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<第二巻:温厚無慈悲な奴隷商人>
第七話:奴隷商人はチョルル村を目指す②
しおりを挟む「あの……旦那様。ウチはどうしていればいいでしょう?」
酒場は活気に満ち、宿場町に泊まる商人や旅人たちが思い思いに酒を酌み交わし、会話を楽しんでいた。
俺たちは、奥のテーブルへと案内され、座った。
マリレーネは、キョロキョロと見回してから、俺が食事をしている間、自分はどうしていればいいのかと尋ねたのだ。
「マリも、今日は俺と一緒に食事だ。好きなものを頼め」
「えっ? あの、いいのでしょうか。私は、お店の外でお待ちしてもいいのですが」
「本当か? 腹が減ってるんじゃないのか?
マリレーネは、首を振って否定したがタイミングよく腹が鳴っている。今日は昼食を取っていないのだから、やせ我慢も限界だろう。
「なんでも頼めばいい。俺と一緒に食べろ。それとも嫌なのか?」
「ううん、本当は一緒に食べたいです。あの……でも、ウチこんなお店で食べたことがなくて」
マリは、貧しい家庭に生まれ奴隷として売られるまで、温かい家庭の料理を食べことがないと言っていたっけ。だから、屋敷でみんなで食事を摂るようになってとても楽しいんだと嬉しそうに話をしてくれたことがある。
「いらっしゃい! 何にする? うちは何でも美味いんだけど、おすすめは羊肉焼きだね」
中年のおばさんが、愛想よくオススメを教えてくれた。それでいい。
「では、二人分を頼む。それと酒はエールを頼む」
「あいよっ、エールはそちらのお嬢さんも飲むんだろ?」
俺は、マリレーネを見る。いつもの元気娘が借りて来た猫のように静かに座っていた。どう見ても、酒は飲んだことがなさそうだ。
まだ十五歳。ということは、未成年ってことになるか。
「いいや、この娘に酒は早い。俺だけエールを持って来てくれ。それと、この娘には……」
「うーん、そうね。お酒がダメなんだったらおすすめは、ポモの実を絞った物があるよ」
ポモの実? たしか、元いた世界で言うところのリンゴに似た果物か。
マリレーネを子供扱いするつもりはないが、ポモジュースなら飲みやすいだろう。食事に合うかどうかわからないが、この世界の果実の甘さが控えめなものが多い。
運ばれて来た料理に、マリレーネが目をキラキラとさせている。確かにうまそうだ。
羊肉を塩胡椒で味付けして焼いてあるだけだが、ボリュームがかなりある。俺一人で食える限界に近い。
「マリも食べていいぞ」
マリレーネにも俺と同じ羊肉が運ばれてくると、俺はナイフとフォークを渡してやる。たしか、使い方はライラに習ったはずだ。
「ライラに習ったと思うが、使い方はわかるよな?」
「はい、あ、あのっ、こちらの皿のどれが私の食事でしょうか? あの……」
マリレーネはさらに乗っている肉が俺のもので、付け合せにある芋が自分のものだと思ったのか、フォークを皿の上でウロウロさせている。
「その皿に乗っているものは、お前の食事だ。嫌いなものはないか?」
「うんっ、嫌いも何も、食べたことがないものばかりです」
ライラに習ったように、ナイフとフォークをぎこちなく使いながらも、肉をどんどん平らげているマリレーネ。さすが獅子人族だ。文字通りの肉食女子ってやつか? 肉を頬ばって笑顔で食べる姿に、俺も自然と表情が緩む。やっぱり猫耳って可愛いな。
俺の視線を感じたのか、チラッと見たマリレーネは、もぐもぐしながら満面の笑みを浮かべた。
おいしそうに食べる姿に、俺の心がほぐされて行くのがわかる。可愛い女の子とご飯食べるのって幸せだなぁ。
◆
宿に戻ると、俺は着ている物を脱ぎ肌着姿になった。マリレーネが脱いだものを綺麗に畳んでくれている間、風呂に入ることにした。
この宿には内風呂があり、浴槽には一瞬で適温の湯を入れることができる呪文紙が備え付けられていた。この呪文紙というのが、便利なもので生活魔法が付与されたお札で、魔法を使うことができない人でも呪文紙を軽く振るだけで発動させることができる。
この世界に来て、一番初めに目にした天井にも貼ってあったのを思い出す。あの頃から、ずいぶん俺もこの世界に慣れたものだ。
「マリも風呂に来い」
「はっ、はいっ!」
マリレーネが返事するのを聞くと、俺は先に入って湯船に浸かる。しみじみと、この国にも湯船に浸かる習慣があってよかったと思う。温泉がある地域だから、湯に浸かる文化ができたのかな。
広さ二畳ほどの浴室に大きめのバスタブは木でできていた。よくこれで水漏れしないのだと、感心しながら見ていたところでマリレーネが入って来ると、洗い場に正座する。
「ん? どうした、入らないのか?」
「いっ、いいのですか? あの、てっきりお背中を流すために呼ばれたのかと……」
「裸でそんなところに座って待たれていると、落ち着いて風呂に入れないだろ。いいから、お前も入れ」
それにしても見事なプロポーションだなぁ。全体的に豪華な体型で、こんな可愛くてナイスバディな女の子と一緒に風呂に入れるなんて、夢にも思わなかった。両親には申し訳ないけど、あの時俺は階段から落ちて死んで良かったと思っている。
マリレーネは俺の対面に座る形で湯船に入る。俺は足を伸ばしているのでその間に入る形だ。尻尾の先が湯船の縁に乗っているので、触ってみる。
すると、しっぽがパッと向きを変え反対の縁に移動する。今度は左手で撫でようと手を近づけると、またパッと動く。
マリレーネは、特に意識していないようで俺が身を乗り出したのを勘違いしたのか、両手を差し出して手を繋いできた。
「しっぽって勝手に動くのか? 意識して動かすこともできる?」
「うーん、ウチの場合は意識していなくても動くかな。あまり自分では動かすことないです」
そりゃそうだろうな。俺も耳や鼻を動かそうと思えば動かせるが、普段は意識して動かしていない。興奮して鼻の穴が膨らむことはあるが、あれは無意識だ。尻尾も同じようなものか。
「マリのしっぽをよく見せてくれ」
「えっ……。はい……」
ゆっくりと向きを変えて俺に背中を向けると、四つん這いの要領でゆっくり尻をあげていく。ちょうど湯面から尻が出て尻尾が目の前に見える位置になる。だが、俺は尻尾より、後ろの穴が窄まっているほうに目を奪われた。しっぽへの興味はどこ行ったのか、目が尻穴に釘付けになった。
「あの……もう、いいですか?」
「ダメだ。もう少しゆっくりと見たい。きれいなお尻だな」
心の声が口から漏れる。つるんとした肌の尻は大きくてまんまるだ。鍛えられた大臀筋なのがよくわかる。
しっとりと湯に濡れて、潤いを得たおしりに思わずタッチすると、ビクッとマリレーネの尻が弾む。
「なななっ、だ、旦那さまぁ。お尻触っちゃだめぇ」
慌てて振り向くマリレーネは、顔を真っ赤にして唇を結んでいる。きっと、いきなり触られて恥ずかしかったのだろう。
「ごめん、嫌なら触らないよ」
「嫌じゃないですっ! あの……う、ウチのお尻で旦那さまが喜んで下さるのなら……」
「こんなに可愛くて、きれいなお尻はめったに見ないよ」
「あわわわっ、そんなっ、お尻に可愛いとか……そ、そんなこと言われてもないですぅ」
俺の奴隷の中で一番おっぱいが大きいのがマリレーネだが、お尻の大きさで言うとパオリーアが一番大きい。
だが、マリレーネん尻は鍛え抜かれたアスリートの引き締まった尻で、キュッと持ち上がっている。パオリーアの尻は色気のある女性らしい丸みを帯びた柔らかさを感じさせるので、二人とも魅力的な尻だった。
「恥ずかしかったか? 悪かったな」
「いいんです。いいんです。お尻をお褒められるってうれしいです。あの、旦那様に聞いてもいいですか?」
何を改まって聞きたいのだろう? 俺はうなずくとマリレーネの後ろから抱きしめた。
「あわわわっ、旦那さまぁ。ウチ重たいですよ。そ、そんな……」
バックハグの状態で、マリレーネの背中に体を未着させる。ガッチリ体型だと思っていたが、こうやって抱きしめると女の子らしい華奢な肩だ。俺の腕の中にすっぽりと入る。
俺が大きいのもある。身長がおそらく百八十五センチはあるだろうか。街を歩くと自分の背の高いことを自覚する。マリレーネも長身だが、せいぜい百六十五センチではないだろうか。身長を測ってみたくなる。
「旦那さまにこうして抱きしめられると落ち着きます」
「俺もだ。もうしばらくこのままでいたい」
マリレーネも同じ思いなのか、そっと俺の腕に手を添える。うん、恋人同士みたいでいい感じだね。
その後、マリレーネに体と髪を洗ってもらうと、俺も洗ってやった。こういうのって、憧れていたんだ。彼女ができたら一緒に風呂に入って洗いっこするという夢。大人になってから実現するとは思わなかったな。
ありがとう、女神さま。ありがとう、ニート。
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