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嘆きの聖女編
巫女、運び込まれる
しおりを挟む226-①
「か……カクさーーーん!!」
思わぬ助っ人に、影光は叫びを上げた。
「足を止めるな影光殿!!」
リュウカクの言葉の通り、彼の放った一矢によって地面に縫い付けられた暗黒樹の根は激しくのたうちまわり、矢を引き抜こうとしている。
「仕留めたわけじゃない!! すぐにまた動き出すぞ!!」
「お、応ッッッ!!」
「城まで走れ、援護する!!」
「頼んだカクさん!!」
「嫌っ、離して下さい、離して──」
〔ええい、煩い人間め!!〕
「ううっ……」
影光とリュウカクのやりとりを聞いたナジミは、何とか逃げ出そうと暴れたが、ネキリ・ナ・デギリが発した光を浴びると、ぐったりと動かなくなってしまった。
「コラーーー!? お前ーーー!? ナジミに何したんだコノヤロー!?」
〔フン、案ずるな。気を失わせただけだ、しばらくすれば目を覚ます〕
「ほ、本当だな!?」
〔魔王剣に……二言無し!!〕
「急げ、影光殿!!」
「応ッッッ!!」
リュウカクの援護を受けながら、影光はひたすらに魔王城目指して駆け……そして辿り着いた。
影光は避難民でごった返す正門を避け、リュウカクと共に秘密の通路から城内に転がり込んだ。
影光はその足で姫の間に駆け込み、ずっと肩に担ぎっ放しだったナジミをマナのベッドの上に下ろした。
「マナ!! ちょっとコイツを預かっといてくれ!!」
「えっ!? えっ!?」
「コイツの手足を縛っとけ!! 優しく厳重にだ!! 俺は離脱の指揮を執る!!」
「えっ、ちょっ……し、師匠ーーー!? 『優しく厳重に』ってどういう事ですかーーー!?」
困惑するマナを残し、影光は慌ただしく部屋から出て行った。
「この方が、師匠の大切な方……って、オサナさん!? い、いえ……よく似ていますが……」
運び込まれた女性を見たマナは驚いた。影光が担ぎ込んだ女性は……オサナにとてもよく似ていた。
226-②
「う……ん」
ナジミは目を覚ました。
「ここは……!!」
上半身を起こし、周囲を見回した。自分が今いるのは、石造りの壁に囲まれた広い部屋で、大きなベッドの上だった。
ナジミは自分の身に起きた事を思い返した。
「私は……武光様の影の人に魔王城に連れ去られそうになって……そうだ、武光様!! 武光様は!?」
慌ててベッドから降りたナジミは、窓に近付き、外に広がる光景を見て愕然とした。
彼女の視線の先では、街を破壊し尽くし、逃げ惑う人々を取り込んで、ソウザン城よりも巨大に成長した暗黒樹が、街中に上がる火の手に照らされ聳え立っていた。そして、視線の先の漆黒の巨木はどんどん遠ざかってゆく。
「そ……そんな!!」
武光様を助けなければと、ナジミは部屋を飛び出そうとしたが、扉には鍵がかけられていた。
ナジミは激しく扉を叩いた。涙で頬を濡らしながら、何度も、何度も……。
しばらく扉を叩き続けていると、足音が近付いてきた。それは、聞き覚えのある足音……最愛の男性の足音だった。
足音が扉の前で止まった。ナジミは思わず息を呑んだ。そして……目の前の扉が開かれた。
「貴方は……!!」
「お、おう……気が付いたか」
影光が 現れた。
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