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226話 期末テスト 22
しおりを挟む「バカの癖にややこしく考えてんじゃねーよ。」
「は...?」
東山の、呆れたような、嘲るような、でも決して嫌味じゃない声色。
フワフワと頭を撫でてくるこの手が、暖かくて心地よくて、ムカつく。
こいつの手を、心地いいと感じるなんて。
「俺の気持ちを知ったとして、俺がお前をからかってるだけなのか、そうじゃないのか知ったとして、お前の答えは変わるのか? 」
「っ...それは...」
きっと、変わらないだろう。
だけど、東山の気持ちが分からないまま、答えを出すのは怖い。
「お前は傷つかない保証がねぇと、自分の気持ちと向き合えねぇのか? 」
「っ...! 」
そう言われてはっとする。
そうか、俺は、びびってたんだ。自分が傷つくこと、そして、東山が傷つくことに。
だから東山の本心を知りたがった。だから余計に答えを出せないでいた。
俺、そんなに臆病だったっけ?
こんなに慎重になってしまうのは、まさか、東山が相手だから...?
「どうすればいいのかって? んなの全力でかかって来ればいーよ。別に、お前が勝ったとして、離れろって命令じゃなくてもいいんだぜ。勝った方の言うことを聞くっつーのが条件だっただろ。この際、離れたいのか離れたくないのか、わかんねぇままでもいいんじゃねーの。」
「っ...でも...」
せっかく東山と離れられるチャンスなのに、それを無駄にしろと?
それでもし、俺がやっぱり離れたいという答えを出したら、その時はどうすればいいんだよ。
「俺とサヨナラしたくなったら、どうするかはその時に考えればいーよ。」
また勝負したくなったら受けて立つぜ、と笑う東山に、まるで霧が晴れたように、頭がすっきりとしていく。
そうか、俺は、らしくもなくビビってただけだったんだ。
こんなに思い詰める必要なんて、なかったんだ。
安心したら気が抜けて、久々に眠気が襲ってくる。東山のお陰で吹っ切れたなんて癪だけど。
「つーか高橋が勝つ前提で話が進んでっけど、勝つのは俺だからな。俺が勝って、お前は俺と付き合うんだから、お前がどうこう悩む意味なんかねぇんだよ。」
偉そうな態度で宣言してくる東山に、俺も、なんだか闘志が燃えてくる。
覚悟を、決めよう。
東山の気持ちなんか分からなくても、例えどんな結果になっても、自分の気持ちと向き合って、ちゃんと答えを出す覚悟を。
「勝つのは...おれ...だし...」
眠気で呂律が回らない俺は、舌ったらずな声で、そう宣言した。
そして、なかなか寝付けない日々が続いていた俺は、久しぶりにぐっすり眠れたのだった。
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