悪役転生した奴隷商人が奴隷を幸せにするのは間違っていますか?

桜空大佐

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<第二巻:温厚無慈悲な奴隷商人>

閑話③:夜のご奉仕の順番決め

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 <パオリーア視点>

 私は、自室に戻ると大きなため息をついた。
 今まで、夜のご奉仕の手配はアルノルトさんがやってくれていたのに、今は私がその役目を引き継いでいる。
 しかし、最近の旦那様は私たち奴隷の部屋にご自分で行くようになった。
 つまり、私はもう誰を旦那様のところに連れて行こうかと悩む必要がなかった。

 連れて行く女の子に嫉妬してしまう自分も嫌だったが、今のように旦那様の気分任せも嫌だった。

「旦那様はもう、私たち以外の奴隷をお抱きにならないのかしら……」

 ため息が漏れる。私たち三人が順番に旦那様が回って来ると言うわけではなく、本当に気分みたい。
 今夜は私のところに来てくれるんじゃないかと思っていても、来てくれないこともあれば二日連続で来ることもある。
 マリレーネやアーヴィアもきっと同じ思いではないかしら。

 よしっ! 意を決して、旦那様に言ってみよう。もし、怒られたらどうしよう、そんな不安がよぎる。旦那様に指図するような言い方をしてはいけない、そう何度も繰り返し自分自身に言い聞かせる。

 旦那様の部屋に行くと、ノックの後すぐに返事があった。

「リーアか。どうしたんだ? こんな時間に」
「あの……大変申し上げにくいのですが……夜のご奉仕のことです」

 やっと切り出せた。怪訝な顔をして見る旦那様を見て、胸がキュッと痛くなった。
 ふと、旦那様の手元を見ると、何やらノートに書いておられる。読めない、どこかの他の国の文字?

「夜の奉仕がどうした? 女の子の日ではなかったはずだが」
「ち、違います。そういうことではなくて、相談があるのですが。聞いていただけますか?」

 いつもの優しい顔をした旦那様が、今夜はとても目が据わっているように感じた。これは、怒られるかも。
 怖くて思わずぎゅっと、手に力が入った。
 もし、旦那様が怒ってしまわれると、私も売りに出されてしまうかもしれない。お側でお仕えできないくらいなら我慢した方がいいかもしれない。
 私は、ぐるぐると思考が回って、けっきょく結論が出ないまま、話を続けることにした。

「旦那様に、私たち奴隷を同じように愛して欲しいのです。偏りがないように……ダメでしょうか?」
「それは、三人を平等に扱って欲しいということだな。そのつもりでいたけど、リーアは違うと思っていると?」
「はい……」

 椅子の背もたれに体を預け腕組みをした旦那様は、今夜はどことなく怖い雰囲気がする。きっと、ダメなんだわ。
 私、旦那様になんてことを言ってしまったのでしょう。後悔の念が湧いて来て、涙が出そうになった。

「いいよ。確かに、今まで俺の気まぐれでお前たちを平等にするって意識して考えてなかったかもな。それでリーアは怒っているのか?」
「おっ、怒ってなんかいません。ただ、今夜は来てくれるんじゃないかってヤキモキして待つのが心苦しいのです」

 言っちゃった。でも、本当のことだもん。旦那様を待つ夜は全然眠れないし、旦那様の足音が聞こえて他の子の部屋のドアの音が聞こえただけで涙が出る日もあった。どうか、旦那様……お願いします。

 目をつぶって返答を待っていると、旦那様が立ち上がる音がして目を開ける。

「リーアがそんなに寂しい思いをしていたなんて思いもしなかった。他の子も同じか?」
「……いえ、それは聞いていないです。私の個人的な意見で……でも、みんな旦那様が来てくれると思ってお風呂で綺麗に体を洗っています。見ていてわかるのです」

 そうか、と独り言を呟かれると旦那様は私に言いました。

「わかった。では、順番を決めてくれ。ちゃんと三人で話し合うんだ。決まったら教えてくれたら、その通りに部屋に行くようにする」

 さすが旦那様です。今日は御機嫌斜めのようでしたのに、ちゃんと私の気持ちが届いたのです。

 私は、旦那様の部屋を出るとマリレーネとアーヴィアを集めて、話し合うことにしました。

「リーア姉ちゃん、よくそんなこと言ったねぇ。さすが!」
「さすがです……今までならそんなこと言うと、俺に指図するのか! って鞭で叩かれるところなのに……。よく譲歩してもらいましたね」

 アーヴィアの言う通りです。私が旦那様に意見など許されるわけがないのです。最近ずっと優しい旦那様しか見ていないのでうっかり忘れてしまっていましたが、旦那様は今でも鞭をお持ちになっています。叩かれたことはありませんが、これかも叩かれないと言う保証はないのです。

「で、どうする? ウチは昨日旦那様が来てくれたから、明日は我慢するよ」
「……あの、私はいつでも、大丈夫です。どうせ、来てもすぐ帰るんだし……」
「そんなことないよ! 旦那様がアーヴィアの部屋に入ったら、朝方までいることあるじゃん」

 真っ赤な顔をしてアーヴィアが、朝までなんてしてないと反論した。

「チョルル村から戻って来てから、この二晩の間、アーヴィアとマリレーネのところに旦那様はお泊まりになったよね。では、明日は私でいいかしら。その次がアーヴィアで、その次がマリレーネ」
「ウチまで来たらどうなるわけ?」
「三人が順番だから、アーヴィアから私、最後にマリという順番よ。マリの次はアーヴィアね」

 マリは黙って聞いているようだったけど、それでいいよと言うのでホッとした。アーヴィアも頷いている。

 コンコンコン!

 ノックの音と共に、ライラ先生が入って来た。

「ライラ先生っ! マナーの先生なんだから、ノックしてどうぞって言われてから入るんだよ!」

 マリが抗議の声を上げると、先生が「どうぞって聞こえたわ」としゃあしゃあと言って、入って来た。

「あの、ライラ先生。どうかされたんですか?」
「べつに、どうもしないけど……。ところで、なんの話? 相談事なら私が乗るけど」

 ライラ先生は、夜寝るときはなぜか奴隷が着る貫頭衣を着ています。私たちと同じだけど、生地は上等なシルクワームの糸で編んだもので、とても手触りがいい。
 胸が大きく開いていて、おっぱいが半分は見えているんじゃないかな。

「あの、もう話し合いは終わりましたから、大丈夫です」

 私は、ライラ先生に言うと、ふーんと気のない返事をして私のベッドに腰掛けた。このまま居座る気ね。

「ウチらは、旦那様の夜のご奉仕の順番を決めていたんだよ。平等に扱って欲しいってリーア姉さんが旦那様に言ったら、順番を決めなさいって言われたからさ」
「そうなの。で? 私は何番目になったのかしら」
「だーかーらー! あんたは奴隷じゃないでしょうがっ!」

 マリが、先生に食ってかかります。最近こういうやりとりがすごく多いのです。

「でも、私も旦那様とベッドを共にする権利があると思うわ」
「ねえよっ。だって、先生は客人扱いだって旦那様が言っていたじゃん。客人が旦那様のお相手をするっておかしいだろ!」

 マリは、相手が先生だというのに敬語を忘れているようです。

「マリレーネさん。それは間違ってるわ。私は、旦那様に雇われているの。旦那様の要望を忠実に行うのが仕事なの。だから、旦那様が私を望むのであれば、私はこの身を捧げるつもりです」
「で、旦那様は望まれているわけ?」
「……ま、まだだけど? それがなにか? いいじゃない、なかなか二人きりになる機会がないんだから」

 ライラ先生は、ことあるごとに旦那様の部屋やお風呂に侵入しようとしたりしていましたが、ことごとく私たち三人が邪魔してきたので、お二人で会話されることはほとんどないのではないでしょうか。

「マリちゃん。先生も旦那様のことを思って言ってくださっているの。ねぇ、先生」
「そうよ。あなたたちにはない、大人の魅力を私は持っていますからね。ほら、この熟れた果実のようなおっぱいを見てみなさい」

 貫頭衣の裾をずり上げると、豊満なおっぱいがプルンと現れた。大きくて、ツンと先が上を向いて綺麗な形。白い肌に、薄桃色の先端が年齢を感じさせないおっぱいだった。

「熟れてるかどうかわからないよ。ウチらのほうが大きいんだから、張り合わないほうがいいよ」
「大きさじゃないわ。おっぱいは形よ! どう、あなたのおっぱいと違って、この下乳の適度な柔らかさに支えられた乳首。上を向いているでしょう。あなたのは、真正面を向いているわ。まるで赤ちゃんに吸わせるおっぱいね」
「ななな、なんだと! ウチも上向いてるわっ!」

 いつもの低俗な口喧嘩が始まりました。こうなると、決着がつかないので、いつもここでお開きにします。

「さぁ、順番は決まったわ。明日はアーヴィア、その次が私、その次がマリね。先生はその後ってことで」
「なんでだ! 私が最後って、明日じゃダメなのか? 私はまだ一度もご奉仕していないんだぞっ!」
「「「だめっ!」」」

 三人揃って、反対です。ライラ先生は、渋々という感じで肩を落としておられました。

「じゃぁ、私は旦那様に報告してくるから」
「あっ、わ、私も行っていいだろうか。その、私はまだ奴隷じゃないから旦那様が私を順番から外してしまうかもしれない」
「おそらく、却下されるかと……」
「こ、困るぞ! そうならないように、私も行く」

 頑なに付いて来ようとするライラ先生に根負けして、一緒に行くことにしました。


 ◆

「ライラはダメだ。客人なのだから、ダメだ」

 旦那様は、私の報告を聞くなり即却下されました。そりゃそうですよね。

「な、ななな、なんでダメなのですかっ! 私はこの屋敷に来てまだ一度も抱いてもらっていないのです」
「だからぁ、一度も抱かないのが普通なの」

 ライラ先生は、引き下がるどころか旦那様に詰め寄ると、貫頭衣を脱ぎ捨てて言いました。

「私のどこがダメなのです。おっぱいか? パオリーアたちより小さいからか? それとも、下の毛がないからか。あっ、アーヴィアもなかったか。どっ、どうしてダメなんですかっ!」

 旦那様が、ボソッとうぜぇって言っていましたが、どういう意味でしょうか。

「わかった。わかった。じゃぁ、ライラは四番目な」
「いいのか? いいんだなっ! ……四番目か」

 鼻息が荒くなったライラ先生は、ニタニタ笑いながら服を着ていました。

「ライラには、特別なプレイをしようか。しっかりと、ストレッチしておけよ!」
「はいっ、旦那様。初夜までにしっかりと、一人ひとりエッチしますわ」

「ストレッチだよっ!」
 旦那様がすぐツッコミ入れていたのは言うまでもありません。

 この日から、私たちは自分の順番が来るのを待ちわびるのでした。


(作者あとがき)
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