小柄コンプを拗らせていた俺、魔術学校ものの異世界に飛ばされた挙句デカ男達から天使扱いされる

荒瀬竜巻

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一の才能

油断も隙もなかった

有り得ねえんだ。もともと可愛げもなければイケメンでもない自分がモテるなんておかしい。しかも俺と両思い? いやいやないない。よりにもよってあんな嘘みたいに顔がいいやつ、オマケに男になんて、ある訳がねえ。だからこそ意識を失う時、少しだけ安心した。やっぱ夢だったんだなって。

……

…………

………………

「天使様、ご無事ですか!?」

「スターくん、目覚めて間もないのに耳元でキンキン言うもんじゃない。可哀想だろ」

白いベットに昨日見た天井、人によって好き嫌い分かれそうな薬品っぽい匂い(俺は結構好きだったりする)。目に入るスターと昨日世話になった保険医のカダ・ラー・アーサー先生。……ごめんな、今はスターの顔を見たくはなかった。でもあいつは別に悪くないし、そもそも絶対悪なんていない中で多分1番悪いのが俺だ。だからこそどうしようもなく不機嫌になってしまう。

あ、そうだ赤い糸はどうなったんだ……咄嗟に左手小指を確認するも既にない。魔術の効力が消えたのだろうか、何にせよ助かった。気を失って変な淫夢みてようやく目が覚めた中で、まだ淫夢と悩み事の種が健在とか新手の拷問かと思わざるおえないからな。

「お身体は大丈夫でしょうか? その、応急処置は施しましたので気が触れそうな苦痛はないかと思われますが……」

「あ? 応急処置? ……そーかよ」

「大丈夫。やったのはスター君だけだし、人払いもしといてあげたから」

恥ずかしそうにしているスターと申し訳なさそうな顔をした先生にそっぽを向くアーサー先生で察してしまった。別に怒ってはいない、知らない間に体を触られてちょっと怖いが、相手はスターみたいだし、先生もいてくれただろうし。あと別に下心オンリーでやったわけじゃないだろ、俺を助けるためだ。それに突飛惜しまなく見てしまった淫夢の理由にもなる。何故相手がスターでははなく虎杖になったのかとかはわかんねえけど。

それに何より、実際その処置のせいで体調はすこぶるいい。……身体はまだ物足りないのか、さっき出したばっかなのに既に半勃ちしてるのは恥ずかしいけど。それはそれとして今のところは健康そのものだった。多分本番をするであろう夜までは問題なく耐え切れるだろう。

「いいんだ、ありがとう。えっと、ブルーブックは? あと魔法陣の首謀者達はどうなったんだ?」

「ブルーブックは図書室へ行きました。天界に関する本や、JBの作った赤い糸首輪……? に関する書物を探しに行ったようです。犯人めは先生に連れられ指導室に。おそらく現在は反省文を作成中でしょうね」

「そうなのか」

「スター君は君が運び込まれてからずっと保健室にいたから知らないだろうけど、学園長もそいつらと一緒に指導室だよ。多分同じく反省文作成中」

「……そうですか」

学園長が生徒と一緒に反省文書いてる構図はどう考えても問題があるけど、この様子を見るに教師や上級生にとってはなんてことない日常茶飯事ってところか。ブルーブックには後でお礼を言わなくてはいけない。

ベットの横にある机に置かれていた赤い首輪を手に取った。結局コレに関してはわからんこと尽くめだ。なんか変なプレイに使うシロモノにしか見えなくなってきた、この世界というか状況に頭まで毒されたようだ。

「と、兎に角! 入学初日なのに色々なことがあり過ぎましたし、寮に帰りましょう。今日はその、先生方が早くも天使様の自室を用意して下さりました。それに外の魔法陣は業者さんが来てくれたおかげでもう無くなってますので安心ですよ!」

「ん? そうか、そうだな、休むか。外までの道は俺が警戒しとくから」

疲れのせいかブルーフックへの礼は後でにしようとシンプルに考えることができた。因みにアーサー先生の計らいで今回だけは窓から外に出るのが許されたから、無駄に労力を使うことなく安全な場所に出られたのも良かった。

本当に理不尽なことしか起こらなかったが、我慢だ我慢。アイツらが天使様に飽きるまでの我慢だ。

……

…………

………………

「__つかぬことをお伺いしますが、天使様は、誰かを好いておられるのですか?」

「ん? 知らねえ、何かの間違いだろ。……たとえ好きな人がいても、糸が相手に届いてなかったし」

「そ、そうですか」

帰り道にふと聞かれたこの質問への適切な回答は思い浮かばなかった。
そういや元の世界ってどれぐらい時間経ってんだろ。同じペースで時間過ぎてたら、そろそろ警察沙汰だよな……どうしよう最後に話したのが虎杖ってことで、あいつも事情聴取とかされてたら。責任感強いお人好しだから、自分と一緒に帰っていればとかで思い詰めてそうだし……いや、もう暫くは虎杖のことを考えるのはよそう。無駄に意識してしまう。

そうした不安を振り切るように小走りで寮へ向かう。何も聞かずに俺についてきてくれるスターにはちょっと申し訳ないけど。
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