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15歳(2回目)
2、裏切り者の幼馴染アンとの結婚
カーターの15歳の春が過ぎて夏になった。
1回目の時は、この年の春に父親のディーが死んでいたが、2回目の今回はアドの街の毒茸騒動が起こらなかったので父親も死んではいない。
となれば、この異世界では15歳で結婚しても別に変ではなく、カーターの結婚準備が始まっていた。
1回目の時は父親でコックのディーが死んで食堂をどうにかせねばならず、カーターも自分の事は後回しだったが。
2回目の今回はディーが生きているのでカーターの結婚話が当たり前のように進んでいた。
2回目のカーターの結婚の相手は、カーターを裏切って後輩のマークと結婚した幼馴染の裏切り者、アンである。
1回目の時にはマークとくっついた裏切り者のアンとどうして結婚するのかと言えば、カーターが同意していたからだ。
というのも、1回目の時、ギルマスというアドの街の権力者にまで上り詰めたマークはアンを溺愛していた。雑用係として働いていたカーターもそのマークの様子を見ている。
ここで問題となるのはアンがただのポーション屋の娘という事だ。
なのに溺愛されるだなんて「何かカーターの知らない秘密があるに違いない」。
そう裏読みしたカーターがアンに結婚を申し込み、アンもこの時期はカーターにベタ惚れだったので(1回目の時、マークと結婚する事を告げに来た時にアンがそんな事を言っていた)結婚式の準備が進められていた。
◇
2回目の今回、カーターはまだ15歳だ。
木の棒を振ったら、1回目の経験が継承されており冒険者程度には振れたが、筋力は弱い。
今のカーターの最大の強みは1回目の時の記憶がある事だった。
このアドの街には色々な事が起こっている。
その総ての記憶を有していた。
その最大の出来事はアドの街の遺跡に「竜の心臓水晶」が隠されている事だった。心臓に同化させる事でドラゴンの力を後天的に得るというアイテムである。
それを1回目に得たのは英雄として讃えられる竜戦士ゴフマンだったが、カーターは絶対に横取りしようと心に決めていた。
他にも色々な事を知っている。
16歳の時、屋台のオモチャの指輪に本物の宝石の指輪が紛れ込んでいた事。
雇ったコックのブラットが裏切る事。
17歳の時、父親の親友のイベリオが母親と妹を娼館に売る事。
ふらりと現れた流れの魔術師のモルが後年に宮廷魔術師まで出世する事。
18歳の時、第1王子のウイリアムが失脚し、直後に毒茸騒動の際に私財を投げ打った豪商のジョイロが男爵位を得てアドの街の執政官に任命される事。
19歳の時、後に裏切るマークがアドの街に流れてくる事。
20歳の時、スタンピードが起こってマークが裏切る事。
アンがマークと結婚する事。
24歳の時、「竜の心臓水晶」が発見される事。
他にも、
アドの冒険者ギルドの中古屋のお下がり武器の中にドワーフの匠の名刀が紛れている事。
アドの街の民家の隠し部屋に財産が隠されている事。
アドの街の周辺でエリクサーの原料の月下百合が大量発生する事。
アドの街の周辺で傷を負った妖精が居て治療したら加護をくれる事。
夢の女神からも「それ以外は何をやってもいい」と言われている。
カーターは絶対に1回目の負け犬人生の轍を踏まぬように心掛けて結婚に臨んだのだが、
◇
結婚式の当日。
銀髪で町娘にしては美人のアンを見たカーターはそれほどアンの花嫁姿に感銘を受けなかった。
1回目の負け犬人生を体験したカーターは15歳ながら屈折した人格を有していたからだ。それでも「若い娘を自由に抱ける」程度には心が躍ったのだが。
花嫁衣裳を纏ったアンが照れたように、
「どう、カーター?」
「綺麗だよ、アン」
そんな適当な事をカーターが答えているとアンの父親のアンドリューがやってきて、
「婿殿、王都のシケンラから娘の結婚式に駆け付けてくれた甥っ子を紹介しよう。リックだ」
「アンの従兄のリックです。この度は結婚おめでとうございます」
商人の格好をしてそう敬語の名乗ったリックを見て、カーターは背筋を正した。
顔を知っていたからだ。
とは言っても直接面識はない。
新聞で見た事がある程度だ。
(えっ、国王様の親衛隊長のリック・ビンセント? 確か侯爵じゃあ――えっ、アンって貴族様だったの? そうか、それでマークのクソ野郎・・・これはアンを捨てたらオレが殺される? クッ、ボロ雑巾のようにアンを捨てるつもりだったのに)
絶句するカーターを不思議に思ったのかリックが、
「何か?」
「カッコ良かったので本当にアンの従兄なのかな~と邪推して警戒してしまって」
「ハハハ、従妹を溺愛してるとは聞いていましたが、そこまでとは。そんな事絶対にありませんから。滅多に会わないので」
「それは良かった。アンを取られたらどうしようかと、ハハハ」
などと結婚前に親族で喋り、
カーターは教会で裏切り者のアンと結婚式を挙げたのだった。
1回目の時は、この年の春に父親のディーが死んでいたが、2回目の今回はアドの街の毒茸騒動が起こらなかったので父親も死んではいない。
となれば、この異世界では15歳で結婚しても別に変ではなく、カーターの結婚準備が始まっていた。
1回目の時は父親でコックのディーが死んで食堂をどうにかせねばならず、カーターも自分の事は後回しだったが。
2回目の今回はディーが生きているのでカーターの結婚話が当たり前のように進んでいた。
2回目のカーターの結婚の相手は、カーターを裏切って後輩のマークと結婚した幼馴染の裏切り者、アンである。
1回目の時にはマークとくっついた裏切り者のアンとどうして結婚するのかと言えば、カーターが同意していたからだ。
というのも、1回目の時、ギルマスというアドの街の権力者にまで上り詰めたマークはアンを溺愛していた。雑用係として働いていたカーターもそのマークの様子を見ている。
ここで問題となるのはアンがただのポーション屋の娘という事だ。
なのに溺愛されるだなんて「何かカーターの知らない秘密があるに違いない」。
そう裏読みしたカーターがアンに結婚を申し込み、アンもこの時期はカーターにベタ惚れだったので(1回目の時、マークと結婚する事を告げに来た時にアンがそんな事を言っていた)結婚式の準備が進められていた。
◇
2回目の今回、カーターはまだ15歳だ。
木の棒を振ったら、1回目の経験が継承されており冒険者程度には振れたが、筋力は弱い。
今のカーターの最大の強みは1回目の時の記憶がある事だった。
このアドの街には色々な事が起こっている。
その総ての記憶を有していた。
その最大の出来事はアドの街の遺跡に「竜の心臓水晶」が隠されている事だった。心臓に同化させる事でドラゴンの力を後天的に得るというアイテムである。
それを1回目に得たのは英雄として讃えられる竜戦士ゴフマンだったが、カーターは絶対に横取りしようと心に決めていた。
他にも色々な事を知っている。
16歳の時、屋台のオモチャの指輪に本物の宝石の指輪が紛れ込んでいた事。
雇ったコックのブラットが裏切る事。
17歳の時、父親の親友のイベリオが母親と妹を娼館に売る事。
ふらりと現れた流れの魔術師のモルが後年に宮廷魔術師まで出世する事。
18歳の時、第1王子のウイリアムが失脚し、直後に毒茸騒動の際に私財を投げ打った豪商のジョイロが男爵位を得てアドの街の執政官に任命される事。
19歳の時、後に裏切るマークがアドの街に流れてくる事。
20歳の時、スタンピードが起こってマークが裏切る事。
アンがマークと結婚する事。
24歳の時、「竜の心臓水晶」が発見される事。
他にも、
アドの冒険者ギルドの中古屋のお下がり武器の中にドワーフの匠の名刀が紛れている事。
アドの街の民家の隠し部屋に財産が隠されている事。
アドの街の周辺でエリクサーの原料の月下百合が大量発生する事。
アドの街の周辺で傷を負った妖精が居て治療したら加護をくれる事。
夢の女神からも「それ以外は何をやってもいい」と言われている。
カーターは絶対に1回目の負け犬人生の轍を踏まぬように心掛けて結婚に臨んだのだが、
◇
結婚式の当日。
銀髪で町娘にしては美人のアンを見たカーターはそれほどアンの花嫁姿に感銘を受けなかった。
1回目の負け犬人生を体験したカーターは15歳ながら屈折した人格を有していたからだ。それでも「若い娘を自由に抱ける」程度には心が躍ったのだが。
花嫁衣裳を纏ったアンが照れたように、
「どう、カーター?」
「綺麗だよ、アン」
そんな適当な事をカーターが答えているとアンの父親のアンドリューがやってきて、
「婿殿、王都のシケンラから娘の結婚式に駆け付けてくれた甥っ子を紹介しよう。リックだ」
「アンの従兄のリックです。この度は結婚おめでとうございます」
商人の格好をしてそう敬語の名乗ったリックを見て、カーターは背筋を正した。
顔を知っていたからだ。
とは言っても直接面識はない。
新聞で見た事がある程度だ。
(えっ、国王様の親衛隊長のリック・ビンセント? 確か侯爵じゃあ――えっ、アンって貴族様だったの? そうか、それでマークのクソ野郎・・・これはアンを捨てたらオレが殺される? クッ、ボロ雑巾のようにアンを捨てるつもりだったのに)
絶句するカーターを不思議に思ったのかリックが、
「何か?」
「カッコ良かったので本当にアンの従兄なのかな~と邪推して警戒してしまって」
「ハハハ、従妹を溺愛してるとは聞いていましたが、そこまでとは。そんな事絶対にありませんから。滅多に会わないので」
「それは良かった。アンを取られたらどうしようかと、ハハハ」
などと結婚前に親族で喋り、
カーターは教会で裏切り者のアンと結婚式を挙げたのだった。
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