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いつかは辿り着く
もう逃げないから
オカルトコーナーのあの本が置かれていた例のスペースに何故か鎮座していた赤い首輪。これを手に取った瞬間頭の中にはてなマークが大量発生した。俺が知っているこの首輪に関する情報は圧倒的に少ない。前触れもなく動いたりいなくなったりする得体の知れないJBからの戦利品ということのみ。
「……ん……さ……!」
「……ん? 声?」
静かな空間だったから音源はすぐにわかった。首輪だ。もう手がかりはこれしかない。ひたすらに耳を覚ました。
「……な……さい……! ハ……ん……」
「よく聞こえねえ……」
聞こえはしないが確証があった。この首輪もあいつらからの助け舟だという確証が。学園長の言うとおりに魔導書を初めて手に取ったところへ辿り着いた先にこれがあった。しかも光り輝いてる上になんか声聞こえるし。無関係とは思えないと俺の勘が言っている。
……なんだかムズムズするな。スマホの件といいあいつらから助けてもらったりアプローチされっぱなしだ。なんでいえばいいのかわからない。屈辱的? いや申し訳ないというべきか。とにかく俺からも声をかけてみる。
「……スター?」
その途端、さっきまでは手加減と言わんばかりの強い光を放った。そして次の瞬間には俺の体を包み込む。ああやっぱりあいつらも俺から声かけるの待ってたんかな……?
……
…………
……………………
すっかり聴き馴染んでしまった、それでいて待ち侘びた声が聞こえた。
「やった! ハジメくんに気づいてもらえたよ!」
「天使様ー!」
「スター顔拭け。顔から出るもの全部出てる」
「……いまから引っ張り上げる。もう大丈夫だぞ」
スター、JB、アナ、ジョセフ。待ち侘びた声達だ。何度も俺を困惑させたと同時に助けてくれた奴らの声が聞こえて心底安心する。いつの間にか図書室じゃなくて光ばかりの何もない空間にいたが、これってつまり俺が向こうの世界で助かるためにやらねばならないことを完遂したってことだろうか。もしそうだとすれば、これでなんとかなったんかな……? 俺頑張ったもんな。そうであってくれ。
「よーしホワイト、これでなんとかなりそうやな?」
「ああ。この首輪と鎖を彼が握った今、あとは綱引きの要領で引っ張り上げるだけだ」
「よかった……! 本当によかったよ!」
俺のために本気で泣いてくれているスターを見ると目頭が熱くなる。それはそれとしてJBの言うとおり顔は拭いとけよ。涙に汗に鼻水に涎にとせっかくのイケメンが台無しになるぐらい顔から出るもの全部出ている。
この鎖は向こうの世界に繋がっているのか、それてもあいつらのところに繋がっているのか。今はそれを区別する必要はなさそうだ。いずれにせよ鎖を握れば俺は向こうに行けるんだろう。力を抜いてあいつらに身を委ねた。
「……朝日奈さん!」
「ん……?」
疲れていた体が自然と起き上がった。誰かが俺を呼んでいる……? ずいぶん重くなってしまった瞼をもう一度開けた。
「朝日奈さん! 僕……挽回するね」
後ろからどんと衝撃が走る。何故だ、何故俺は虎杖に抱きつかれてるんだ。しかも思い。こいつ自分の身長が180オーバーなことを完璧を忘れてやがる。俺なんて150すらいってないのに。おかげで腕と口ぐらいしか満足に動かせないが、俺の場合口が無事なら問題ない。
「おいバカ離せ! このままだとお前も引き摺り込まれちゃうの! 二人諸共帰れなくなるの!」
「それでもいいよ。朝日奈さんを一人にしたくない。何よりあいつらに負けないためにも、もっときみと仲良くなる時間が欲しいな。もう遠目から見るのは辞めたんだ」
「やーかーまーしーいー!」
すごいこいつ早速俺が言う一人で見つめて一方通行で処理するのやめろを実行できている。そうなんだけど全然嬉しくねえ。虎杖をあの世界に連れて行って巻き込むなんてことしたくない。でもこいつはそんなもん知らねえ意地でもついていくといった心意気でがっしりとホールドしてくる。
「ごめんねわがまま言って。でも僕は朝日奈さんが見た世界を見たいんだ。遠くから思いを馳せると迷惑がかかるなら、せめて同じ視座に立ちたいんだ!」
……なんだよそれ。どうしてお前は俺が思ってもいなかったことを軽々と言葉にするんだよ。まるで俺がこいつを突き動かしているみたいじゃないか。いや事実そうなのか。
「僕は今までずっと朝日奈さんを遠くから見るだけだった。僕も君の隣に立ちたかったけれど、朝日奈さんのこと何も知らない自分なんかじゃそこに立つ資格がないからって自分の心を圧し殺していたんだよ」
「……」
「でも違った。そうじゃないんだ。外から見て満足してるふりしたって虚しいだけだ。押し殺して自己満足してても気が付いてもらえない。本当に隣に行きたいなら自分から動いて認めてもらわなきゃだってわかったから。何から何まで自分勝手だよね、僕」
……少し見くびっていた。顔だけは満点の感情激重なめんどくさいだけのやつだって。でも違った。あいつはきっと、好きな人間のためなら重くも強くもなれるってだけなんだ。ただそれを言葉にできていないだけで。
本当に俺はこいつのことを全然わかっていないんだ。自分が恥ずかしいわ。もう手遅れだろと自分を嘲笑ったが、それは裏を返せば虎杖と向き合うことができたからでもある。心の奥で虎杖への敗北宣言をした。
「僕は朝日奈さんの特別になりたいんだ」
なんて幸せそうに笑うんだろう。好きなやつのために行動できる人間ってのはきっとこんな顔をするんだろうなって思わせる顔だ。誰かを嗤って生きる奴ばかりを見たせいだろうか。そういう奴、俺は嫌いじゃない。
「ねえ朝日奈さん、僕じゃダメかな?」
「……ダメじゃない。__振り落とされんなよ!」
俺と虎杖は同時に光の中に吸い込まれた。
「……ん……さ……!」
「……ん? 声?」
静かな空間だったから音源はすぐにわかった。首輪だ。もう手がかりはこれしかない。ひたすらに耳を覚ました。
「……な……さい……! ハ……ん……」
「よく聞こえねえ……」
聞こえはしないが確証があった。この首輪もあいつらからの助け舟だという確証が。学園長の言うとおりに魔導書を初めて手に取ったところへ辿り着いた先にこれがあった。しかも光り輝いてる上になんか声聞こえるし。無関係とは思えないと俺の勘が言っている。
……なんだかムズムズするな。スマホの件といいあいつらから助けてもらったりアプローチされっぱなしだ。なんでいえばいいのかわからない。屈辱的? いや申し訳ないというべきか。とにかく俺からも声をかけてみる。
「……スター?」
その途端、さっきまでは手加減と言わんばかりの強い光を放った。そして次の瞬間には俺の体を包み込む。ああやっぱりあいつらも俺から声かけるの待ってたんかな……?
……
…………
……………………
すっかり聴き馴染んでしまった、それでいて待ち侘びた声が聞こえた。
「やった! ハジメくんに気づいてもらえたよ!」
「天使様ー!」
「スター顔拭け。顔から出るもの全部出てる」
「……いまから引っ張り上げる。もう大丈夫だぞ」
スター、JB、アナ、ジョセフ。待ち侘びた声達だ。何度も俺を困惑させたと同時に助けてくれた奴らの声が聞こえて心底安心する。いつの間にか図書室じゃなくて光ばかりの何もない空間にいたが、これってつまり俺が向こうの世界で助かるためにやらねばならないことを完遂したってことだろうか。もしそうだとすれば、これでなんとかなったんかな……? 俺頑張ったもんな。そうであってくれ。
「よーしホワイト、これでなんとかなりそうやな?」
「ああ。この首輪と鎖を彼が握った今、あとは綱引きの要領で引っ張り上げるだけだ」
「よかった……! 本当によかったよ!」
俺のために本気で泣いてくれているスターを見ると目頭が熱くなる。それはそれとしてJBの言うとおり顔は拭いとけよ。涙に汗に鼻水に涎にとせっかくのイケメンが台無しになるぐらい顔から出るもの全部出ている。
この鎖は向こうの世界に繋がっているのか、それてもあいつらのところに繋がっているのか。今はそれを区別する必要はなさそうだ。いずれにせよ鎖を握れば俺は向こうに行けるんだろう。力を抜いてあいつらに身を委ねた。
「……朝日奈さん!」
「ん……?」
疲れていた体が自然と起き上がった。誰かが俺を呼んでいる……? ずいぶん重くなってしまった瞼をもう一度開けた。
「朝日奈さん! 僕……挽回するね」
後ろからどんと衝撃が走る。何故だ、何故俺は虎杖に抱きつかれてるんだ。しかも思い。こいつ自分の身長が180オーバーなことを完璧を忘れてやがる。俺なんて150すらいってないのに。おかげで腕と口ぐらいしか満足に動かせないが、俺の場合口が無事なら問題ない。
「おいバカ離せ! このままだとお前も引き摺り込まれちゃうの! 二人諸共帰れなくなるの!」
「それでもいいよ。朝日奈さんを一人にしたくない。何よりあいつらに負けないためにも、もっときみと仲良くなる時間が欲しいな。もう遠目から見るのは辞めたんだ」
「やーかーまーしーいー!」
すごいこいつ早速俺が言う一人で見つめて一方通行で処理するのやめろを実行できている。そうなんだけど全然嬉しくねえ。虎杖をあの世界に連れて行って巻き込むなんてことしたくない。でもこいつはそんなもん知らねえ意地でもついていくといった心意気でがっしりとホールドしてくる。
「ごめんねわがまま言って。でも僕は朝日奈さんが見た世界を見たいんだ。遠くから思いを馳せると迷惑がかかるなら、せめて同じ視座に立ちたいんだ!」
……なんだよそれ。どうしてお前は俺が思ってもいなかったことを軽々と言葉にするんだよ。まるで俺がこいつを突き動かしているみたいじゃないか。いや事実そうなのか。
「僕は今までずっと朝日奈さんを遠くから見るだけだった。僕も君の隣に立ちたかったけれど、朝日奈さんのこと何も知らない自分なんかじゃそこに立つ資格がないからって自分の心を圧し殺していたんだよ」
「……」
「でも違った。そうじゃないんだ。外から見て満足してるふりしたって虚しいだけだ。押し殺して自己満足してても気が付いてもらえない。本当に隣に行きたいなら自分から動いて認めてもらわなきゃだってわかったから。何から何まで自分勝手だよね、僕」
……少し見くびっていた。顔だけは満点の感情激重なめんどくさいだけのやつだって。でも違った。あいつはきっと、好きな人間のためなら重くも強くもなれるってだけなんだ。ただそれを言葉にできていないだけで。
本当に俺はこいつのことを全然わかっていないんだ。自分が恥ずかしいわ。もう手遅れだろと自分を嘲笑ったが、それは裏を返せば虎杖と向き合うことができたからでもある。心の奥で虎杖への敗北宣言をした。
「僕は朝日奈さんの特別になりたいんだ」
なんて幸せそうに笑うんだろう。好きなやつのために行動できる人間ってのはきっとこんな顔をするんだろうなって思わせる顔だ。誰かを嗤って生きる奴ばかりを見たせいだろうか。そういう奴、俺は嫌いじゃない。
「ねえ朝日奈さん、僕じゃダメかな?」
「……ダメじゃない。__振り落とされんなよ!」
俺と虎杖は同時に光の中に吸い込まれた。
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