斬られ役、異世界を征く!! 弐!!

通 行人(とおり ゆきひと)

文字の大きさ
94 / 282
双竜塞編

巫女、阻止する

しおりを挟む

 94-①

「ううーん…………ハッ!?」

 影光はオサナの部屋で目を覚ました。体を起こし、何気無く横を向くと、物凄く気まずそうにしているオサナと目が合った。

「ご、ごめんな影光かげみっちゃん……」
「お前なぁ……ちゅーしたんは、俺やなくて本体やっちゅうねん……痛てて」
「うん、ホンマごめんな……でも、影魔獣って痛みを感じないって聞いた事あるんやけど……」
「……おう、俺も最初は切腹しても痛みを感じへんかったんやけどな」
「いやいやいやいや、何してんの!? アホなん!?」
「……いつの頃からか普通に苦痛や疲労を感じるようになった。多分、俺を生み出した奴が何か小細工しよったんや」

 影光は溜め息をいた。

「そんな事より……何でお前がアスタト神殿の三大退魔奥義を使えんねん!?」
「何でって……そりゃあウチの家に代々伝わる技やし」
「う、ウチの家!? だ、代々……? ちょっと待て、じゃあナジミは──」

 オサナはうんと頷いた。

「ウチの妹やで。覚えてへん? まさちゃんとお別れするちょっと前に、『遠くに住んでるお母ちゃんが、もうすぐ妹を産むねん』って言うてたの」
「そ、そう言えば……確かにそんな事言うてたわ……」
「元々、年に一回くらいは、オオサカからこっちの世界に戻ってきてたんやけど……5歳の時、生まれたナジミに会う為に、こっちの世界に戻って来る時に、アクシデントで本来戻るべき時間より6年も後に戻って来てしもて……おかげで、ウチの方がお姉ちゃんやのに、あの子より一つ年下やねんで。赤ちゃん見たかったのになー」

 苦笑するオサナだったが、影光はに落ちない事が一つあった。

「いや、でもナジミは姉がいるなんて一言も──」
「……知らんのとちゃうかな」
「え?」
「多分やけど……あの子は、自分に年下の姉がおるなんて知らんと思う」
「何で……?」
「理由は分からへんけど……こっちに戻って来てから、たった2~3日でウチは修行に出されたから、あの子と一緒に過ごした時間って、その数日しかないねん……お父ちゃん、戻る前は『これからは四人で一緒に暮らそう』って言うてたのに……『自分が姉だっていう事は絶対に言うな』って言われるし」

 そう言って、オサナは悲しげな顔をした。

「ワケも分からんと、師匠に預けられて……大人になった今でこそ『何か大変な理由があったんやろな』って思うけど……師匠の所におった時は泣いてばっかりやったわ……影光っちゃんは?」
「俺か? 俺って言うか本体やけど……時代劇俳優やってる」
「えええええっ!? ホンマに!? カッコイイ!!」
「ま、斬られてばっかりやけどな……」
「そ、そうなんや……へー……あはは」
「何やねんその微妙なリアクション、観客には中々伝わらんやろうけど、斬られ役ってめちゃくちゃ大変で重要なポジションなんやからな!? ええか、斬られ役ってのはやな──」
「う、うん………………あひゃっ!?」


 オサナは謎の電波のようなものを受信し、突然白目をいた。


「……あ、あれ? ここは……あっ、ユキヒト」

 影光を止めろ。

「へっ?」

 このまま放っておいたら、奴は『斬られ役の重要性』について、5000文字くらい使って5話分くらい語る!! 奴を……黙らせろ。

「いや、でも……さっきもうっかり『アスタトの地獄』を喰らわせてしもたばっかりやし……無理やわそんなん……ウチにはでけへん!!」

 ……お前がイチャイチャしまくる番外編を考えて──

「ウチに任しとき!! …………はうっ!?」

 オサナは 正気に戻った。

「うーん……あれ? ウチは一体……そや!!」

 思考がぼんやりとして、理由も思い出せないが……やらなければならない。オサナは正体不明の使命感に突き動かされた!!

 オサナは 真・アスタトの地獄を くり出した!!
 会心のいちげき!!
 影光は 沈黙した。


 ……その後、なんやかんやあって、影光達はしばらくの間、双竜塞に逗留とうりゅうする事となった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える

ハーフのクロエ
ファンタジー
 夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。  主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。

元王城お抱えスキル研究家の、モフモフ子育てスローライフ 〜スキル:沼?!『前代未聞なスキル持ち』の成長、見守り生活〜

野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「エレンはね、スレイがたくさん褒めてくれるから、ここに居ていいんだって思えたの」 ***  魔法はないが、神から授かる特殊な力――スキルが存在する世界。  王城にはスキルのあらゆる可能性を模索し、スキル関係のトラブルを解消するための専門家・スキル研究家という職が存在していた。  しかしちょうど一年前、即位したばかりの国王の「そのようなもの、金がかかるばかりで意味がない」という鶴の一声で、職が消滅。  解雇されたスキル研究家のスレイ(26歳)は、ひょんな事から縁も所縁もない田舎の伯爵領に移住し、忙しく働いた王城時代の給金貯蓄でそれなりに広い庭付きの家を買い、元来からの拾い癖と大雑把な性格が相まって、拾ってきた動物たちを放し飼いにしての共同生活を送っている。  ひっそりと「スキルに関する相談を受け付けるための『スキル相談室』」を開業する傍ら、空いた時間は冒険者ギルドで、住民からの戦闘伴わない依頼――通称:非戦闘系依頼(畑仕事や牧場仕事の手伝い)を受け、スローな日々を謳歌していたスレイ。  しかしそんな穏やかな生活も、ある日拾い癖が高じてついに羊を連れた人間(小さな女の子)を拾った事で、少しずつ様変わりし始める。  スキル階級・底辺<ボトム>のありふれたスキル『召喚士』持ちの女の子・エレンと、彼女に召喚されたただの羊(か弱い非戦闘毛動物)メェ君。  何の変哲もない子たちだけど、実は「動物と会話ができる」という、スキル研究家のスレイでも初めて見る特殊な副効果持ちの少女と、『特性:沼』という、ヘンテコなステータス持ちの羊で……? 「今日は野菜の苗植えをします」 「おー!」 「めぇー!!」  友達を一千万人作る事が目標のエレンと、エレンの事が好きすぎるあまり、人前でもお構いなくつい『沼』の力を使ってしまうメェ君。  そんな一人と一匹を、スキル研究家としても保護者としても、スローライフを通して褒めて伸ばして導いていく。  子育て成長、お仕事ストーリー。  ここに爆誕!

異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。 ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。 そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。 視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。 二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。 *カクヨムでも先行更新しております。

異世界転生目立ちたく無いから冒険者を目指します

桂崇
ファンタジー
小さな町で酒場の手伝いをする母親と2人で住む少年イールスに転生覚醒する、チートする方法も無く、母親の死により、実の父親の家に引き取られる。イールスは、冒険者になろうと目指すが、周囲はその才能を惜しんでいる

目が覚めたら異世界でした!~病弱だけど、心優しい人達に出会えました。なので現代の知識で恩返ししながら元気に頑張って生きていきます!〜

楠ノ木雫
恋愛
 病院に入院中だった私、奥村菖は知らず知らずに異世界へ続く穴に落っこちていたらしく、目が覚めたら知らない屋敷のベッドにいた。倒れていた菖を保護してくれたのはこの国の公爵家。彼女達からは、地球には帰れないと言われてしまった。  病気を患っている私はこのままでは死んでしまうのではないだろうかと悟ってしまったその時、いきなり目の前に〝妖精〟が現れた。その妖精達が持っていたものは幻の薬草と呼ばれるもので、自分の病気が治る事が発覚。治療を始めてどんどん元気になった。  元気になり、この国の公爵家にも歓迎されて。だから、恩返しの為に現代の知識をフル活用して頑張って元気に生きたいと思います!  でも、あれ? この世界には私の知る食材はないはずなのに、どうして食事にこの四角くて白い〝コレ〟が出てきたの……!?  ※他の投稿サイトにも掲載しています。

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

酒好きおじさんの異世界酒造スローライフ

天野 恵
ファンタジー
酒井健一(51歳)は大の酒好きで、酒類マスターの称号を持ち世界各国を飛び回っていたほどの実力だった。 ある日、深酒して帰宅途中に事故に遭い、気がついたら異世界に転生していた。転移した際に一つの“スキル”を授かった。 そのスキルというのは【酒聖(しゅせい)】という名のスキル。 よくわからないスキルのせいで見捨てられてしまう。 そんな時、修道院シスターのアリアと出会う。 こうして、2人は異世界で仲間と出会い、お酒作りや飲み歩きスローライフが始まる。

処理中です...