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40話 取引3
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「な、なんで坂北がいるんだ...?ってか俺、何もしてないっすよ!!」
高橋も状況が分からないのか、戸惑っているようだ。生徒会室の入り口で立ちすくんでいる。
「通学路ではない道を使って登校していただろう?校則違反でお仕置きだよ。」
南原さんはそう言って立ち上がると、高橋の方へ近づき、ドアの鍵を閉めた。
高橋は慌てて南原さんと距離をとろうとするが、すかさず胸ぐらをガッと捕まれてドアに背中を打ち付けられた。
「た、高橋!」
「うぐっ...!は、なせ、よ!ってか、何で知ってんだお前!」
ものすごい形相で目の前を睨み付け、手を引き剥がそうと奮闘する高橋だが、南原さんには到底及ばない。
俺は、唖然とその光景を見つめていた。
「俺の情報網を舐めないでほしいな。」
「ま、待て!待ってください!これにはちゃんとした訳があってですね...!子猫が木から降りられなくなってて、それを助けようとしてちょっと道をはみ出しただけで!だから...」
「だから何だ?違反したことは事実だろう。」
「っ...けどっ...!」
無駄だ。例えどんな正当な理由があろうと、校則違反をしてしまったらお仕置きは免れない。学校のためというのは建前で、南原さんの欲求を晴らすために行われる行為なのだから。
「.........い、痛い...いたた...すみません南原さん。俺、実は今日、腹の調子が...」
咄嗟に、今日散々練習していた腹痛の演技を披露する高橋。逃げられる可能性のある唯一の手段だ。南原さんを説得するのは無理だと悟ったのだろう。しかし、感情の籠らない言葉にやたらオロオロとした挙動。本人は本気で演じているつもりかもしれないが、これでは南原さんどころか、例え小さい子供が相手でも欺くことなんて不可能だ。
彼はきっと嘘をついたり人を騙すことが出来ないほど素直な性格なのだろう。
南原さんは、そんな高橋に冷めた目を向けていた。
「ふーん。高橋くんが仮病というとんでもない難病を患っているのは分かったよ。坂北くんから昨日のことを聞いたのか?」
南原さんが嫌味ったらしく問いかけると、高橋がピクッと体を強張らせるのが分かった。
「ククッ、さあ坂北くん取引の続きだ。俺は今からお仕置きで、高橋くんをぶち犯そうと思っている。だが、お前が取引に応じ、校則を緩める代わりにその身を差し出すというのなら、高橋くんは解放してやろう。」
「っ...!」
どうやら、高橋は俺に取引させるための人質としてここに呼ばれたみたいだ。
今なら南原さんの真っ黒な腹の中が透けて見える気がする。
人質なんて、そんなの卑怯だ!
「と、取引ってなんだよ坂北!!」
「お前は黙っていろ。」
「ぐぁっ!!げほげほっ!!」
声を張り上げた高橋の腹に、南原さんの足が勢いよく食い込んだ。痛みに顔をしかめ、涙目になりながら咳き込む高橋だが、胸ぐらを掴まれたままで、倒れこむこともできない。
その光景に俺はますます焦ってしまう。そして、躊躇のない暴力を振るう南原さんへの怒りと悔しさ、何も出来ない自分への怒りと悔しさで、思考が鈍っていった。
唇を噛みしめ、拳を痛いほど握りしめる。
南原さんに絶対服従なんて怖いけれど、このままでは高橋が...。
俺に残された道は、ただ一つ。怖いけど、怖いけど...
「...なぁ、坂北。」
不意に聞こえた、高橋の穏やかな声。
「...俺、多分まだ状況よく分かってねぇけどさ、俺なら大丈夫だから、その、無理すんなよ。」
どうして。
俺に笑いかけるその顔には、隠しきれない恐怖の感情がにじみ出ているし、押さえつけられたその体は、俺のいる位置からでも分かるほど震えているのに。
だめだ、見捨てられない。
「...全然大丈夫じゃないだろ。無理すんなは、こっちの台詞。」
俺は、逆らうことを許されず屈服させられるその恐怖を、どうしよもなく分かってしまうから。
そんな思いはさせたくない。
自分が生け贄になるよりも、やっと出来た友達が酷い目に遭う方が何倍も怖くて。
「...俺、南原さんに...絶対服従、約束します。だから校則を緩めて、高橋を解放してください...。」
絞り出したその声は弱々しく、情けない涙声だった。
高橋も状況が分からないのか、戸惑っているようだ。生徒会室の入り口で立ちすくんでいる。
「通学路ではない道を使って登校していただろう?校則違反でお仕置きだよ。」
南原さんはそう言って立ち上がると、高橋の方へ近づき、ドアの鍵を閉めた。
高橋は慌てて南原さんと距離をとろうとするが、すかさず胸ぐらをガッと捕まれてドアに背中を打ち付けられた。
「た、高橋!」
「うぐっ...!は、なせ、よ!ってか、何で知ってんだお前!」
ものすごい形相で目の前を睨み付け、手を引き剥がそうと奮闘する高橋だが、南原さんには到底及ばない。
俺は、唖然とその光景を見つめていた。
「俺の情報網を舐めないでほしいな。」
「ま、待て!待ってください!これにはちゃんとした訳があってですね...!子猫が木から降りられなくなってて、それを助けようとしてちょっと道をはみ出しただけで!だから...」
「だから何だ?違反したことは事実だろう。」
「っ...けどっ...!」
無駄だ。例えどんな正当な理由があろうと、校則違反をしてしまったらお仕置きは免れない。学校のためというのは建前で、南原さんの欲求を晴らすために行われる行為なのだから。
「.........い、痛い...いたた...すみません南原さん。俺、実は今日、腹の調子が...」
咄嗟に、今日散々練習していた腹痛の演技を披露する高橋。逃げられる可能性のある唯一の手段だ。南原さんを説得するのは無理だと悟ったのだろう。しかし、感情の籠らない言葉にやたらオロオロとした挙動。本人は本気で演じているつもりかもしれないが、これでは南原さんどころか、例え小さい子供が相手でも欺くことなんて不可能だ。
彼はきっと嘘をついたり人を騙すことが出来ないほど素直な性格なのだろう。
南原さんは、そんな高橋に冷めた目を向けていた。
「ふーん。高橋くんが仮病というとんでもない難病を患っているのは分かったよ。坂北くんから昨日のことを聞いたのか?」
南原さんが嫌味ったらしく問いかけると、高橋がピクッと体を強張らせるのが分かった。
「ククッ、さあ坂北くん取引の続きだ。俺は今からお仕置きで、高橋くんをぶち犯そうと思っている。だが、お前が取引に応じ、校則を緩める代わりにその身を差し出すというのなら、高橋くんは解放してやろう。」
「っ...!」
どうやら、高橋は俺に取引させるための人質としてここに呼ばれたみたいだ。
今なら南原さんの真っ黒な腹の中が透けて見える気がする。
人質なんて、そんなの卑怯だ!
「と、取引ってなんだよ坂北!!」
「お前は黙っていろ。」
「ぐぁっ!!げほげほっ!!」
声を張り上げた高橋の腹に、南原さんの足が勢いよく食い込んだ。痛みに顔をしかめ、涙目になりながら咳き込む高橋だが、胸ぐらを掴まれたままで、倒れこむこともできない。
その光景に俺はますます焦ってしまう。そして、躊躇のない暴力を振るう南原さんへの怒りと悔しさ、何も出来ない自分への怒りと悔しさで、思考が鈍っていった。
唇を噛みしめ、拳を痛いほど握りしめる。
南原さんに絶対服従なんて怖いけれど、このままでは高橋が...。
俺に残された道は、ただ一つ。怖いけど、怖いけど...
「...なぁ、坂北。」
不意に聞こえた、高橋の穏やかな声。
「...俺、多分まだ状況よく分かってねぇけどさ、俺なら大丈夫だから、その、無理すんなよ。」
どうして。
俺に笑いかけるその顔には、隠しきれない恐怖の感情がにじみ出ているし、押さえつけられたその体は、俺のいる位置からでも分かるほど震えているのに。
だめだ、見捨てられない。
「...全然大丈夫じゃないだろ。無理すんなは、こっちの台詞。」
俺は、逆らうことを許されず屈服させられるその恐怖を、どうしよもなく分かってしまうから。
そんな思いはさせたくない。
自分が生け贄になるよりも、やっと出来た友達が酷い目に遭う方が何倍も怖くて。
「...俺、南原さんに...絶対服従、約束します。だから校則を緩めて、高橋を解放してください...。」
絞り出したその声は弱々しく、情けない涙声だった。
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