斬られ役、異世界を征く!!

通 行人(とおり ゆきひと)

文字の大きさ
14 / 180
復活の聖剣編

戦士達、集う

しおりを挟む


 14-①

 歩き続けること、八日間……武光達は遂に目的の街、セイ・サンゼンに到着した。

 時計の文字盤で例えるならば、時計の中心と1時を結んだ直線の丁度真ん中の辺りに位置する対魔王軍、北の最前線、クツーフ・ウトフ城塞じょうさいの北東にある小さな街である。
 空気が……明らかに違った。正直、アスタトからここに来るまで、武光は異世界の旅を若干楽しんでいた部分もあったのだが、そんな行楽こうらく気分など一瞬で消し飛ぶ程のヒリついた雰囲気だ。

「ホンマに……戦ってんねんな」
「……ええ」

 街の周囲は急遽きゅうきょ作られたのであろう丸太を組み上げたさくに囲まれ、空堀からぼりが掘られている。その物々しさに、いやおうでもここが命のやり取りの最前線だという事を思い知らされる。

 これから、この地にまつられている風の神に会って、異界渡りの秘法を行う為に力を分けてもらわなければならない。
 武光達は西と東、そして南の三方にある街の入り口のうち、西の入り口から街に入った。

「武光殿ーっ!!」

 街に入った武光が戦いの気配に圧倒されていると、後ろから声をかけられた。

「おお、ヴァっさーん!!」

 振り返ると、リヴァルとその仲間達がいた。リヴァルは武光の元へ駆け寄った。

「武光殿もこちらに来られていたのですね!!」
「おう、ヴァっさんもか!!」
「ハイ!! あっ、そうだ。私の仲間を紹介しておきます」

 リヴァルに呼ばれて、大剣を背負った大男と、扇を持った女性と、真面目そうな青年が、武光の元へやって来た。

「……ヴァンプ=フトーだ」
「キサン=ボウシンと申しますー、はじめましてー」
「はじめまして!! 唐観武光っていいます!!」
「はじめまして、アスタト神殿で巫女を務めさせて頂いております、ナジミと申します」

 武光とナジミはヴァンプとキサンにペコリと頭を下げた。

「それと、こちらの方が……」
「リヴァルさん達の監査武官を務めさせて頂いております、ダント=バトリッチと申します」
「ん? バトリッチ……? あっ、もしかしてジャイナさんの家族とか?」
「ええ。彼女は私の親戚なのですよ。彼女はどこです!?」
「あれ、ジャイナさーん? おっかしいな、さっきまでおったのに……」

 武光は周囲を見回したが、ジャイナの姿は消えていた。

「ところで武光殿、いにしえの聖剣はもうご覧になりましたか?」
「ああ、ジャイナさんが言うてた……まだやけど」
「丁度良かった。我々はこれから聖剣を見に行く所なのです。一緒にどうですか?」
「よっしゃ、行こか!!」

 武光達はリヴァル達と共に、聖剣がまつられている中央広場へ向かった。

「……なんか、武装した奴が一杯おるなー」
「彼らは、私達と同じく、魔王討伐に志願した者達です。あれを……」

 リヴァルが指差した方を見ると槍をたずさえた三人組がいた。三人の槍の柄は真紅に塗られており、鎧の胸当てには赤色で太陽の紋章が描かれている。

「彼らは、日輪三本槍にちりんさんぼんやり、名の知れた傭兵部隊です。他にも蒼月傭兵団そうげつようへいだんや、烈火紅蓮隊れっかぐれんたい水竜僧兵団すいりゅうそうへいだん、ユグドラシル、国土を守る会など、名だたる戦士達が……」
「ちょっとお待ちなさい、そこの青年達っ!!」

 呼ばれて振り返ると、金ピカの……それはもう、何だか無性に両肩に『百』と書き込みたくなるくらい金ピカの鎧をまとった三人組が立っており、その中からリーダーらしき長身の男が出てきた。

「私達の事を忘れてるんじゃないかしら、この《うるわしの黄金騎士団》を!!」
「……でヴァっさん、どれが聖剣なん?」
「あの広場の中央にあるのが…」
「無視するんじゃないわよッッッ!!」
「あーもう、何すか?」
「貴方達……私達の事を知らないなんて余程の田舎者なのね。どうりで芋臭いもくさいと思ったわ。良いわ……教えてあげる!!」

 いや、別に良いです。という武光達の言葉を無視して、金ピカ三人組の内、両手に金の斧を持った男がポーズを取った。

「戦場を舞う蝶……サン=ジガジー!!」

 続いて、柄の両端に穂の付いた金の槍を持った男がポーズを取る。

「戦場に咲く花……ヤウロ=イダジ!!」

 そして最後に、先程の男が金の剣をさやから抜き放ち、ポーズを取った。

「そして私が、戦場を照らす綺羅星きらぼし……シルナトス=レボウゥゥゥヌッッッ!!」

 各々おのおのポーズを取って名乗った三人は一箇所に集まって再びポーズを取った。

「我ら!! 麗しのぉぉぉっ……黄金騎士団ッッッ!!」

 武光始め、周囲にいた誰もが呆気に取られた。

「ふっふっふ……おいもちゃん達!! 我々のあまりの美しさに声も出ないようね!!」
「お芋さんて……大阪のオバチャンかっ!? あんたら……酔っ払ってんのかいな?」(※大阪のオバチャンは何故か食べ物に敬称を付けます。お芋さん、あめちゃん、おかいさん等々……テストには出ません)

「あら、随分ずいぶん生意気な口をきいてくれるじゃない?」

 険悪な雰囲気を見て取ったナジミが慌てて二人の間に入った。

「ちょっ!? お二人とも喧嘩けんかはダメですよっ!!」
「お黙りっ!! この美しさの欠片も無い、田舎っぺの芋巫女《いもみこ》がっ!!」
「い、イモ……」

 シルナトスの暴言でシュンとしてしまったナジミを見て、武光は激怒した。

「ああ!? お前今何て言うた……ナジミに謝れやコラァ!!」
「た、武光様……」
「こいつをナメんなよ!! 『美しさが無い』かなんか知らんけどなぁ……注意力と集中力と……あと胸はもっと無いねんぞコラァ!!」
「オラァっ!!」

 ナジミは武光にドロップキックを食らわし、倒れた武光にサソリ固め(に酷似した技)をめた。

「ぎゃああああああああ!? ギブギブギブ!!」
「うるさーい!! 武光様の……バカーっ!!」
「ぎゃああああああああ!?」


〔ええい……騒がしい!!〕


 広場に大きな声が響き渡った。広場にいた全員の視線が、声のした方へと向いた。

 ……そこにあったのは、地面から斜めに突き出したくいに突き刺さった、一振りの古びた剣だった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...