『人外×少女』:人ならざる魔物に転生した僕は、可愛い少女とあれこれする運命にあると思う。

栗乃拓実

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第ゼロ章『人外×金龍の迷宮オロ・アウルム』

第11話:まさかこれは、黄金に輝く○○○○かっ!?

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 仄かな黒と淡い蒼が滲んだ景色が、次々と視界の後ろへ流れていく。
 シェルちゃんが迷宮核ダンジョン・コアから創り出した洞窟型の迷宮も入り口に近づき、縦横と拡大された通路はシェルちゃんが翼を広げても十分に余りある。

 ちなみにシェルちゃんはある程度の範囲であれば身体の大きさを変化させることが出来るみたいで、本当はもっと巨大なのだとか。そして今の大きさが最小。
 これ以上小さくなるためには『子竜』の姿にならねばならず、それだと僕を乗せられないみたいだ。

 よって今のシェルちゃんはドラゴンという種族の名に相応しい高速飛行を披露していた。
 しっかりと捲れた鱗に掴まり、全身の鎧を震わせる程の速度を全身で体感する。人では決して為し得ない経験に興奮するとともに、まるで風と一体化したような気さえしてくる。最高の気分だ。

 通路の真ん中で地面から天井まで突き立った魔結晶に対し、その黄金の巨躯を九十度傾けて通過する。身体が浮き籠手の先で必死に鱗を掴み、どうにか踏ん張って耐えた。

 再び元の低空飛行に戻り、その速度は増していくばかりだ。

「――見えた! 光だ!」

 と、そこで。
 前方を恒星のような輝きが埋め尽くした。暗闇の中の異彩を放つ光。
 間違いない、外界――『太陽』の光だ。

 ――長かった! 長かったよぉ! ついについに、外に出られる日が――、

「あ、多分あの光は我の神域武装エクセリアじゃ」

「死ね! マジで死ね! 僕の感動を返せよ!」

「り、理不尽なのじゃ……」

 頬を引きつらせて速度を緩め始めるシェルちゃんだが、こっちは涙まで流した(そんな気がした)んだ。

 いや普通さ、洞窟の出口が近いとわかってる状況で強い光が見えたら出口だろ。紛らわしいにも程があるわ。
 外からは誰も侵入できないようになってるらしいけど、仮に冒険者が冒険しに来た際には誰もが勘違いするに違いない。上げてから落とされて、なんて性格の悪い迷宮だ迷宮の主ダンジョン・ボスの性格が反映してるようだって叫ぶに違いない。

 っていうか、神域武装エクセリアって言った!?

 僕の感情が憤慨から驚愕へと推移している間に、その強烈な光源の広間に到着した。

 そこにあったのは――黄金の玉座、光り輝く剣、盾、装備類、杯、アクセサリー類、宝石、金銀をはじめとする硬化が溢れる宝箱など、目に痛いくらいの山のように積まれた金銀財宝。 

「――ここは……?」

「……ああ、ここが本来の宝物庫――『金龍の迷宮オロ・アウルム』の終着点なのじゃ」

 黄金一色に染まる領域エリアに足を踏み入れ、シェルちゃんがたった今思い出したとでも言いたげな素振りでぬけぬけと言った。
 彼女の背から降りた僕は裏切られた苛つきを噛みしめながら、あまりの眩しさに金属でできた籠手を掲げて視界を遮る。

 それにしても、

「はぇ? それって迷宮の主ダンジョン・ボスを倒した後に開く、報酬部屋みたいな所でしょ? なんでそんな大事な場所がこんな出口付近の初っ端にあるの? 最初は飛べなかったとはいえ、シェルちゃんの速さで一ヶ月以上移動しなきゃ行けないほどの距離がここより後ろに続いてるってのに」

 迷宮の領域エリア配置がおかしいのだ。
 進入禁止になっているとはいえ、仮に僕みたいなヤツが現れたらどうするのか。僕だったら全て奪って即帰還だね。これじゃボーナスステージみたいなもんだ。

「うーむ……いやな、最初は我がおる場所はここ宝物庫のすぐ後ろだったんじゃ。だが迷宮ダンジョンというものは迷宮の主ダンジョンボスが生きている限り成長を続けるものでな。恐らく三百年以上の月日をかけて宝物庫と我がいた場所の間に領域エリアが生じたのじゃろうて」

「はぁ!? じゃあ出口はまだ先って事!? しかも今まで進んだ以上の距離があるって事!? それ出るまでに何ヶ月、いや何年かかるんだよ! 管理くらいしっかりやれこの怠惰ドラゴン!」

 まさかのまさかだ。
 そろそろ出てると思っていただけに、僕はものすごくお冠である!

「我も予想外じゃったが……まてまて、待つのじゃ。迷宮はそこにある迷宮核ダンジョン・コアを壊せば崩壊する。おそらく外に出ることは容易であろ」

 シェルちゃんは財宝に埋もれた金の玉座の前にある立派な台座を指差す。
 きっとその上に浮かんでいる、不可思議なオーラを放つ虹色の宝玉が核なのだろう。なんだ、それならいいや。びっくりして損した。

「なんだ、ならいいや。うおぉお~金銀財宝が山ほどあるぞー! 金持ち金持ちっ! これで生涯働かなくてすむぞ~っ!」

「其方は現金なヤツじゃなぁ……」

 呆れた溜息を背に、僕はてこてこと小走り(僕にとっては全力である)で宝の山に近づいた。
 鎧に使われている金属が高等な物になったのか、重さは以前の五分の一といっていいほどに軽く、金属同士が擦れる音も大きく軽減されているのだ。

「なにこれすごい綺麗な短剣! でもあんまり強そうじゃないな。うおー、なんだこの王冠! ってふさふさの白紐が邪魔でつけらんないよ! おおお、またこの鎧も……鎧が鎧着るってどういうことだよっ!!」

「……其方そち、実は一人でも生きていけるであろ?」

 一人漫才をやっている僕に、実に心外なことをいうシェルちゃん。

 端から見れば楽しそうに見えるかもしれないが、やっぱり友達と話してる方がいいよね。精神的にも外面的にも。これは、そう。あまりに孤独を極めすぎて、独り言がクセになってしまったのだ。

「仕方ないから全部異次元に放り込んで、冒険者組合ギルドで売るか」

「今の其方は魔物であろ? そこのところ考慮しているかえ?」

「…………はぁ、使えな」

「またそれなのじゃっ!?」

「我のせいじゃないのに……」とブツブツ言っているドラゴンは財宝と同化してるのでよく見えません。どこにいますか。
 迷宮核をじろじろと観察した後、手当たり次第に財宝に触れて『鎧の中は異次元ストレージ・アーマー』で収納していく。

「ところでシェルちゃん。さっき神域武装エクセリアって言ったよね? どこにあるの?」

「そ、其方、我の宝具まで盗る気なのかえ!? え、遠慮というものを知らんのか……」

「いやいや、だってシェルちゃん僕の中に入るんでしょ? それにこの迷宮壊すって言うじゃんか。ここに置いたままだとまずいんじゃない?」

「正論過ぎて言葉もないのじゃぁあ……」

 わかってくれて何より。神域武装エクセリアゲットだぜ。

「それにしてもシェルちゃんの宝具か……金になり、ゲフンゲフン、これからの戦いに使えそうだな。んで? どんなヤツだったの? せめて特徴とかさ、お粗末なシェルちゃんの脳味噌でも覚えてないかな?」

 僕は売ることを諦めたわけじゃない。いつか人化して売りに出してやるのだ。
 いや、我らが家族の切り札として使うのもいいかもしれないけどさ。

「相変わらずの扱いはもういいのじゃ、諦めたのじゃ……そうよな、我の宝具は『幻想宝具』の類い……装着したものの身体に併せて姿を変化させる『決して壊れぬ鎧』じゃ」

 聞いて驚く。
 それは数多く存在する『宝具』の中でも一際強い力を持つものだったからだ。

 ……でも、

「ねぇシェルちゃんさ。ただでさえ防御力のパラメーターぶっちぎってんのに、さらに防御固めてなにがしたいの?」

「し、仕方なかろう? 我が生まれ落ちた時にいつの間にか手にしていた物なのじゃ! 我は選べなかったのじゃ……だが絶対に壊れぬ鎧であると同時に、『変幻自在の鎧』でもある。それなりに攻撃力もあるのじゃ」

「へぇー……――ッ!?」

 右から左へと言い訳じみたシェルちゃんの言葉を聞き流し、次々に財宝を収納していた僕だったが、その瞬間に意識が飛んだ。いや、飛ぶような錯覚を得た。

 指先に当たる感触を再度確認するべく、もう一度押し込んでみる。

 ――フニュ。

「フニュって! シェルちゃん今フニュって!」

「む? ふにゅ? 何を言って――それはッ」

 面甲ベンテールをガチャガチャと開閉させ、その奥で紫紺の瞳を輝かせる僕。振り向いた先で驚きのあまり目を瞠るシェルちゃん。

 僕の指先にはどの世界どの時代どの年齢の垣根なしに、種としての真っ当な男が求めて止まない至高の感触が! が! が!

 金銀財宝に半ば埋もれてはいるが、隙間から目に付く見た目だけでも、しっとりすべすべの柔さを備えつつ若々しいハリを忘れない表面だとわかる。わかってしまう。

「ハッ、これはもしや――おっぱいかッ!? これは黄金に輝くおっぱいなのかぁッ!?」

「いや、スライムじゃ」

 鼻はないが鼻息荒く、むふふーっと興奮し始めた僕をよそに、冷めた龍瞳でこちらを見据えるシェルちゃんが冷静な一言を呟いた。

 ……なんて?

「へ? ごめん今、上手く聞こえなかった。聞き間違いだとは思うんだけど――……スライムって言った?」

「うむ。言ったのじゃ」

 ぼく、しぇるちゃんがなにいってるのかわかんない。

「へぇ~。ねえシェルちゃん。この黄金のおっぱい枕にしたら快眠できそうじゃない? ムフフな夢も見れそうだし素晴らしいなぁ」

「認めない気であろっ!? 其方そち断固として現実を見ない気であろっ!?」

「えぇ……だってスライムとか言われても――」

 黄金のドラゴンならわかるけどさ。黄金のスライムってなによ? 

 僕が最大限の訝しげな視線をシェルちゃんに向けた所で、もぞっと指先に触れた物体おっぱいが動く。ぼくは驚きよりも先んじてエロスを感じる弾力についついにやけてしまう。

 あきらかな生命力を感じさせる柔らかい黄金の塊おっぱいは、積まれていた財宝をガラガラと押しのけて一歩前に出る――そしてその姿を現せた。

 優しい楕円形を描く流動的なフォルム。
 青みが強い虹色のよう色彩の宝石が二つ、目のような位置で煌めく。
 その見た目は惑星『アルバ』にて五歳の子供でも倒せる最弱の魔物――『スライム』に酷似しているわけだが……

 僕の側に寄ったシェルちゃんが胸を張ってどや顔をつくった。
 
「ほら見るのじゃ、スライムであろ?」

「あれぇ、ない、ないぞ?」

「な、何がないというんじゃ?」

「くそぉ、突起があれば完璧だったのに……」

「しつこいぞ其方そちぃぃいぃいいっ!?」

 スライム? なにそれ美味しいの?
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