斬られ役、異世界を征く!! 弐!!

通 行人(とおり ゆきひと)

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双竜塞編

斬られ役(影)、理由を叫ぶ

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 85-①

「くっ……貴方達は一体何者なのですか!?」

 突然部屋に押し入って来た天驚魔刃団によって捕らえられた美しき姫君は、影光達に問いかけ、問われた影光は不敵に笑った。

「フッフッフ……俺達こそは、素敵で無敵な戦闘集団、天驚魔刃団だッッッ!! そしてこの俺が頭領の影光……と申しますッッッ!! 是非お見知り置きをッッッ!!」

「何を……へり下っとんじゃーーーー!!」

「ぐはあっ!?」

 超絶美人を前にして、ほおが緩むのが抑えきれない影光に、ヨミはドロップキックを喰らわせた。

「ったく、鼻の下伸ばして……アホか!! よ-く聞きなさい影光、今この女の生殺与奪権は私達の手の中にあるのよ。捕虜相手にへり下る必要なんか一切無し!! 分かった!?」
「痛てててて……そうは言ってもなー、相手はお姫様なんだぜ? 失礼があったらマズイだろー、なぁ?」
「うむ」
「ええ」
「ゴァッ」

「あ、アンタらぁぁぁ……私に百万回土下座しろぉぉぉぉぉっっっ!!」

 影光に同意を求められて、ウンウンと頷くガロウ達を見て、妖禽族の姫であるヨミはキレた。揃いも揃って、一体どの口が『姫様に失礼があってはいけない』などとほざくのか。

「確か、影光さん……と言いましたね? 一体何が目的なのです」

 姫君の問いに、影光は答えた。
 
「ま、一つは…………売り込み営業ッスね!!」

 あっけらかんと放たれた影光の答えに、姫君は唖然とした。

「は? う、売り込み……?」
「ええ、俺達これから魔王軍に参陣しようと思ってるんですけど、俺達の実力をアピールしておこうかなと思いましてね」
「た、たったそれだけの理由で貴方達は……」
「いいえ、売り込みはついでです」
「そ、それでは一体何が本当の目的…………っ!?」

 ヘラヘラと笑っていた影光の目つきが突然鋭くなった。影光の発する威圧感を前に、姫君は思わず息を呑んだ。

「……アンタ達、一番最初に俺達がこの砦に近付いた時、こっちの話も聞かずに矢を射かけてきたよなぁ、おい?」

 影光は戸惑う姫君をギロリと睨みつけると、渾身の力で怒鳴りつけた。

「…………ウチのマスコット達に危うく矢が当たる所だったぞコノヤローーーーー!!」
「ま、ますこ……っと……?」

 『マスコット』という言葉の意味が分からず困惑する姫君をよそに、影光は続ける。

「おう!! 妖禽族の子供達で、名は『つばめ』と『すずめ』だ!! 俺達、天驚魔刃団の大切な大切なマスコットだ……そいつらに怪我させようとしたのが俺は許せん!! だから……慰謝料替わりに、この砦は頂く!!」

 影光の言葉を聞いて、姫君は目を見開いたが……

「おい、ちょっと待て!! 人質はともかく、何でお前らまで『え? そうなの!?』みたいな顔してんだ!?」

 四天王まで目を見開いているのを見て、影光はツッコんだ。

「いや、俺はてっきり矢でハリネズミばりに滅多刺しにされた恨みかと……」
「僕は魔王軍参陣にあたっての実力の誇示が目的かと……」
「グォアーゴゴゴ、ドグォ……カト……」
「むしろ考えなんかあったのかと。なーんにも考えてないのかと……」
「おいおいおいおい、マジか……お前ら、後でミーティングな」

 “……キィ” 

 その時、部屋の入り口の扉がひとりでに開いた。

「ん……何だ? うっ!?」
「どうしたキサイ!?」

 扉に近付いたキサイが、突然倒れた。

「やれやれ、やっぱガリ鬼君の貧相な体力じゃ、あれだけの幻影を出現させて操り続けるのはこれが限か──」

 今度は、倒れたキサイに近付いたヨミが突然ばたりと倒──

「グォ……ア……」

 更にレムのすけまでもが突然倒れた。

「レムのすけ!? どうした!?」

 影光は影醒刃シャドーセーバーの刀身を出現させ、ガロウと背中合わせになって身構えた。

「くそ、何なんだ一体!?」
「気を付けろ影光、この部屋に……何かがいる!!」

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