最強の大魔導師は静かに隠居生活がしたい

がい

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10話 大魔導師、ついに出会う

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その頃、何も知らない大師父様は、古書店で趣味の研究や開発用の魔導書を嬉々として物色しているのだった。

「これも見た事ない魔導書だ!いやいや、凄い品揃え!流石は王都で一番の蔵書量がある本屋だよ!」

「若いの、随分と熱心に魔導書を漁っとるがどこの魔術師だ?」

僕が三冊目を決めて四冊目を物色し始めようとした時、店主であろうローブ姿の老婆に質問された。

「どこの、とは?王国外という事ですか?それとも国内の話ですか?」

目線は本棚に集中しつつ店主に質問で返す。

「ほっほっほ!ちょいと分かりづらかったね!…アンタ、何者だい?」

店主は急に笑い出したかと思うと、鋭く刺すような声色で更に聞き返された。

「何者と言われても、今は趣味で魔法に触れている世捨て人って所でしょうか?勿論、派閥なんて入ってないですし」

そもそも派閥なんて下らない物が嫌で隠居したのもあるんだから、僕がどこかの派閥に入るなんて有り得ない。

それに… 

「それに、僕がどこかの派閥に入っても僕には何も得る物がなさそうですからね。さて、店主さん!この五冊下さい!」

異様な雰囲気の青年の言葉に呆けていた店主だが、いつの間にか五冊に増えた魔導書を持って来たのを見ると再び笑い出した。

「ほっほっほ!気に入った!全部で金貨五枚でいいよ。アンタは最近見ない生粋の魔術師だね。きっといにしえの三魔公様もアンタみたいな魔術師を後続に育てたかったんだろうね…」

あはは、と苦笑いして僕は店主に支払いをして店を出ようとすると、慌てて引き留められる。

「ちょっとアンタ!これ白金貨じゃないか!硬貨を間違えとるよ!」

「良い魔導書を仕入れてくれたお礼です。また来るので面白い本があればそれで仕入れといて下さい。それじゃ」

僕は振り返る事なく右手を振ってそのまま店を後にした。






王都の目的の一つである趣味の本漁りを終えた僕は、せっかくなので祝杯をあげようと良さそうな酒場を探して歩いている。

「ファウストは何食べたい?僕は肉でも魚でも大丈夫だよ?」

「主人、肉が良いです!骨付きだと更に良いです!」

影の中なので分からないけど、きっと尻尾はブンブンだろう。

暫く探していると、冒険者っぽい人達がよく入っていく酒場を見つけた。
旅の経験上、こういう店は安くて美味しい店が多いので、僕はこの店にする事にする。

「いらっしゃーい!一人ならカウンターでも大丈夫かい?」

元気なお姉さんに案内されてカウンターに座る。
まだ夕方だというのに、テーブルはほぼ満席だ。

「やはり当たりだね!お姉さん、エールとワイルドボアのステーキを二つ!一つは骨付きに出来ますか?」

「あいよ!お兄さん、見かけに寄らず沢山食べるんだねえ」

まさかファウスト用とも言えないので、育ち盛りなんで!と誤魔化しておいた。

待つ事数分、来客の案内をしているお姉さんが、エールとお皿を持ってやって来た。

「はいエールお待ち!料理なんだけど、ちょっと混んじゃって時間かかるからこれ!ワイルドボアで作ったジャーキー!エールにピッタリだから食べてみてよ!サービスだからさ?後、隣にお客さん座るけど大丈夫かい?美人さんだよ!」

「サービスまでありがとうございます!カウンターですし僕の事は気にしないで下さい!美人さんならお酒も進むってもんです!」

早速ジャーキーを肴にエールを流し込む。
程よい塩気とスパイスは、保存用というよりもおつまみ用に作っているとわかる。

僕がジャーキーとエールの相性に感動していると、隣に赤髪が生えるまだ若い女性が座った。

「はぁ…果実水とシチューセット下さい…」

「どうしたの?そんな辛気臭い溜め息ついて。アンタじゃ男が原因って訳じゃないだろうし、また魔法の研究かい?」

多分常連さんなんだろう。
聞く気はなかったけど、耳に入ってしまったのだから仕方ないよね。
魔法の研究って事は、王立魔導騎士団か魔導学院の生徒だろうか?

「私だって恋ぐらいします!…まぁ、今回は違いますけど…。ちょっと人を探してるんですけど、手がかりが何もなくて…」

どうやら隣の女性も人探しで苦労しているらしい。
王都は広いし大変というのは身を沁みて感じたので共感してしまった。

「人探しぃ?そんなのアンタならすぐ見つけられそうだけど、一人で探してるのかい?」

お姉さんが持って来た果実水をちびちび飲みながら赤髪の女性が頷く。

「お兄さんお待たせ!ワイルドボアのステーキ二つね!エールのおかわりはいる?」

「おっ!待ってましたよ~!エールもおかわりお願いします!お姉さん気が利きますね!」

お姉さんは上手なお兄さんなんだから、と笑いながらエールを持って来てくれた。
女性には優しく、そして褒めるというのをかつての友から教わったが、数百年先でもその教えは有用らしい。

「ファウストお待たせ」

ボソッと自分の影に声を掛けて骨付きステーキを掴むと影に放り込む。

「主人、ありがとうございます」

ファウストは顔だけ出して感謝を僕に伝えると、早速食べ始めたのか静かになった。

僕も美味しいステーキを頬張って幸せを感じていると、お店が落ち着いたのかお姉さんが再び隣の女性と話し始める。

「やっと落ち着いたわ。それでどんな人なの?うちに来たらアンタに知らせるわよ?」

「うーん…容姿は分からないの。分かっているのは名前だけよ。それも偽名を使われてたら…」

再び大きな溜め息をついた女性にお姉さんが呆れた様子で答える。

「アンタねぇ…この広い王都で容姿が分からない者人間が見つかる訳ないでしょうが!とりあえず名前だけでも聞いとくけど、期待しないでよ?」

「うぅ…分かってるわよ…。名前はマルク、マルク・フォーチュン様よ。偽名の可能性もあるから、似たような名前の男性が来たら教えて」



……

………

…………

……………ん?

マルク?マルク・フォーチュンって言った?

エールを飲む手が止まり考える。
まだ分からない、同姓同名の人間なんて数百年も経てば何百人もいるはずだし。

「分かったわ!もし見つけたら、メリル・・・宛に手紙出すから部屋には戻りなさいよ?」

今、メリルって言ってたよね?

「メリル…?マリーダの所の…?」

僕は無意識に口に出していた。
すると、隣のメリルと呼ばれた女性が凄い勢いでこちらを向いた。

「今、マリーダって…あの、いきなり失礼だとは思いますが、お名前を伺っても…?」


そうか、この子が

マリーダ、君の意志を継ぐ子なんだね


即座に僕とメリル以外には声が漏れないように遮断魔法を発動する。

「初めまして、僕はマルク・フォーチュン。君の師匠、マリーダの師匠だよ」

僕が握手をしようと右手を差し出すが、メリルは口をぱくぱくさせ、そして

「きゅう」

バタン!と倒れてしまった。
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