ぐるぐる

水月秋炎

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第二作、第二章

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⇒第二章・弾け舞う

⇒第一部・糸切れる、空落ちる

笑い、歌い、はじけ、散る。どんな人生にも、このサイクルが潜んでいると思う。つかの間の幸せで、人は簡単に笑う。少しばかりの共感で、人は歌う。一人の時間の寂しさで、人の心は、いとも簡単にはじける。そして、立った少しを失うだけで、人は散る。こんなにも儚く弱い人間が、何故こんなにも永らえることができたのだろうか。なぜ、当たり前のようにありのまま、自由でいようとするのだろうか。なぜ、それと引き換えに、こんなにも衰えた警戒心と、同胞さえも騙すような欲と傲慢さを備えてしまったのだろう。いつからだろう。人は新しい玩具を手に入れる度に、便利だと言いながら、予定を詰め込み、仕事を増やされ、自らの首を絞めるような真似をしだしたのは。いつからだろう、人は自己嫌悪という盾で、自分のエゴを正当化しだしたのは。孤独だけだ、私を守ってくれるのは。薄っぺらい笑顔で、首の皮一枚、世間とつながる。そして、残った全てで、一人、一人だけで、自分を守る。私にはそれしか無いから。みんな、嘘ついてごめんーたった数秒で言えるようなセリフなのにいつしかこんなに重くなってしまった。

⇒第二部・砂が舞う、心埋まる

20x△年十二月
だいぶ時間がたった。気づいてしまってからは、もう何もできなかった。ただただ楽しいと思っていたことが、「あの人」にとっては計画の一部で、当たり前のことだった。私の幸せも、歪みも、全部「あの人」の思い通り。それがただただむなしくて、自分の人生が、データの数字と同じように、規則的で、先が読めるようなつまらなくて、どうしようもなく決まったものだと知ってしまってからは、すぐだった。私が導き、この世界という大きな鏡の向こうへ送った人たちのあとを続くのは。きっと「あの人」に言わせれば、これも必然だったのだろう。もう怒りを感じるのも嫌になる。どんな感情、、、感情を持たないことでさえわかりきったことで、変えられない未来だってわかって、長い長い人生でやっと知った。無意味だと。笑うのも、怒るのも、素直になるのも、取り繕うのも。それならいっそ、その計算すら届かない鏡の向こうへ行ってしまったほうがいいそして向こうに着いたら、自分を知ろう。自分という人間を、生き物を、形にしよう。だからそれまでは、私はただただ遅い時間の中で、空を舞う。私と一緒に散り、そして散った砂粒たちと、渦になってその時を待つ。
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