50 / 211
ペガサス騎士トルオン
トルオン、約束から10日遅れた聖王宮でズッコケる
しおりを挟む
ゼッタリア聖王国の聖王宮にペガサスに跨ったトルオンが現れたのは約束の日から10日遅れての事だった。
トルオンが約束を破ったのは新たな恋人セレシレルとの情事に耽てたからだ。
よって、トルオンの方は内心、約束を破った負い目がありつつも『それでもやっぱり褒美は欲しい』との動機から来訪していたのだが・・・
ゼッタリア聖王国からしたら、聖王アレキトロスⅢ世の失脚(または病)によって安全が確保された直後の来訪なので、トルオンの事を『計り知れない』『さすがは男でありながらペガサスに選ばれた人物』『敵対するのはやはり間違いだ』と羨望と敬意の眼差しを向けたのだった。
このような構図の中で、謁見の間に通されたトルオンが、
「ええっと、聖王陛下は?」
玉座の空席を見て、探るように質問した訳だが・・・
その発言1つでも双方の認識は掛け離れていた。
トルオンは『うげっ! やっぱり10日も遅れたからな。怒ってて顔も合わせないか。こりゃ褒美も期待出来ないかもな』だったし・・・
ゼッタリア聖王国側は『やはり害意を向けた事を知っていたのだ』『それで聖王陛下の罰の内容を質問してきてる』だった。
「申し訳ありません、トルオン様。聖王は如何に愚かでも天寿を全うさせるのが古よりのゼッタリア聖王国の習わしでして・・・・・・他の事で報いますのでお許し下さいませ」
空席の玉座の横に立つ執政アレキレーネが頭を下げると、謁見の間に居た全員が頭を下げた。
(ほへ? オレ、今、何か失言しちゃった?)
と思いつつも、何か言わなければ、と思ったので、
「なら、期待しちゃおうかな」
「何をお望みですか?」
「それはもちろん・・・」
『金銀財宝』と言おうとした時、ズルッとズッコケた。
「うおっとっ!」
何もない床で倒れた。
「ど、どうされましたか、トルオン様?」
執政アレキレーネの質問に、ズッコケには慣れてたトルオンもこんな格式のある公式の場でズッコケてはさすがに恥ずかしかったので、
「ええっと、この床が少し変だなぁ~って」
純粋に恥ずかしくて、そんな適当な言い訳をしたのだが・・・
ゼッタリア聖王国側は全員がゴクリッと生唾を飲んで背筋を正した。
謁見の間には捕縛用の隠蔽された魔法陣がまだ施されており、トルオンがたった今、ズッコケて手を突いた拍子に魔法陣の一部が破壊され、その捕縛魔法陣が完全に消失していたからだ。
よって、
「重ね重ね、申し訳ございません」
執政アレキレーネが頭を下げて、同時にその場に居た全員が頭を下げた。
(ええぇ~、何これ? 何か気持ち悪い。褒美を貰って早く帰ろうっと)
何も知らないトルオンの方が気持ち悪がって、
「皆さん、お忙しいでしょうから、さっさと帰りますね」
早く帰りたくなり、執政アレキレーネに言われるがままに、
宝箱4個。
を貰った。
当初の予定では3個だったが、トルオンがズッコケて謁見の間の魔法陣を破壊した事で肝を冷やした執政アレキレーネ側が1個増やしていたのだが・・・
10日遅れのトルオンからしたら想像以上の宝物の量で、トルオンの頭の中では小さなトルオンが財宝の山の上で小躍りしていた。
トルオンとしてはこっちがメインだ。
付属品として、
ペガサス騎士の受勲。
クワン特別自治区。
この2つも貰っていた。
普段ならトルオンは貰わない。
だが、与えられた褒美の量が想像以上に多かった事でその事で頭が一杯で、トルオンは二つ返事でそれらも受け取ってしまっていた。
執政アレキレーネの手で胸に勲章を付けて貰った程だ。
勲章を付けて貰う時、トルオンはズッコケなかった。
なので、王女様を押し倒さなかった自分を、
(よかったぁ~、ズッコケなくて。お姫様を押し倒してたら『渡した宝箱4個を返せ』とか言われたかもしれないからな。さすがはオレだ。そう何度もズッコケるかっての。それよりも早く詳しく財宝の数々を確認したいぜ)
褒め称え、貰った財宝の事を考えてたので、勲章なんかには眼もくれなかった。
勲章授与後に頬にチュッとお姫様にキスされた時もだ。
キスしたお姫様の熱視線も、謁見の間の空気がおかしくなった事も、財宝の事で頭が一杯のトルオンは気付かなかった。
その後、謁見の間や出口までの廊下に、やたらと頭を下げてくるゼッタリア聖王国側の人間が居て、スキップしたい気持ちをグッと抑えたトルオンは、
「じゃあ」
呼んだペガサスで帰っていったのだった。
トルオンが約束を破ったのは新たな恋人セレシレルとの情事に耽てたからだ。
よって、トルオンの方は内心、約束を破った負い目がありつつも『それでもやっぱり褒美は欲しい』との動機から来訪していたのだが・・・
ゼッタリア聖王国からしたら、聖王アレキトロスⅢ世の失脚(または病)によって安全が確保された直後の来訪なので、トルオンの事を『計り知れない』『さすがは男でありながらペガサスに選ばれた人物』『敵対するのはやはり間違いだ』と羨望と敬意の眼差しを向けたのだった。
このような構図の中で、謁見の間に通されたトルオンが、
「ええっと、聖王陛下は?」
玉座の空席を見て、探るように質問した訳だが・・・
その発言1つでも双方の認識は掛け離れていた。
トルオンは『うげっ! やっぱり10日も遅れたからな。怒ってて顔も合わせないか。こりゃ褒美も期待出来ないかもな』だったし・・・
ゼッタリア聖王国側は『やはり害意を向けた事を知っていたのだ』『それで聖王陛下の罰の内容を質問してきてる』だった。
「申し訳ありません、トルオン様。聖王は如何に愚かでも天寿を全うさせるのが古よりのゼッタリア聖王国の習わしでして・・・・・・他の事で報いますのでお許し下さいませ」
空席の玉座の横に立つ執政アレキレーネが頭を下げると、謁見の間に居た全員が頭を下げた。
(ほへ? オレ、今、何か失言しちゃった?)
と思いつつも、何か言わなければ、と思ったので、
「なら、期待しちゃおうかな」
「何をお望みですか?」
「それはもちろん・・・」
『金銀財宝』と言おうとした時、ズルッとズッコケた。
「うおっとっ!」
何もない床で倒れた。
「ど、どうされましたか、トルオン様?」
執政アレキレーネの質問に、ズッコケには慣れてたトルオンもこんな格式のある公式の場でズッコケてはさすがに恥ずかしかったので、
「ええっと、この床が少し変だなぁ~って」
純粋に恥ずかしくて、そんな適当な言い訳をしたのだが・・・
ゼッタリア聖王国側は全員がゴクリッと生唾を飲んで背筋を正した。
謁見の間には捕縛用の隠蔽された魔法陣がまだ施されており、トルオンがたった今、ズッコケて手を突いた拍子に魔法陣の一部が破壊され、その捕縛魔法陣が完全に消失していたからだ。
よって、
「重ね重ね、申し訳ございません」
執政アレキレーネが頭を下げて、同時にその場に居た全員が頭を下げた。
(ええぇ~、何これ? 何か気持ち悪い。褒美を貰って早く帰ろうっと)
何も知らないトルオンの方が気持ち悪がって、
「皆さん、お忙しいでしょうから、さっさと帰りますね」
早く帰りたくなり、執政アレキレーネに言われるがままに、
宝箱4個。
を貰った。
当初の予定では3個だったが、トルオンがズッコケて謁見の間の魔法陣を破壊した事で肝を冷やした執政アレキレーネ側が1個増やしていたのだが・・・
10日遅れのトルオンからしたら想像以上の宝物の量で、トルオンの頭の中では小さなトルオンが財宝の山の上で小躍りしていた。
トルオンとしてはこっちがメインだ。
付属品として、
ペガサス騎士の受勲。
クワン特別自治区。
この2つも貰っていた。
普段ならトルオンは貰わない。
だが、与えられた褒美の量が想像以上に多かった事でその事で頭が一杯で、トルオンは二つ返事でそれらも受け取ってしまっていた。
執政アレキレーネの手で胸に勲章を付けて貰った程だ。
勲章を付けて貰う時、トルオンはズッコケなかった。
なので、王女様を押し倒さなかった自分を、
(よかったぁ~、ズッコケなくて。お姫様を押し倒してたら『渡した宝箱4個を返せ』とか言われたかもしれないからな。さすがはオレだ。そう何度もズッコケるかっての。それよりも早く詳しく財宝の数々を確認したいぜ)
褒め称え、貰った財宝の事を考えてたので、勲章なんかには眼もくれなかった。
勲章授与後に頬にチュッとお姫様にキスされた時もだ。
キスしたお姫様の熱視線も、謁見の間の空気がおかしくなった事も、財宝の事で頭が一杯のトルオンは気付かなかった。
その後、謁見の間や出口までの廊下に、やたらと頭を下げてくるゼッタリア聖王国側の人間が居て、スキップしたい気持ちをグッと抑えたトルオンは、
「じゃあ」
呼んだペガサスで帰っていったのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
561
1 / 2
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる