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新顔

【将軍side】宰相病死の黒幕として疑われる

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 ネレシオ砦に赴任した女騎士ソフィーミーの転落死では巻き添え事故でメイドか2人死んでいる。

 誰もが痛ましい事故として巻き込まれたメイド2人の死をいたんだ。





 ◇





 その一方で王都アースレナでは報告を聞いた将軍モロキューが、

「はあ? ドラゴニュートの根城の城塞街ネレシオでマスクロロが派遣した女騎士と配下こっちの密偵が殺し合っただぁ?」

 と舌打ちした。

 事実は全然違うが、巻き込まれて死んだメイドの両方がモロキューが放った密偵だったのだから『結果だけ』を事情を知る者が見ればそう・・なった。

 拙い事態だ。

 宰相と揉めるのは。

 そうでなくても仲が悪いのに。

 モロキューは狼人族の56歳。爵位は伯爵だ。身長は271センチ。黒髪黒耳黒髪尻尾の美丈夫だった。

 王国時代は騎士団長だったが、帝国建国に伴い、新設された役職の『将軍』に就任していた。

 そしてモロキューは文官トップのマスクロロと元々仲が悪かった。

 王国時代の小競り合い程度ならまだ笑えたが、今やエトリア帝国は超大国だ。

 下手に争ったら内乱の恐れがある。

 そうでなくても今の皇帝はまだ18歳の小娘なのだから。

 両輪として助けなければならないのに。

「まあ、すっとぼけるか。こちらの密偵の素性はバレてないんだから」

 と軽く考えたが・・・・・・





 アースレナ宮殿の廊下で文官を引き連れた宰相マスクロロとばったりとかち合ってしまった。

「これは将軍、まもなく都市国家ロンリーへの侵攻ですな?」

 そう質問した宰相マスクロロは人間だった。

 年齢は56歳。これが拙いのだ。同じ年だから。

 身長は168センチ。鼠色の総髪と髭で宰相服を纏い、魔術師の杖を持つ。

 文官は戦闘要員ではないが、エトリア帝国では王国時代から幹部職は全員が戦闘力があった。文官も戦って基礎知力を上げるのが普通なのだ。

 マスクロロも上級魔法が使える魔法兵団上がりの魔術師だった。

「ああ、下準備も万端、いつでも攻め取れるぜ」

「前線にはお出になられないので?」

「文官の怠慢で補給が滞っては堪らんからな」

「それはそれは。相変わらず臆病なくらい慎重でいらっしゃる」

 嫌味な応酬をし、

(こりゃダメだ。マスクもやる気みたいだし。腹を括るか)

 と思いながら宰相マスクロロとすれ違ったのだった。





 そして、その日の晩、宰相マスクロロが病死した。

 このタイミングで病死などある訳もなく実際は『暗殺された』だが。

 だが建国1年目に宰相が暗殺ではエトリア帝国の威信に関わるので『病死』と発表された。

 この事件の黒幕の最有力として疑われたのが普段から仲の悪かったモロキューなのは言うまでもない。
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