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1話 隠居中の魔導師
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とある山の奥、僕はここで一人暮らしをしている。
日の出と共に目を覚まし瞑想して、その後に朝食を作り食べるのが、ここ数百年の僕のルーティンだ。
「うん、今日も良い一日だね!」
隠居生活を始めて数百年、最初の頃は料理なんて出来ずに色々と生で齧っていたけど、僕も成長したもんだ。
ここ百年ぐらいは畑で土いじりにも挑戦している。
やはり自分で育てた作物は美味しく感じる物だ。
朝食を終え、洗い物を済ませた後に畑で育てている茶葉でお茶を淹れて一息ついていると、何かが僕の結界魔法に引っかかった感覚があった。
「珍しいね、他人の使い魔なんて本当に何百年振りじゃないか?どうやら悪意はないみたいだけど」
人里離れた山奥だけど、流石に数百年住んでいると何度か迷い込む者もいる。
見殺しにするのも食事が不味くなるから、動けるようになると記憶を消して人里の方に飛ばしたりして処理して来たけど、明確に理由があってここに来た者は隠居して以来初めてだ。
「ファウスト、行って来てくれるかい?」
本からの視線は外さずに一言呟くと、僕の影から一匹の黒い狼が飛び出す。
僕の使い魔で、影狼のファウストだ。
隠居してからは話し相手になってもらっている。
「仰せのままに、我が主人」
そう言って頭を下げると、凄い速さで反応があった場所に向かって駆け出した。
そして、数分で帰って来たファウストの口には、一通の手紙が咥えられていた。
「手紙…?態々こんな所まで訪ねて来たのだからお茶ぐらい出すのに、ねぇ?ファウスト」
数百年振りの来訪者に興味がわいた僕は、本から視線を外しファウストに苦笑いした。
「全くです。しかし主人、何か懐かしい臭いが手紙から感じられましたのでお知り合いでは?」
僕は数十年振りに笑った。
「あっはっは!ファウスト、僕の知り合いがまだ生きてる訳ないだろ!まぁ、もし生きてるとしたらあの二人だけど、あいつらなら呼ばなくてもご飯まで食べて帰るさ!」
僕はひとしきり笑った後、ファウストを撫でながら受け取った封筒の封を切らずに眺め回す。
「魔法の痕跡はない、か…さて、どこの知り合いだろうね?」
僕は胸元から煙草を取り出して火を付ける。
このまま読まずに燃やしてしまおうか?
そう考えもしたがやめておいた。
なんせ数百年振りの手紙だったので興味を持ってしまったのだから。
罠がないのを確認して封蝋をナイフで外すと、封筒には一枚の手紙が入っていた。
「なになに…大師父様、突然のお手紙申し訳ありません。私はかつての弟子、マリーダの2代目の弟子となるメリルと申します…?ああ、あの気の強かったマリーダ!ファウストを一番可愛がってた子だね!」
そう言ってファウストを見ると、尻尾をブン、と一度振った。
「全く、素直じゃないやつめ。それで…我が師匠マリーダに生涯の課題として、大師父様を発見し教えを乞うという難題を我ら弟子達は独り立ちした者は出されております?なんだそりゃ?」
「マリーダらしいじゃないですか、主人?それで、会ってあげるんですか?数百年放置した子供達の子孫に」
僕が怪訝そうな顔をしていると、さっきの仕返しとばかりにファウストが喋り出した。
「僕を育児放棄したみたいに言うんじゃない!全く…まぁでも、あの子達の弟子なら少し会ってみたいかな?」
紫煙を揺らしながら思い出すのは、5人の子供達。
僕が隠居前に面倒を見ていたが、未来あるあの子達に僕の世捨て人みたいな生活へと一緒に連れて行く訳には行くまいと、全員の独り立ちを見届けてからこの生活を始めたんだ。
ふと、頭に浮かんだあの子達の顔に僕は、自然と口が開いた。
「…行ってみようか」
そう言って最後に煙草をひと吸いし、まだ火のついた煙草を指で弾くと、青い火が煙草を包み込み一瞬で灰も残さず燃え尽きた。
「お供します、主人」
ファウストも起き上がり、僕の影に飛び込む。
久々の外出が嬉しいのか尻尾をブンブン振っていたのを僕は見逃さなかった。
「本当に素直じゃないね、君も」
再び一人になった家で呟くと、僕は久しぶりの外出という事もあり旅行気分で準備を始めたのだった。
僕もファウストも、この気まぐれが与える世界への影響をまだ知らない。
日の出と共に目を覚まし瞑想して、その後に朝食を作り食べるのが、ここ数百年の僕のルーティンだ。
「うん、今日も良い一日だね!」
隠居生活を始めて数百年、最初の頃は料理なんて出来ずに色々と生で齧っていたけど、僕も成長したもんだ。
ここ百年ぐらいは畑で土いじりにも挑戦している。
やはり自分で育てた作物は美味しく感じる物だ。
朝食を終え、洗い物を済ませた後に畑で育てている茶葉でお茶を淹れて一息ついていると、何かが僕の結界魔法に引っかかった感覚があった。
「珍しいね、他人の使い魔なんて本当に何百年振りじゃないか?どうやら悪意はないみたいだけど」
人里離れた山奥だけど、流石に数百年住んでいると何度か迷い込む者もいる。
見殺しにするのも食事が不味くなるから、動けるようになると記憶を消して人里の方に飛ばしたりして処理して来たけど、明確に理由があってここに来た者は隠居して以来初めてだ。
「ファウスト、行って来てくれるかい?」
本からの視線は外さずに一言呟くと、僕の影から一匹の黒い狼が飛び出す。
僕の使い魔で、影狼のファウストだ。
隠居してからは話し相手になってもらっている。
「仰せのままに、我が主人」
そう言って頭を下げると、凄い速さで反応があった場所に向かって駆け出した。
そして、数分で帰って来たファウストの口には、一通の手紙が咥えられていた。
「手紙…?態々こんな所まで訪ねて来たのだからお茶ぐらい出すのに、ねぇ?ファウスト」
数百年振りの来訪者に興味がわいた僕は、本から視線を外しファウストに苦笑いした。
「全くです。しかし主人、何か懐かしい臭いが手紙から感じられましたのでお知り合いでは?」
僕は数十年振りに笑った。
「あっはっは!ファウスト、僕の知り合いがまだ生きてる訳ないだろ!まぁ、もし生きてるとしたらあの二人だけど、あいつらなら呼ばなくてもご飯まで食べて帰るさ!」
僕はひとしきり笑った後、ファウストを撫でながら受け取った封筒の封を切らずに眺め回す。
「魔法の痕跡はない、か…さて、どこの知り合いだろうね?」
僕は胸元から煙草を取り出して火を付ける。
このまま読まずに燃やしてしまおうか?
そう考えもしたがやめておいた。
なんせ数百年振りの手紙だったので興味を持ってしまったのだから。
罠がないのを確認して封蝋をナイフで外すと、封筒には一枚の手紙が入っていた。
「なになに…大師父様、突然のお手紙申し訳ありません。私はかつての弟子、マリーダの2代目の弟子となるメリルと申します…?ああ、あの気の強かったマリーダ!ファウストを一番可愛がってた子だね!」
そう言ってファウストを見ると、尻尾をブン、と一度振った。
「全く、素直じゃないやつめ。それで…我が師匠マリーダに生涯の課題として、大師父様を発見し教えを乞うという難題を我ら弟子達は独り立ちした者は出されております?なんだそりゃ?」
「マリーダらしいじゃないですか、主人?それで、会ってあげるんですか?数百年放置した子供達の子孫に」
僕が怪訝そうな顔をしていると、さっきの仕返しとばかりにファウストが喋り出した。
「僕を育児放棄したみたいに言うんじゃない!全く…まぁでも、あの子達の弟子なら少し会ってみたいかな?」
紫煙を揺らしながら思い出すのは、5人の子供達。
僕が隠居前に面倒を見ていたが、未来あるあの子達に僕の世捨て人みたいな生活へと一緒に連れて行く訳には行くまいと、全員の独り立ちを見届けてからこの生活を始めたんだ。
ふと、頭に浮かんだあの子達の顔に僕は、自然と口が開いた。
「…行ってみようか」
そう言って最後に煙草をひと吸いし、まだ火のついた煙草を指で弾くと、青い火が煙草を包み込み一瞬で灰も残さず燃え尽きた。
「お供します、主人」
ファウストも起き上がり、僕の影に飛び込む。
久々の外出が嬉しいのか尻尾をブンブン振っていたのを僕は見逃さなかった。
「本当に素直じゃないね、君も」
再び一人になった家で呟くと、僕は久しぶりの外出という事もあり旅行気分で準備を始めたのだった。
僕もファウストも、この気まぐれが与える世界への影響をまだ知らない。
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