小柄コンプを拗らせていた俺、魔術学校ものの異世界に飛ばされた挙句デカ男達から天使扱いされる

荒瀬竜巻

文字の大きさ
53 / 71
理性を失う狼

大切な君に話す真実

初対面の無愛想かつ仏頂面なイメージはどこはやら、すっかり化けの皮の剥がれたジョセフ。思わせぶりな発言で焦らすだけ焦らした後、あっさりシャワーで泡を洗い流す。

「さ、頭洗うぞ」

「どうも……」

なんにせよ変なスイッチが入って下がる様な緊急事態がなくてよかった。相手は悪魔(の様な凶暴性を兼ね備えた奴の意)とはいえ俺の友達、ほっと一安心して大人しく髪の毛を洗ってもらうことにした。

「ん、そのシャンプーいい匂いだな」

「そうか。こういうのって学園長が決めてるらしいぞ。しかも定期的に変えてるみたいだし」

「性格の割にいい趣味してるのな、あいつ」

感触からも目の前の鏡からもわかる。泡塗れになってゆく髪の毛はジョセフの手によってわしゃわしゃと揉み込まれて行く。1人で髪を洗える様になってから10年近く人に洗ってもらう機会なんてそうなかったが、意外と気持ちがいいな。いやそもそもジョセフの技術が凄い。あくまでも俺の住んでいた世界での褒め言葉になるが、美容師になれそうなくらい気持ちいい。

「あ、耳の裏とか痒くないか?」

「あー……そこ掻いて欲しいかも」

耳の裏を指の腹で優しく擦られる。爪を立てないで撫でるように掻いてくるあたりも細かい気遣いが感じられてとても心地いい。さすがいっぱいいる弟達を世話してきた実績があるな、弟もこんなに頭洗うの上手い兄ちゃんいたら懐くわな。俺の家に住んでる居候の従兄弟なんて風呂どころか深夜にようやく帰ってくるってのに。

「気持ちいいな」

「……うん……」

つい心の声が漏れ出てしまうほどジョセフの洗い方は気持ちが良かった。後ろからジョセフが短くとも嬉しそうに「よかった……」と声に出していた。

「痒いところは?」

「ん、もう大丈夫。ありがとうな」

「そうか」

ジョセフはシャワーで俺の頭についたシャンプーを洗い流してくれる。泡が目に入らないように目を瞑ると、ジョセフの指の感触が無くなった。終わったのかなと目を開けると、目の前には小さめのタオルを持って構えたジョセフがいた。

「髪びしょ濡れじゃ湯船入りずらいだろ」

「な、何する気だ?」

「頭をおりゃりゃって拭く」

「おりゃりゃ……? ぎゃ!?」

俺がジョセフの奇怪な表現方法に困惑していると、ゴツゴツとした手に髪の毛をタオルで包まれる。正しく「おりゃりゃ」という表現に相応しい形で拭かれたあと、ある程度水気をとったのかそのまま頭皮まで優しく拭き始めた。

「弟を思い出すな……」

「一応聞いておくけど何番目の弟だ?」

「5番目の末弟……あ。ち、違うんだ。俺たちの一族というか種族自体が結構大柄で、人間に化けてもそれが身体的特徴として出てて、結果まだ10歳ぐらいの末ですらハジメと同じぐらいの背丈になるだけであって」

「あーわかったわかった。そんなに早口にならんでもいいよ」

柄にもなく早口で弁解してきた。失言を悟ったんだろう。末弟って言われた瞬間に睨みつけた甲斐があった。それにしても聞き捨てならない話がひとつだけ。「俺たちの種族」ってなんだ。

人間と比べてという表現が使われてるってことはつまり“俺たちの種族=人間”であるという可能性はゼロだろう。しかも人間化って……あれひょっとして俺ってば勘違いしてる? てっきりなんかの原因があると狼の姿になって暴走しちゃうもんだと思ってたが、逆なのか? 元々狼の姿なのを人間化しているってこと?

「な、なあ……お前って人間じゃねえの?」

後顧の憂いを払拭するために、念の為と聞いておく。本人にとって聞かれたくないことかも知れないが、今後また他のようなことがあったら悲しいのはジョセフだ。無神経な問いかけかも知れないが許してほしい。ジョセフは少しだけ考え、項垂れた。

「ああ、さっき墓穴掘っちまったもんな。……うん。人間ではない。人間からすると欲望と隣り合わせな恐ろしい生き物だろう」

震えた声でそう答えた。うんやっぱ話したいことじゃなかったんだ。どうしよう、知りたいことはちゃんと知れたしさっさと話切り上げた方がいいかも知れない。

「そう、なんだな。すまん」

「ごめんな、どうしても話す気にならなくて……」

後付けのように無理に話さなくていいかならと言い捨て、一足先に湯船に入る。ジョセフを見ることができずにそっぽを向いてしまった。

「……お前になら話してもいい。というかここまで乱暴しちまったんだから、話さねえとな」

「いや話してくれるんかい」

思わず振り返りツッコミを入れてしまった。
感想 0

あなたにおすすめの小説

実は俺、悪役なんだけど周りの人達から溺愛されている件について…

彩ノ華
BL
あのぅ、、おれ一応悪役なんですけど〜?? ひょんな事からこの世界に転生したオレは、自分が悪役だと思い出した。そんな俺は…!!ヒロイン(男)と攻略対象者達の恋愛を全力で応援します!断罪されない程度に悪役としての責務を全うします_。 みんなから嫌われるはずの悪役。  そ・れ・な・の・に… どうしてみんなから構われるの?!溺愛されるの?! もしもーし・・・ヒロインあっちだよ?!どうぞヒロインとイチャついちゃってくださいよぉ…(泣) そんなオレの物語が今始まる___。 ちょっとアレなやつには✾←このマークを付けておきます。読む際にお気を付けください☺️

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

腐男子♥異世界転生

よしの こひな
BL
ある日、腐男子で新卒サラリーマン・伊丹トキヤの自室にトラックが突っ込む。 目覚めたトキヤがそこで目にしたのは、彼が長年追い続けていたBL小説の世界――。しかも、なんとトキヤは彼が最推しするスパダリ攻め『黒の騎士』ことアルチュール・ド・シルエットの文武のライバルであり、恋のライバルでもあるサブキャラの「当て馬」セレスタン・ギレヌ・コルベールに転生してしまっていた。 トキヤは、「すぐそばで推しの2人を愛でられる!」と思っていたのに、次々と原作とは異なる展開が……。 ※なろうさん、Caitaさん、PIXIVさんでも掲載しています。

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている

迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。 読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)  魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。  ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。  それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。  それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。  勘弁してほしい。  僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。