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盤石
トルオン、ソファーからずり落ちるようにズッコケる
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トルオンは現在、
クワン独立特別区。
城塞街ネレシオ。
クラージュ財閥。
ドーベル銀行。
樹上の里ナルドゥ。
闇の魔術師盗掘組織『黒』。
都市国家ヒーナ。
これらを間接的に支配している。
だが、厳密に言うとそれだけではない。
エトリア帝国の周辺国家には情報収集の為の商会を19個も持ってる。
この辺りまではトルオンも把握出来たが、クラージュ財閥などは戦力となる傭兵団を多数抱え、更には手足となる商会を傘下に持ってる。
ドーベル銀行もそうだ。借金の取り立ての為に荒事をやる連中も抱えてる
正直言って、トルオン自身、もう下部組織はともかく、更に下の孫組織までは把握出来ないくらいになっていた。
その日、帝都アースレナからネレシオ砦にやってきた使者からの手紙を読んだトルオンは、
「はいぃ?」
とのマヌケな声とともに、腰砕けになってソファーからずり落ちたのだった。
その際に、信じられない事だが、両足がズッコケと同じくらいの高さまで上がり、トルオン自身もギフトの【ズッコケ】かどうか判断が付かなかった。
いや。
正確にはそんな事がどうでもいいくらいの衝撃的な内容が手紙には書かれていて気にもならなかった。
何せ、手紙の内容は、
トルオンの資産運用コンサルタント、ミルガル。
クラージュ財閥会長、トンゴーシル。
ドーベル銀行頭取、ギルキンコン。
この3人の連名による一方的な絶縁状だったからだ。
つまりは裏切りだ。
3人が裏切る分にはトルオンは何の問題もない。
3人がトルオンの資産を分捕って裏切りさえしなければ。
だが、この絶縁状にはトルオンの資産の70パーセントに相当するクラージュ財閥とドーベル銀行の経営権の正当性がどちらに付属するか長々と書かれてあった。
実際の経営者は、クラージュ財閥は会長のトンゴーシルで、ドーベル銀行は頭取のギルキンコンだ。
トルオンはクラージュ財閥とドーベル銀行の役職を何も持っていない。
確かにクラージュ財閥の前身の商会への出資と、ドーベル銀行の創業資金の全額を出したが、ドーベルが生きてたので一々書面になどはしておらず、事情を知らない者からしたらトルオンはただの部外者に他ならなかったのだ。
法律上、トルオンはクラージュ財閥やドーベル銀行とは何ら関係がなく、どうする事も出来ない。
それらを理解した上で3人の裏切りの絶縁状を見て、トルオンはマヌケな声を出してソファーからずり落ちたのだった。
衝撃の余り、ソファーに座り直せないトルオンが床に座ったまま、
「う、う、嘘だよな? これ?」
狼狽しながら、使者である身長172センチ、白髪白髭を蓄えた初老で、右眼に眼帯をした『出来る執事風』の男にすがるように質問すると、
「本当でございます。これまでエトリア帝国の為にありがとうございました。『財閥と銀行、その他傘下の商会は丸々、エトリア帝国で引き取らせていただきます』との事です。では、失礼致します」
慇懃にお辞儀した使者は一礼してドアへと背を向けた。
「ま、ま、ま、ま・・・」
狼狽してまともに声も出せないトルオンはそう言葉を吐き出すのがやっとで呼び止める事が出来ず、初老の男はさっさとドアから出ていったのだった。
部屋に残されたトルオンは1人、呆然としていた。
意味もなくボォーッと室内に視線を漂わせる。
トルオンがここまで狼狽してるのは裏切った3人の素性にあった。
あの裏切った3人はまぎれもなくエトリア帝国の帝室に忠誠を誓ってる連中なのだ。
ミルガルとドンゴーシルはエトリア帝国の暗部出身者。
ギルキンコンは長年、帝太后ビレリアの公爵家(現在は大公家)に仕えていた。
そして使者のあの言葉。
つまりは、この裏切りは『エトリア帝国の主導で決定された』という事だ。
そして、トルオンは先日、都市国家ヒーナの件で、エトリア帝国の2トップに借りを作ったばかりだ。
そこから導き出される解答は、女帝カミビーレ、または帝太后ビレリアによる『トルオンの資産の没収』。
『トルオンの総資産の7割の差し押さえ』を意味した。
もっとも、この結論は実はトルオンの誤解で全く違うのだが。
だが、トルオンの中では女帝カミビーレと帝太后ビレリアは『無理難題を言いまくる困った女達』で、石版を奪われた件もある。
よって『あの2人ならオレの資産没収くらい平気でやる』と思うくらい印象が良くなかった。
(嘘だろ? 嘘だと言ってくれ。あり得ない。エトリア帝国にあんなにも貢献してたのに)
トルオンは呆然とメイドが入室するまでの20分間、部屋の壁を眺めたのだった。
クワン独立特別区。
城塞街ネレシオ。
クラージュ財閥。
ドーベル銀行。
樹上の里ナルドゥ。
闇の魔術師盗掘組織『黒』。
都市国家ヒーナ。
これらを間接的に支配している。
だが、厳密に言うとそれだけではない。
エトリア帝国の周辺国家には情報収集の為の商会を19個も持ってる。
この辺りまではトルオンも把握出来たが、クラージュ財閥などは戦力となる傭兵団を多数抱え、更には手足となる商会を傘下に持ってる。
ドーベル銀行もそうだ。借金の取り立ての為に荒事をやる連中も抱えてる
正直言って、トルオン自身、もう下部組織はともかく、更に下の孫組織までは把握出来ないくらいになっていた。
その日、帝都アースレナからネレシオ砦にやってきた使者からの手紙を読んだトルオンは、
「はいぃ?」
とのマヌケな声とともに、腰砕けになってソファーからずり落ちたのだった。
その際に、信じられない事だが、両足がズッコケと同じくらいの高さまで上がり、トルオン自身もギフトの【ズッコケ】かどうか判断が付かなかった。
いや。
正確にはそんな事がどうでもいいくらいの衝撃的な内容が手紙には書かれていて気にもならなかった。
何せ、手紙の内容は、
トルオンの資産運用コンサルタント、ミルガル。
クラージュ財閥会長、トンゴーシル。
ドーベル銀行頭取、ギルキンコン。
この3人の連名による一方的な絶縁状だったからだ。
つまりは裏切りだ。
3人が裏切る分にはトルオンは何の問題もない。
3人がトルオンの資産を分捕って裏切りさえしなければ。
だが、この絶縁状にはトルオンの資産の70パーセントに相当するクラージュ財閥とドーベル銀行の経営権の正当性がどちらに付属するか長々と書かれてあった。
実際の経営者は、クラージュ財閥は会長のトンゴーシルで、ドーベル銀行は頭取のギルキンコンだ。
トルオンはクラージュ財閥とドーベル銀行の役職を何も持っていない。
確かにクラージュ財閥の前身の商会への出資と、ドーベル銀行の創業資金の全額を出したが、ドーベルが生きてたので一々書面になどはしておらず、事情を知らない者からしたらトルオンはただの部外者に他ならなかったのだ。
法律上、トルオンはクラージュ財閥やドーベル銀行とは何ら関係がなく、どうする事も出来ない。
それらを理解した上で3人の裏切りの絶縁状を見て、トルオンはマヌケな声を出してソファーからずり落ちたのだった。
衝撃の余り、ソファーに座り直せないトルオンが床に座ったまま、
「う、う、嘘だよな? これ?」
狼狽しながら、使者である身長172センチ、白髪白髭を蓄えた初老で、右眼に眼帯をした『出来る執事風』の男にすがるように質問すると、
「本当でございます。これまでエトリア帝国の為にありがとうございました。『財閥と銀行、その他傘下の商会は丸々、エトリア帝国で引き取らせていただきます』との事です。では、失礼致します」
慇懃にお辞儀した使者は一礼してドアへと背を向けた。
「ま、ま、ま、ま・・・」
狼狽してまともに声も出せないトルオンはそう言葉を吐き出すのがやっとで呼び止める事が出来ず、初老の男はさっさとドアから出ていったのだった。
部屋に残されたトルオンは1人、呆然としていた。
意味もなくボォーッと室内に視線を漂わせる。
トルオンがここまで狼狽してるのは裏切った3人の素性にあった。
あの裏切った3人はまぎれもなくエトリア帝国の帝室に忠誠を誓ってる連中なのだ。
ミルガルとドンゴーシルはエトリア帝国の暗部出身者。
ギルキンコンは長年、帝太后ビレリアの公爵家(現在は大公家)に仕えていた。
そして使者のあの言葉。
つまりは、この裏切りは『エトリア帝国の主導で決定された』という事だ。
そして、トルオンは先日、都市国家ヒーナの件で、エトリア帝国の2トップに借りを作ったばかりだ。
そこから導き出される解答は、女帝カミビーレ、または帝太后ビレリアによる『トルオンの資産の没収』。
『トルオンの総資産の7割の差し押さえ』を意味した。
もっとも、この結論は実はトルオンの誤解で全く違うのだが。
だが、トルオンの中では女帝カミビーレと帝太后ビレリアは『無理難題を言いまくる困った女達』で、石版を奪われた件もある。
よって『あの2人ならオレの資産没収くらい平気でやる』と思うくらい印象が良くなかった。
(嘘だろ? 嘘だと言ってくれ。あり得ない。エトリア帝国にあんなにも貢献してたのに)
トルオンは呆然とメイドが入室するまでの20分間、部屋の壁を眺めたのだった。
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