斬られ役、異世界を征く!! 弐!!

通 行人(とおり ゆきひと)

文字の大きさ
279 / 282
最後の決着編

斬られ役、傾(かぶ)く

しおりを挟む

 279-①

 シルエッタの処遇も決まり、後片付けも終えた武光は、ナジミと二人で魔王城の周囲を散歩していた。

「やれやれ、ようやく一件落着やな」
「……助けに来てくれて本当にありがとうございました、武光様。やはり貴方は、私の見込んだ勇者様です!!」
「よせよせ、照れ臭いわそういうの。それより……面倒事は片付けたし、これで思う存分イチャついても怒られへんやろ?」
「えー? 武光様ったら……やだもう」

 イチャつく二人だったが…… 

「「「「そこまでだ唐観武光……!!」」」」

 突如として頭上から降り注いだ声に、二人は天を見上げた。

 二人の頭上にそれぞれ、赤・青・黄・緑に輝く四つの光球が浮かんでいる。

 火神ニーバング・水神シュラップス・地神ラグドウン・風神ドルトーネが武光とナジミの前に降臨したのだ。

「ゲェーッ!? あれは……神様達!?」
「武光様、平伏して下さい!!」
「お、おう!!」

 ゆっくりと降下してくる神々に対し、ナジミは即座に平伏し、武光もナジミにならって平伏した。

「二人共、面を上げよ」

 地神ラグドウンの言葉を聞き、武光とナジミは顔を上げた。
 ピリピリとした雰囲気を感じながら、武光は恐る恐る質問した。

「あ……その、ご無沙汰しております。本日はどう言ったご用件で……?」

 武光の質問に、ラグドウンは答えた。

「唐観武光よ……お主を……元いた世界に送り返しに来た」
「えっ!?」

 突然の事に戸惑う二人をよそに、風神ドルトーネが告げる。

「君は今回、不正な手段でこちらの世界に渡ってきた……本来なら、問答無用で抹殺に値する大罪だ」
「ゲェーッ!? ままま抹殺ぅぅぅ!?」

 物騒過ぎる言葉に、武光はビビリまくった。

「……しかし、君には魔王を討伐し、この地に平穏をもたらしたという功績がある……よって、その事は不問にしてあげよう。だが……不正な手段で渡ってきた者をいつまでもこちらの世界に置いておくわけにはいかない」
「お待ち下さい!! そんな急な──」
「我々に逆らうというのですか? アスタトの巫女よ」

 抗議しようとしたナジミの言葉を水神シュラップスが遮った。

「勝手に渡って来た罪は不問に付します。しかし、彼が必要以上にこの世界に居座り続けるというのであれば、不本意ながら……我々は彼を排除しなければならなくなります。彼を送り返すというのは……我々の慈悲なのです」

 崩折れそうになるナジミの肩を抱いて支える武光に、今度は火神ニーバングが語りかける。

「安心しな。お前を元の世界に戻した後、万が一アスタトの巫女が危機に襲われるような事があれば、その時は俺達が──」
「その時は、不正だろうが何だろうが……どんな手を使ってでもこっちの世界に来て……俺はナジミを守ります!!」

 ニーバングの言葉を遮り、武光は断言した。

「お前……俺達の話を聞いてたか?」
「僕は言ったはずだよ、不正な手段でこちらに渡ってきた者は問答無用で抹殺──」
「ほんなら……バレへんようにやります!!」

 ニーバングとドルトーネの言葉に対し、武光は言い放った。

「正気か、お主!?」
「心配なのは分かりますが、アスタトの巫女は我々が責任を持って神の加護を与えて庇護します」

 ラグドウンとシュラップスの言葉に対し、武光は悪役らしくニヤリと笑った。

「へのつっぱりは……いらんですよッッッ!!」

 ……四神は思った。

(言葉の意味はよく分からんが、とにかく凄い自信だ!!)

 ……と。

 しかしながら、武光の言い放った内容は神々にとって、到底看過出来るものではない。

「武光よ……お主、我らの命に従わぬと申すか……!?」
それがし、天下御免の斬られ役なれば!!」

「君の言っている事は、大いなる掟を破るという事なんだよ!?」
「掟破りは悪役の特権にござる!!」

「大いなる掟を破るという事は、神々をも敵に回すという事なのですよ!?」
「掟破りは悪役の魅せ場にござる!!」

「掟を破ってでもソイツを守るってのか……!!」
「掟破りは……悪役の華なればッッッ!!」

 問い詰める神々に対し、武光は悪びれもせず、大胆不敵にかぶいたが、言い終わった瞬間、武光はナジミにぶん殴られた。

「ちょっ、おまっ!? いきなり何すんねん!?」
「武光様のバカーっ!! か、神々に対し何と無礼な!! そんなのが格好良いとでも思ってるんですか!? そんなの格好良さ2点です!! 2点!! 本当に抹殺されちゃったらどうするんですかーーーっ!?」
「に……2点!? それって……2点満点で、やんな……?」
「100点満点で、ですっ!!」
「はぁぁぁっ!? ちょっ……神様今の聞きました!? ヒドないスか!?」

 格好良さ2点の男は、神々に同意を求めたが、神々からすれば、『知らんがな』である。

「ほんなら……お前が逆の立場やったらどうすんねんコラーーー!?」
「私は武光様みたいに掟破りなんてしないですもん!! きちんとお許しを頂いてから助けに行きますぅぅぅ!!」
「そのお許しとやらが貰われへんかったらどうすんねん!?」
「神々を呪いまくってでも私はきちんとお許しをもらいますぅぅぅ!!」

「「「「えぇー……」」」」

 ……神々は呆れて溜め息を吐いた。

 地神の溜め息が武光とナジミの足元を揺らし、火神の溜め息に含まれる熱気と水神の溜め息に含まれる水気みずけが混ざり合ったものが風神の溜め息に乗って二人の間を吹き抜けた。

 四神は一度上空まで上昇し、何かを話し合った後、再び降下してきた。

 四神を代表してラグドウンが武光に告げた。


「協議の結果……お主に新たに作った神具を授ける事にした」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

家ごと異世界転移〜異世界来ちゃったけど快適に暮らします〜

奥野細道
ファンタジー
都内の2LDKマンションで暮らす30代独身の会社員、田中健太はある夜突然家ごと広大な森と異世界の空が広がるファンタジー世界へと転移してしまう。 パニックに陥りながらも、彼は自身の平凡なマンションが異世界においてとんでもないチート能力を発揮することを発見する。冷蔵庫は地球上のあらゆる食材を無限に生成し、最高の鮮度を保つ「無限の食料庫」となり、リビングのテレビは異世界の情報をリアルタイムで受信・翻訳する「異世界情報端末」として機能。さらに、お風呂の湯はどんな傷も癒す「万能治癒の湯」となり、ベランダは瞬時に植物を成長させる「魔力活性化菜園」に。 健太はこれらの能力を駆使して、食料や情報を確保し、異世界の人たちを助けながら安全な拠点を築いていく。

底辺から始まった俺の異世界冒険物語!

ちかっぱ雪比呂
ファンタジー
 40歳の真島光流(ましまみつる)は、ある日突然、他数人とともに異世界に召喚された。  しかし、彼自身は勇者召喚に巻き込まれた一般人にすぎず、ステータスも低かったため、利用価値がないと判断され、追放されてしまう。  おまけに、道を歩いているとチンピラに身ぐるみを剥がされる始末。いきなり異世界で路頭に迷う彼だったが、路上生活をしているらしき男、シオンと出会ったことで、少しだけ道が開けた。  漁れる残飯、眠れる舗道、そして裏ギルドで受けられる雑用仕事など――生きていく方法を、教えてくれたのだ。  この世界では『ミーツ』と名乗ることにし、安い賃金ながらも洗濯などの雑用をこなしていくうちに、金が貯まり余裕も生まれてきた。その頃、ミーツは気付く。自分の使っている魔法が、非常識なほどチートなことに――

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

【完結】前世の不幸は神様のミスでした?異世界転生、条件通りなうえチート能力で幸せです

yun.
ファンタジー
~タイトル変更しました~ 旧タイトルに、もどしました。 日本に生まれ、直後に捨てられた。養護施設に暮らし、中学卒業後働く。 まともな職もなく、日雇いでしのぐ毎日。 劣悪な環境。上司にののしられ、仲のいい友人はいない。 日々の衣食住にも困る。 幸せ?生まれてこのかた一度もない。 ついに、死んだ。現場で鉄パイプの下敷きに・・・ 目覚めると、真っ白な世界。 目の前には神々しい人。 地球の神がサボった?だから幸せが1度もなかったと・・・ 短編→長編に変更しました。 R4.6.20 完結しました。 長らくお読みいただき、ありがとうございました。

スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞 奨励賞、いただきました!! スティールスキル。 皆さん、どんなイメージを持ってますか? 使うのが敵であっても主人公であっても、あまりいい印象は持たれない……そんなスキル。 でもこの物語のスティールスキルはちょっと違います。 スティールスキルが一人の少年の人生を救い、やがて世界を変えてゆく。 楽しくも心温まるそんなスティールの物語をお楽しみください。 それでは「スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました」、開幕です。 2025/12/7 一話あたりの文字数が多くなってしまったため、第31話から1回2~3千文字となるよう分割掲載となっています。

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

修学旅行のはずが突然異世界に!?

中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。 しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。 修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!? 乗客たちはどこへ行ったのか? 主人公は森の中で一人の精霊と出会う。 主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。

現代知識と木魔法で辺境貴族が成り上がる! ~もふもふ相棒と最強開拓スローライフ~

はぶさん
ファンタジー
木造建築の設計士だった主人公は、不慮の事故で異世界のド貧乏男爵家の次男アークに転生する。「自然と共生する持続可能な生活圏を自らの手で築きたい」という前世の夢を胸に、彼は規格外の「木魔法」と現代知識を駆使して、貧しい村の開拓を始める。 病に倒れた最愛の母を救うため、彼は建築・農業の知識で生活環境を改善し、やがて森で出会ったもふもふの相棒ウルと共に、村を、そして辺境を豊かにしていく。 これは、温かい家族と仲間に支えられ、無自覚なチート能力で無理解な世界を見返していく、一人の青年の最強開拓物語である。 別作品も掲載してます!よかったら応援してください。 おっさん転生、相棒はもふもふ白熊。100均キャンプでスローライフはじめました。

処理中です...