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5、【イタイ魔族設定】の【飛ばし】、そして決着

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 だが、笑ったカサブランカの首は次の瞬間、地面へと落ちた。

 同時に、首のあるマークが、





「びっくりしたぁ~。首が落とされなかったか、今?」





 と呟きながらカサブランカを見て・・・・・・・

 次の瞬間、ずっと棒立ちだったマークは初めて身構えた。

 理由は首が落ちたカサブランカの胴体が噴き出してる血の色が紫色だったからだ。

 カサブランカの胴体は落ちた首を右手でキャッチして、それを首に乗せてくっつけている。

 こんな事、普通の人間には出来ない。

 というか、紫色の血は魔族の証だった。

「おまえ、魔族だったのか?」

 首がくっついたカサブランカが苦笑しながら、

「ええ、魔王軍四天王が1人、手招きのカサリターナ」

 と名乗ったカサリターナは金髪白肌の人間から紫髪茶褐色の魔族の姿に変身した。

 纏ってる衣裳もチェンジだ。

 神官ローブから黒ビキニに。

 はっきり言ってナーダの魔術師ビキニと丸被りだった。

 それでも背中に蝙蝠系の魔族の翼を持っていたが。

「それが私の名前よ。目的は勇者候補の芽を摘む事で任務達成だったんだけど」

 苦笑しながらマークを見た。

 マークも相手が苦笑してる意味をちゃんと理解して、

「それを教えたって事はオレを逃がすつもりはない訳か」

「ええ。最後に教えてちょうだい。今の何?」

「【発動予約】さ、身代わり用の。前にさそりの毒で死に掛けた時があったろ、あの時に・・・あれ? 魔族なのに蠍の毒で倒れたのか?」

「フリよ。人間のね。その時に細工を?」

「ああ」

「もしかして冒険者ギルドで善人ぶって怪我人に治癒して回ったのって、他の連中にも身代わりの細工を施す為?」

「当然だろうが」

「それだけの手間を掛けたんだから、当然、この場に居なくても発動するのよね、その身代わり?」

「ああ」

「つまり、死ぬまでギフトが使えない瞬殺をしまくらないとダメな訳ね」

「いや、もう勝負は付いてるぜ」

「はん? 魔王軍の四天王のこの私に人間ごときが勝てるとでも?」

「気付いてないのか?」

「ナニを?」

「勇者候補に付き従う聖女のおまえが実は魔王軍の四天王の1人だったんだぜ?」

「それが?」

 カサリターナが問い返す中、マークが馬鹿にした笑い方で、





「何、その【イタイ】設定? オレと当たるなんて運が悪かったな」





 と言った瞬間、カサリターナは真剣な顔になって警戒したが、それより早く、





「ヌギャオオオオオオオオオオオッ!」





 背後の樹木が魔物と化して、その根っこを触手のようにしてカサリターナの足に絡み付いた。

「チっ! 何よ、コイツっ!」

 手刀で木の根っこの触手を斬ろうとしたが斬れなかった。

「ああ、おまえ、もう人間・・だからな、カサブランカ・・・・・・

 笑ったようにマークが、

「おまえの【イタイ魔族設定】は後ろの樹木に【無詠唱】と【遠隔】で【飛ばして】おいたから。【改変】ってオレは命名してるがな」

 勝ち誇ったように言った時には、カサブランカは木の根っこの触手に軽々と引っ張られて、大木の幹に出現した凶悪な顔の口の中へと放り込まれていた。





「貴様ぁぁぁぁぁぁぁっ! 絶対に許さな・・・・・・ギャアアアアアアアっ!」





 それが最後の言葉でカサブランカは魔物の樹木に喰われたのだった。





 その時には裸のマークも走って魔物の樹木から逃げており、走りながら断末魔を聞いて、

「許さない? それはこっちの台詞だ。オレがアレクトロに殺されかけた時、笑ってたおまえらを許すつもりなんて最初からなかったんだからよっ!」

 そう吐き捨てて逃げたのだった。





 ◇





 何とか拠点の村まで裸で到着したマークは保護されて、冒険者ギルドで、

「勇者候補のアレクトロ以下、バッカス、カサブランカ、ナーダの全員が死亡。やったのは西の森に出現した樹木の化け物だ。オレもやられそうになったが、ナーダが魔法の炎渦陣で根っこの触手をオレごと吹き飛ばしてくれて辛うじて助かったが。火傷が酷くて意識を取り戻して治癒魔法を使った時には、もう仲間は全員・・・」

 お涙頂戴の報告をぬけぬけとしたのだった。





 最初は勇者候補の死に疑いを持った冒険者や警備隊や王国の騎士団が西の森に調査に向かったが・・・・・・

 魔王軍四天王の1人、魔族のカサリターナの設定を受け継いだ樹木の魔物は異常に強く、誰にも討伐が出来ず、最後の生き残りの治癒師マークの報告が信じられたのだった。





 おわり
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