小柄コンプを拗らせていた俺、魔術学校ものの異世界に飛ばされた挙句デカ男達から天使扱いされる

荒瀬竜巻

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もはや辿り着けない

一方通行なお前に

「どうしてここにいるんだ」

「どうしてもこうしてもないよ。わかってたんだよ。朝日奈さんがここに来ること」

「……わかっていた? どういうことだ?」

虎杖は俺の質問に応えず、にこやかな笑顔を浮かべている。普段ならその笑みはいつもの人気者の顔だなと安心できるはずなのに。今は怖くて仕方がなかった。そんな俺の恐怖心は見透かされているのか掴まれていた腕が離される。離されたはずなのに、何故か逃げられないような力強さがあった。睨まれているわけでも動くなよと言われてもいないのに体が動かない。そのまま図書室のソファーに座らされた。

そして図書室の全貌を見て、目を疑う。

「え? な、なんだよコレ」

「へぇーやっぱり朝日奈さんには見えているんだ」

図書室は夥しい量の文字に包まれていた。床や壁はもちろん天井に窓だって、全くの隙なくおどろおどろしい文字に包まれている。唖然としているといつの間にか虎杖が隣に座っていた。
こんなに近いのに、何も話してこない。話したくない。話したら最後全てを見透かされてしまいそうな気がしたから、必死に知らないふりをする。その反応は虎杖が期待していたものではなかったのか、やけに残念そうなため息をついた。

「ここね、朝日奈さんがいなくなってからこうなっちゃったんだ」

「は?」

「みんなに言ってもそんなの無いって。どうしても朝日奈さんと無関係に思えなくてね。朝日奈さんがいく場所って言ったらそこかなって思ったんだ」

それが図書室で待ち伏せできた理由か。ホラー映画さながらな図書室の惨劇については知らなさそうだ。こっちもこの事態は初耳だ。電話で聞こうか……いや携帯は遥か遠く、図書室と廊下を繋ぐ境界線にある。取りに行くことは不可能だろう。その間にも虎杖はつらつらと話を続けた。

「ねえ、さっき電話で話してたやつは誘拐犯なの? それとも友達? 教えて」

さっきの電話のことだろう。おそらく言葉にはしないだけで虎杖も自分のそっくりさんやその他諸々についてはかなり混乱しているのだろう。教えてと言ってもらった時、魔法から解かれるように声が出るようになった。答える義理はないが、このまま放っておいても辺な方向に暴走するだけだから、短く友達だと伝えた。そうしたら今度は、

「じゃあ天使様って何? えっと……さっき購買で君のスマホを奪った時、僕と同じ顔をしたあの人が君のことをそう呼んでいたんだけど」

さっきよりも音が低い。怪しまれている? いやそりゃそうだよな。友達から天使様呼ばわりされているとか事情知らないと何言ってんだコイツ案件だ。
さて。どう答えたらいいだろう。言葉を選んでいるうちに虎杖は何故かどんどんと悲しい顔をしていった。そしてついに、俺から視線を外して俯いてしまった。やめろよまるで俺が加害者みたいだろ。

「彼等には嫉妬しちゃうな……僕が朝日奈さんの初めての友達になりたかったのに」

随分と重い感情をぶつけられた。向こうの世界でも同じような境遇だったから慣れた感じあるけどかなり胃もたれしそうだ。それはそれとして、購買にいた時に聞けなかったことを聞いておこうと思う。

「な、なあさ。どうしてそんなに俺にこだわるんだ。お前人気者だしモテモテだし、相手には困らねえだろ」

最初に言っておくが俺は虎杖への好感度は高いほうだ。愛が重いとかいうよくわからん情報が付与されたいまでも他のクラスメイトよりはマシかなと思っている。だからこそそんな凄い奴がどうしてよりにもよって自分なんかに執着するのかがわからない。質問を拒否しておいてなんだが、その理由だけはどうしても知りたかった。虎杖は伏していた顔を少し上げてから、また俺の目をしっかりと見据える。

「初めて見た時から他の人間とは違う感じがしてさ」

「ほ、他の人間?」

「そう。その……周りってさ、不気味に思うぐらい何も考えずに生きている奴が大勢いるんだ。でも朝日奈さんって、いつも戦っているというかさ。絶対に成し遂げてやるっていう意志を感じたの。その意志がなんなのかはわからなかったけど、応援したくなってさ。気が付いたらすっかりおかしくなっちゃってね。人をこんなに可愛いなんて思うの初めてだよ」

繰り出されたのは圧倒的な惚気。この相手を神格化しているとも捉えかねられないそれが全部自分宛だと思うと嬉しさよりも恐ろしさが買ってしまった。違う世界では男からとはいえあんなにモテまくった癖に、俺はまだ元の世界で染み付いてしまった非モテ根性が抜け落ちていない。

嬉しくはある。嬉しくは。こんなふうに自分の努力や闘いの人生を称賛してもらえたことなんてなかったから。闘いの傷をそっと愛してくれそうなその献身を拒否するほど俺の心は冷め切っていないことに驚く。

と共に、そんな虎杖に憤りも感じる。異世界に飛ばされる前にこんな言葉かけられたら、多分嬉しすぎて虎杖と両思いになってそのままズブズブの関係になってしまったと思う。でも俺は向こうの世界で知ってしまった。思い、とりわけ恋心ってのは一方通行じゃ何も伝わらないことを。

「なに一人で押し付けて自己満足してんだ」

俺史上一番レベルの究極に手加減した口撃を飛ばした。
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