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第一章『人外×幻想の魔物使い』
第32話:怪しげな香り
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その日は、普段通りの紋切り型な一日の始まりを告げる太陽が昇るより早く。
ヒースヴァルムの住人が目を擦りながら火を熾し、一時的に影を潜めていた人に機械にと雑多な騒音が戻ってくる前に目が覚めた。
ああ、ご多分に漏れずご主人様の胸の中でね。
今日も今日とてけしからん弾力。これが脂肪の塊だというのだから女体というものは神秘だ。そんな神秘を貪る人豚族あたりの魔物たちにはぜひともこの二房の至宝を見習ってほしいものだと思うね。
室内とは言え冷え切った空気が蔓延しているこの季節。
温もりが詰まった布団、ましてや美少女の胸の中から這い出る意欲を容赦なく削いでくれるから大変だ。
「んぅ……おに――ちゃ――…………んぁっ」
僕は一度大きく息を吸ってエルウェを堪能したの後、どうにか区切りをつけて腕と胸の間から抜け出す。何か独り言を言っていた彼女だが、その際にどこかいけない部位に触れてしまったのか、艶めかしい桜色の唇から嬌声が漏れた。
「うんうん。今日もぱっちり目が覚めるような目覚ましをありがと。さっそく襲っていいかな?」
「相変わらずだなお前はァ……今日は早いじゃねェかァ。いつもなら暫くは寝たふりして主の胸にしがみついてるのによォ」
ベットに立ちエルウェの可愛い寝顔を見ながらそんなことを言っていると、鍵の解錠音の後にドアが開く。しかしそこの来場者の影はなく――よく見れば下の方に薄赤の毛を持つ子猫の姿が。
「おーフラム先輩、おはよう。でもそんな言い方はよしてくれよ、まるで僕が変態騎士みたいじゃないか。あれは僕がしがみついてるんじゃなくて、エルウェのおっぱいが僕を離してくれないのさ」
「あァ、朝っぱらから何を言ってるかわからンが、おはよゥ。そしておやすみィ」
とことこと小股で歩いてきたフラム先輩は、僕と入れ違うようにエルウェの元へ。
布団を鼻頭で押し上げ、するすると温もりと女の子の香りが充満している至福の世界へと侵入していく。例の如くエルウェの側に寄り添って一眠りするのだろう。
「今日は迷宮に潜るって言うからさ。自分のスキルの再確認をしようと思ってね……フラム先輩は? こんな時間まで何してたのさ?」
「……うるせェ。オレは眠いんだァ」
「そっかい」
詳細は語ろうとしないが、フラム先輩は恐らく毎晩のようにどこかへ出かけている。
エルウェがそのことを心得ているのかは知らない。僕はおんぼろのドアを開閉する音でたまに目が覚めるから気がつくけど、エルウェの眠りは深いからなぁ。
いつもなら気配で察しているだけ。特に干渉したりはしない。
前にフラム先輩が出かける時に顔を合わせたことはあるけど、こうやって帰ってきた際に面と向かって出くわすのは初めてだ。
「……修行でもしてるの?」
「…………」
今日は特に遅い時間帯、というかもはや夜が明けようとしている時間に帰ってきたみたいだけど……今日に限っては少しだけ踏み入ることにした。
そりゃあ僕だって隠し事の一つや二つ……三つ……四つ、あれまだ出てくる凄い多いな最低かよ僕。まぁ例え眷属だとしてもさ、内緒にしておきたいことはあると思うんだ。
でも、今日のフラム先輩は少しだけ。
――血と煙の交ざり合ったようなきな臭さが濃いから。
「まぁフラム先輩のことだから危険なことはしてないとは思うけど……そのまま寝るとエルウェに匂いが移っちゃうよ。お風呂入ってきたら?」
「…………そうだなァ、そうするゥ」
するる、と再び布団から這い出てきたフラム先輩の顔には薄い陰りが落ちている。濃い疲労の色が滲んでいるように見えた。
「うんうん。今日も一日くっついてる予定の僕としては、大人っぽい花の芳香と子供らしいお菓子みたいな甘い匂いが混ざり合った、女の子の香りとでも言うべきいつものエルウェでいてほしいからね。そっちの方が興奮する」
「お前は戦うためにスキルの確認するんじゃねェのかよォ!?」
扉からの去り際にそう言って目を剥くフラム先輩であった。
ヒースヴァルムの住人が目を擦りながら火を熾し、一時的に影を潜めていた人に機械にと雑多な騒音が戻ってくる前に目が覚めた。
ああ、ご多分に漏れずご主人様の胸の中でね。
今日も今日とてけしからん弾力。これが脂肪の塊だというのだから女体というものは神秘だ。そんな神秘を貪る人豚族あたりの魔物たちにはぜひともこの二房の至宝を見習ってほしいものだと思うね。
室内とは言え冷え切った空気が蔓延しているこの季節。
温もりが詰まった布団、ましてや美少女の胸の中から這い出る意欲を容赦なく削いでくれるから大変だ。
「んぅ……おに――ちゃ――…………んぁっ」
僕は一度大きく息を吸ってエルウェを堪能したの後、どうにか区切りをつけて腕と胸の間から抜け出す。何か独り言を言っていた彼女だが、その際にどこかいけない部位に触れてしまったのか、艶めかしい桜色の唇から嬌声が漏れた。
「うんうん。今日もぱっちり目が覚めるような目覚ましをありがと。さっそく襲っていいかな?」
「相変わらずだなお前はァ……今日は早いじゃねェかァ。いつもなら暫くは寝たふりして主の胸にしがみついてるのによォ」
ベットに立ちエルウェの可愛い寝顔を見ながらそんなことを言っていると、鍵の解錠音の後にドアが開く。しかしそこの来場者の影はなく――よく見れば下の方に薄赤の毛を持つ子猫の姿が。
「おーフラム先輩、おはよう。でもそんな言い方はよしてくれよ、まるで僕が変態騎士みたいじゃないか。あれは僕がしがみついてるんじゃなくて、エルウェのおっぱいが僕を離してくれないのさ」
「あァ、朝っぱらから何を言ってるかわからンが、おはよゥ。そしておやすみィ」
とことこと小股で歩いてきたフラム先輩は、僕と入れ違うようにエルウェの元へ。
布団を鼻頭で押し上げ、するすると温もりと女の子の香りが充満している至福の世界へと侵入していく。例の如くエルウェの側に寄り添って一眠りするのだろう。
「今日は迷宮に潜るって言うからさ。自分のスキルの再確認をしようと思ってね……フラム先輩は? こんな時間まで何してたのさ?」
「……うるせェ。オレは眠いんだァ」
「そっかい」
詳細は語ろうとしないが、フラム先輩は恐らく毎晩のようにどこかへ出かけている。
エルウェがそのことを心得ているのかは知らない。僕はおんぼろのドアを開閉する音でたまに目が覚めるから気がつくけど、エルウェの眠りは深いからなぁ。
いつもなら気配で察しているだけ。特に干渉したりはしない。
前にフラム先輩が出かける時に顔を合わせたことはあるけど、こうやって帰ってきた際に面と向かって出くわすのは初めてだ。
「……修行でもしてるの?」
「…………」
今日は特に遅い時間帯、というかもはや夜が明けようとしている時間に帰ってきたみたいだけど……今日に限っては少しだけ踏み入ることにした。
そりゃあ僕だって隠し事の一つや二つ……三つ……四つ、あれまだ出てくる凄い多いな最低かよ僕。まぁ例え眷属だとしてもさ、内緒にしておきたいことはあると思うんだ。
でも、今日のフラム先輩は少しだけ。
――血と煙の交ざり合ったようなきな臭さが濃いから。
「まぁフラム先輩のことだから危険なことはしてないとは思うけど……そのまま寝るとエルウェに匂いが移っちゃうよ。お風呂入ってきたら?」
「…………そうだなァ、そうするゥ」
するる、と再び布団から這い出てきたフラム先輩の顔には薄い陰りが落ちている。濃い疲労の色が滲んでいるように見えた。
「うんうん。今日も一日くっついてる予定の僕としては、大人っぽい花の芳香と子供らしいお菓子みたいな甘い匂いが混ざり合った、女の子の香りとでも言うべきいつものエルウェでいてほしいからね。そっちの方が興奮する」
「お前は戦うためにスキルの確認するんじゃねェのかよォ!?」
扉からの去り際にそう言って目を剥くフラム先輩であった。
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