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独りよがりの拳闘師が追放を賭けて決闘するが、神風が吹き、普段は使えないギフト【パンチ 】が突然発動した
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「ベル、おまえをこのパーティーから追放するっ!」
狩猟場の傍にある村の冒険者ギルドの食堂で突如、リーダーの剣士ロズワーからそう言われた拳闘師のベルはキョトンとしながら骨付き肉を頬張った。
モグモグモグッと肉を噛む。
肉汁が口の中に広がって美味しい。
もう1口肉を食べると、ロズワーがこめかみに青筋を立てながら、
「聞いてるのか、ベルっ!」
「ゴックン・・・聞いてるよ。だが、オレのような強い奴を追放する意味が分からん」
そうベルは本心から言うが・・・
その独りよがりこそがパーティー追放の理由だった。
「どこが強いんだよっ! ギフトの【パンチ】を発動出来ない能なしがっ!」
ロズワーが言ってる事の方が事実だった。
実はベルは弱いのだ。
拳闘師という素手で戦う戦闘職が弱いのではない。
拳闘師は戦闘職の中でも強い部類だ。
ただベル自身が弱いのだ。
なのに、その事実をベルは自覚していない。
独りよがりに「強い」と言い張るのだ。
その為、ロズワーやベルの冒険者パーティー内では温度差が生じていた。
「能なしな訳があるか。オレの真の実力を知らない愚かな者め」
「誰が愚かな者だっ! ともかくおまえは追放するっ!」
「承服しかねるな、ロズ。そもそもオレは自分よりも弱い奴の言う事なんて聞く気はねぇぜっ!」
鼻で笑っていつもの口癖を言うと『待ってました」とばかりにロズワーが、
「なら、決闘だっ! おまえの追放を賭けてオレと勝負しろっ! オレは素手で戦ってやるからよっ!」
「いやいや、それだと勝負が見えてるだろうが」
「やれよっ! 逃げるのか?」
「そうじゃなくて、素手のおまえなんか倒してもオレの拳の価値が下がるだけで・・・」
「おまえみたいな雑魚がオレを倒せる訳がないだろうがっ!」
「はぁん? 頭、大丈夫か、ロズ?」
ベルは本心からリーダーのロズワーを心配した。
そこがまたバカにされたみたいで怒髪天に来るのだが。
「頭が変なのはおまえだろうがっ! リーダーとしての最後の務めだっ! ベル、おまえに現実の厳しさを教えてやるっ! ギルドの練習場での使用許可は既に取ってあるからオレに付いて来いっ!」
「飯を食ってる時に何を・・・」
「いいから、付いて来いっ!」
リーダーのロズワーの剣幕に、
「へいへい」
ベルが折れて骨付き肉を手に持ったまま、仕方なく席を立ったのだった。
この冒険者ギルドの練習場は屋外にある。
決闘の情報が事前に漏れてたのか、練習場には野次馬が集まっていた。
無責任に難し立ててる。
そんな中、ロズワーが、
「いいなっ! オレが勝ったらパーティーから抜けて貰うからなっ! ってか、いつまで肉を食ってやがるんだっ! さっさと構えろよっ!」
ようやく食堂から持ってきた肉を食べ終えて骨を捨てたベルが、
「ふぅ~、食った食った・・・さてとやるか。模擬戦用のグローブを付けるから待ってろ。拳を痛めたくないからな」
「どうせ、当たらねぇのに・・・待ってられるかっ! いくぞっ!」
とロズワーが問答無用で殴りかかった。
「おわっ!」
との大袈裟な声とは裏腹にベルは拳闘師らしく構えてスムーズに避けた。
ベルの構えはサマになってる。
「今のはわざと外してやった。今から本気でいくぞっ! いいなっ!」
ロズワーはニヤリと笑うと本当に本気で殴りかかった。
ロズワーは剣士で素手格闘は素人の部類だが、それでも戦闘職なので強かった。
それも拳闘師のベルを一方的にタコ殴りに出来るくらいに。
なので、ロズワーはこれまでの欝憤を晴らすべく、
「行くぞっ!」
「顔がガラ空きだぞっ! 腹もだっ!」
「おまえに合わせて拳だけで戦ってやってるんだっ! そろそろ理解しろっ!」
「分かったかっ! おまえは弱いんだっ!」
と一方的に殴り、殴られたベルは、
「ぐあっ!」
「まだまだっ!」
「やるじゃねぇかっ!」
「ふっふっふっ、仕方ない。本気を······ぐあああっ!」
と何も出来ないまま、遂にはダウンした。
「もういいだろ。これがおまえの実力だって事だっ!」
「ハアハア・・・・・まだまだだぜ、ロズ。おまえのパンチなんて利いてないんだからよ」
フラフラになりながらも顔を腫らせたベルは何とか立ち上がった。
「おい、いい加減にしろ。おまえは弱いんだからよ。分かったな。もうヤメだ」
「つまり、試合を放棄したおまえの負けだな」
「んな訳あるかっ!」
挑発に乗ったロズワーは足の裏蹴りでベルの顔面を蹴ったのだった。
「ぐあああ」
と吹き飛んだベルがまたダウンする。
「ふん、これで終わりだ」
そう言ってロズワーが背中を向けるが、フラフラになりながらもベルは立ち上がった。
「ふっ、まだまだだな、ロズ。おまえの実力なんてこんなもんさっ!」
「チッ。無駄に粘りやがって・・・」
殺気立ったロズワーが立ってるのがやっとのベルに近付こうとした時だった。
屋外の練習場に一陣の風が吹いた。
決闘騒ぎを受け、この冒険者ギルドの練習場に集まった野次馬は多い。
ギルドを利用してる冒険者やギルド職員の受付嬢達が多数居た。
ギルド職員達は制服がタイトスカートだったが、冒険者の中にはヒラヒラスカートを着用してる年頃の娘達が居て、何人ものスカートがその風によって舞い上がり、下着が一瞬だけだが見えたのだった。
風の被害にあった冒険者の女性陣達が、
「キャア」
「もう、嫌な風ね」
「本当だわ」
そう口々に言う中、フラフラだったベルは眼をクワッと見開き、
(お姉様キャラの経験豊富そうなララーさんがピンクのフリルで、清純なスレイさんがまさかのアダルトな黒レースを着用してるなんてな・・・)
フラフラながらも目聡くパンチラを目撃していた。
そして、次の瞬間、
「ひゃっほぉぉぉぉぉぉぉっ!」
妙なハイテンションでベルは雄叫びを上げたのだった。
ベルは身体から可視化された黄色の闘気を噴き出してる。
あれだけ殴られてボロボロだったベルの身体の傷は一瞬で治っていた。
明らかに普通じゃない現象の中、ベルに近付いてたロズワーが、
「なっ!」
と驚く中、ベルが目の前に居るロズワーに、
「オラララララララララララララっ!」
両拳で連打したのだった。
1秒間で右10発、左8発。
それも1発殴った度にロズワーが負傷した箇所は、明らかにベルの拳よりも大きく歪み・・・
そして、ロズワーは吹っ飛んで、屋外練習場の横に建つギルドの壁に人の型を残して貫通して消えたのだった。
一瞬の出来事に屋外練習場がシーンッとなる中、
「ロズ、おまえが負けたのはオレに決闘を挑んだからだ。この結果は戦う前から分かってただろうに。強者は常に孤独なものだな」
ベルはそう独りよがりに黄昏ながら、前髪を掻き上げて勝利のポーズを決めたのだった。
ベルに負けてボロボロのロズワーは冒険者ギルド内だった事もあり、怪我こそ治ったが心に深いダメージを負い、戦闘の際に立ち竦むようになって使い物にならなくなって引退。
ベルも真の実力が普段は出せず、結局はパーティーは呆気なく解散したのだった。
ベルのギフト【パンチ 】がまさかの脱字で、本当のギフトが【パンチラ】な事をベルが知るのはまだ先の話である。
おわり
狩猟場の傍にある村の冒険者ギルドの食堂で突如、リーダーの剣士ロズワーからそう言われた拳闘師のベルはキョトンとしながら骨付き肉を頬張った。
モグモグモグッと肉を噛む。
肉汁が口の中に広がって美味しい。
もう1口肉を食べると、ロズワーがこめかみに青筋を立てながら、
「聞いてるのか、ベルっ!」
「ゴックン・・・聞いてるよ。だが、オレのような強い奴を追放する意味が分からん」
そうベルは本心から言うが・・・
その独りよがりこそがパーティー追放の理由だった。
「どこが強いんだよっ! ギフトの【パンチ】を発動出来ない能なしがっ!」
ロズワーが言ってる事の方が事実だった。
実はベルは弱いのだ。
拳闘師という素手で戦う戦闘職が弱いのではない。
拳闘師は戦闘職の中でも強い部類だ。
ただベル自身が弱いのだ。
なのに、その事実をベルは自覚していない。
独りよがりに「強い」と言い張るのだ。
その為、ロズワーやベルの冒険者パーティー内では温度差が生じていた。
「能なしな訳があるか。オレの真の実力を知らない愚かな者め」
「誰が愚かな者だっ! ともかくおまえは追放するっ!」
「承服しかねるな、ロズ。そもそもオレは自分よりも弱い奴の言う事なんて聞く気はねぇぜっ!」
鼻で笑っていつもの口癖を言うと『待ってました」とばかりにロズワーが、
「なら、決闘だっ! おまえの追放を賭けてオレと勝負しろっ! オレは素手で戦ってやるからよっ!」
「いやいや、それだと勝負が見えてるだろうが」
「やれよっ! 逃げるのか?」
「そうじゃなくて、素手のおまえなんか倒してもオレの拳の価値が下がるだけで・・・」
「おまえみたいな雑魚がオレを倒せる訳がないだろうがっ!」
「はぁん? 頭、大丈夫か、ロズ?」
ベルは本心からリーダーのロズワーを心配した。
そこがまたバカにされたみたいで怒髪天に来るのだが。
「頭が変なのはおまえだろうがっ! リーダーとしての最後の務めだっ! ベル、おまえに現実の厳しさを教えてやるっ! ギルドの練習場での使用許可は既に取ってあるからオレに付いて来いっ!」
「飯を食ってる時に何を・・・」
「いいから、付いて来いっ!」
リーダーのロズワーの剣幕に、
「へいへい」
ベルが折れて骨付き肉を手に持ったまま、仕方なく席を立ったのだった。
この冒険者ギルドの練習場は屋外にある。
決闘の情報が事前に漏れてたのか、練習場には野次馬が集まっていた。
無責任に難し立ててる。
そんな中、ロズワーが、
「いいなっ! オレが勝ったらパーティーから抜けて貰うからなっ! ってか、いつまで肉を食ってやがるんだっ! さっさと構えろよっ!」
ようやく食堂から持ってきた肉を食べ終えて骨を捨てたベルが、
「ふぅ~、食った食った・・・さてとやるか。模擬戦用のグローブを付けるから待ってろ。拳を痛めたくないからな」
「どうせ、当たらねぇのに・・・待ってられるかっ! いくぞっ!」
とロズワーが問答無用で殴りかかった。
「おわっ!」
との大袈裟な声とは裏腹にベルは拳闘師らしく構えてスムーズに避けた。
ベルの構えはサマになってる。
「今のはわざと外してやった。今から本気でいくぞっ! いいなっ!」
ロズワーはニヤリと笑うと本当に本気で殴りかかった。
ロズワーは剣士で素手格闘は素人の部類だが、それでも戦闘職なので強かった。
それも拳闘師のベルを一方的にタコ殴りに出来るくらいに。
なので、ロズワーはこれまでの欝憤を晴らすべく、
「行くぞっ!」
「顔がガラ空きだぞっ! 腹もだっ!」
「おまえに合わせて拳だけで戦ってやってるんだっ! そろそろ理解しろっ!」
「分かったかっ! おまえは弱いんだっ!」
と一方的に殴り、殴られたベルは、
「ぐあっ!」
「まだまだっ!」
「やるじゃねぇかっ!」
「ふっふっふっ、仕方ない。本気を······ぐあああっ!」
と何も出来ないまま、遂にはダウンした。
「もういいだろ。これがおまえの実力だって事だっ!」
「ハアハア・・・・・まだまだだぜ、ロズ。おまえのパンチなんて利いてないんだからよ」
フラフラになりながらも顔を腫らせたベルは何とか立ち上がった。
「おい、いい加減にしろ。おまえは弱いんだからよ。分かったな。もうヤメだ」
「つまり、試合を放棄したおまえの負けだな」
「んな訳あるかっ!」
挑発に乗ったロズワーは足の裏蹴りでベルの顔面を蹴ったのだった。
「ぐあああ」
と吹き飛んだベルがまたダウンする。
「ふん、これで終わりだ」
そう言ってロズワーが背中を向けるが、フラフラになりながらもベルは立ち上がった。
「ふっ、まだまだだな、ロズ。おまえの実力なんてこんなもんさっ!」
「チッ。無駄に粘りやがって・・・」
殺気立ったロズワーが立ってるのがやっとのベルに近付こうとした時だった。
屋外の練習場に一陣の風が吹いた。
決闘騒ぎを受け、この冒険者ギルドの練習場に集まった野次馬は多い。
ギルドを利用してる冒険者やギルド職員の受付嬢達が多数居た。
ギルド職員達は制服がタイトスカートだったが、冒険者の中にはヒラヒラスカートを着用してる年頃の娘達が居て、何人ものスカートがその風によって舞い上がり、下着が一瞬だけだが見えたのだった。
風の被害にあった冒険者の女性陣達が、
「キャア」
「もう、嫌な風ね」
「本当だわ」
そう口々に言う中、フラフラだったベルは眼をクワッと見開き、
(お姉様キャラの経験豊富そうなララーさんがピンクのフリルで、清純なスレイさんがまさかのアダルトな黒レースを着用してるなんてな・・・)
フラフラながらも目聡くパンチラを目撃していた。
そして、次の瞬間、
「ひゃっほぉぉぉぉぉぉぉっ!」
妙なハイテンションでベルは雄叫びを上げたのだった。
ベルは身体から可視化された黄色の闘気を噴き出してる。
あれだけ殴られてボロボロだったベルの身体の傷は一瞬で治っていた。
明らかに普通じゃない現象の中、ベルに近付いてたロズワーが、
「なっ!」
と驚く中、ベルが目の前に居るロズワーに、
「オラララララララララララララっ!」
両拳で連打したのだった。
1秒間で右10発、左8発。
それも1発殴った度にロズワーが負傷した箇所は、明らかにベルの拳よりも大きく歪み・・・
そして、ロズワーは吹っ飛んで、屋外練習場の横に建つギルドの壁に人の型を残して貫通して消えたのだった。
一瞬の出来事に屋外練習場がシーンッとなる中、
「ロズ、おまえが負けたのはオレに決闘を挑んだからだ。この結果は戦う前から分かってただろうに。強者は常に孤独なものだな」
ベルはそう独りよがりに黄昏ながら、前髪を掻き上げて勝利のポーズを決めたのだった。
ベルに負けてボロボロのロズワーは冒険者ギルド内だった事もあり、怪我こそ治ったが心に深いダメージを負い、戦闘の際に立ち竦むようになって使い物にならなくなって引退。
ベルも真の実力が普段は出せず、結局はパーティーは呆気なく解散したのだった。
ベルのギフト【パンチ 】がまさかの脱字で、本当のギフトが【パンチラ】な事をベルが知るのはまだ先の話である。
おわり
応援ありがとうございます!
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