「まだ来んのかよ」
呆れた口調で言う彼は、小さなテーブルを担いでいる。
「うん。このお店、かなり居心地良いんだよね。それに毎日暇だし。陽斗君と仲良くなりたいし」
「そう……っすか」
陽斗君はボソッと言いながら、椅子に座る僕の前にテーブルを置いた。そして、ズカズカと、これまでにない程に大きな歩幅で店の奥に入って行った彼は、アイスコーヒーの入ったグラスを片手に、直ぐに戻って来た。
「アイスコーヒー、好きだろ」
レースのコースターと共に、グラスをテーブルの上に置く。
「え?」
「外暑かったろ。だから飲みもん」
「ど、どうも……」
「あとこれも。食え」
どこから出したのか、大量の駄菓子が出される。小学生を卒業してから見ることがなかった駄菓子たちはどれも懐かしい。
「全部食え、ゴミはここ入れろ」
「は、はい」
小さな紙袋が置かれる。状況がなかなか飲み込めず陽斗君を見ると、相変わらず呆れた顔をしているが、以前まで剃らしていた目を合わせてくれる。
「痩せすぎなんだよ。心配になるわ」
「す、すみません?」
そう言うとふんっと息を吐いて、照明を拭き始めた。
駄菓子はこんなに食べられないが、少し心を開いてくれたのかもしれないと思うと、とても嬉しかった。
背伸びをしながら高い所を拭く背中や、たくさんの駄菓子を見ていると、先輩は大学生と言っていたが、どうも幼く見えた。
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