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聖道化師襲来編
狂王、荒れ狂う
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「うおおおおおっ!? 何じゃこりゃあっっっ!?」
「で、デカイ……」
出現した四足四腕の巨大な影魔獣を前に武光達は戦慄した。
「ククク……どうだ、これがボクのとっておき……《影魔獣・狂王》だ!! 聖女さんは『非常に強力だが、制御がとても難しく、一度目覚めさせれば周囲の人間を殺し尽くすまで止まらない』なんて言っていたけど、双頭蛇の力を使ってボクと狂王の魂を入れ替えれば、この強大な力を完璧に制御出来る……さぁ、ボクのチートスキルの前にひれ伏せ!!」
狂王と化した京三は四本の腕の内、上側の二本の肘から先を突撃槍状に、下側の二本の肘から先を剣状に変化させた。
「行くぞ雑魚共……ん!?」
京三が武光達に襲い掛かろうとしたその時、狂王の魂を宿した京三の肉体が前に進み出た。その手には、先程京三がプレートから転送したナイフが握られている。
「チッ……邪魔だ!! 下がっていろ!!」
京三は、狂王に命じたが……
“どすっ!!”
「なっ!?」
狂王はナイフを逆手に持ち替え、いきなり自分の腹を刺した。
「なっ……何をしてるんだ!? やめろ!!」
突然の凶行に京三は声を荒げたが、狂王の魂が宿った京三の肉体は、無表情のまま自分の腹を滅多刺しにしている。
京三はシルエッタの言葉を思い出した。目覚めた狂王は、周囲の人間を手近な者から手当たり次第に殺し尽くす。そして今の狂王にとって、『一番手近な人間』とは……自分自身である。
「ふ、ふざけるな!! この出来損ないが!!」
狂王を止めようにも、強大過ぎるこの肉体では、自分の肉体に触れた途端にプチンと潰してしまうかもしれない。焦る京三の眼前で、狂王が失血により震える手で、京三の肉体にトドメの一撃を刺そうとしたその時!!
「さ、させるかぁぁぁっ!!」
間一髪で、武光が狂王を背後から羽交い締めにした。
「ナジミ!!」
「はいっ!!」
ナジミが拘束されている京三に駆け寄り、傷口に手を翳す。
「大丈夫ですよ……絶対に死なせたりしませんからね……!!」
ナジミの癒しの力によって、腹部の惨たらしい刺し傷がみるみる癒えてゆく。そして、傷口が治るに従って、元気を取り戻した狂王が、再びナイフを自らに突き立てようとするのを武光が両腕に力を込めて防ぐ。
「くっ……暴れんなこのっ……フリード、俺はこいつを押え込むので手一杯や!! デカイのを任せてもええか!?」
「わ、分かったよアニキ!!」
「気ぃつけろよ!!」
フリードは頷くと、クレナ達に指示を出した。
「行くぞ皆!!」
「うんっ!!」
「よし!!」
「は、ハイッ!!」
フリードが右手の人差し指を空に向け、小さく円を描くと、それを見たクレナ達とミナハが左右に散り、クレナが京三の左斜め後ろ、ミナハが右斜め後ろについた。『包囲』のハンドサインである。
フリードが右手をパッと開き、握った。『かかれ!!』の合図と共に、クレナとミナハが突撃する。
「喰らえーーーっ!! 穿影槍ッッッ!!」
「友情合体……《驚天動地》ッッッ!!」
“カッ!!” “ズバッッッ!!”
クレナの穿影槍が左の後ろ脚を吹き飛ばし、ミナハが斧薙刀 《驚天》と手槍 《動地》の柄を連結させて、右の後ろ脚を袈裟懸けに切断したが……
“ズルリ!!”
「ウソっ!?」
「くっ!?」
無くなった左右の後ろ脚が即座に再生した。京三は、呆気に取られるクレナとミナハに向けて、大木の幹のような太い尻尾を振るった。クレナとミナハが慌てて後方に跳び退く。
間一髪だった、風圧が二人の鼻先を撫でる。
「くっ、この野郎!!」
京三は、正面から突進してきたフリードの吸命剣による一撃を、左右の剣腕を交差させて受け止めた。
「フフフ……ヌルい!!」
「うおっ!?」
交差させていた両の剣腕を勢い良く開いて、京三はフリードを弾き飛ばした。弾き飛ばされたフリードが悪態をつく。
「クソが……何て馬鹿力なんだよ!?」
「……素晴らしい力だ……まさにチートだよ……おっと!!」
京三は、顔面に向かって飛んできたキクチナの雷導針を左の槍腕で叩き落とした。
「はんっ、お前達如きモブキャラが束になろうと……このボクに勝つ事は不可能なんだよ!!」
「くっ……ナメんなこの野郎!!」
フリード達は再度攻撃を仕掛けたが……通常の影魔獣の何倍もの再生速度を誇る狂王の肉体を前に、有効打を与える事が出来ない。
暴れ回る狂王を前に、フリード達は徐々に追い込まれてゆく。
「フー君どうしよう!? 閃光石がもう無いよ!!」
「わ、私の雷導針もです!!」
「チッ……クレナ、これを!!」
ミナハが驚天動地を再び分離させ、動地をクレナに渡した。
「諦めろ、君達如きモブじゃ、この僕を倒すなんて不可能なんだ」
それを聞いたフリードは京三を “キッ!!” と睨みつけた。
「ヘッ、天照武刃団をナメるなよ……!! 見せてやるぜ、俺の……とっておきをッッッ!!」
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