斬られ役、異世界を征く!!

通 行人(とおり ゆきひと)

文字の大きさ
16 / 180
復活の聖剣編

斬られ役、疾走する

しおりを挟む
 
 16-①

「武光様、起きて下さい!!」
「唐観武光、起きなさい!!」
「うーん……あと5分……」
「……せいっ!!」
「うげぇっ!?」

 ジャイナの めざましエルボードロップ!!
 会心の一撃!!
 武光は 飛び起きた。

「ゲフぁっ!? ジャ……ジャイナさん、いきなり何するんですか!?」
「起きない貴方が悪いのよ!! 他の戦士達は我先にと、とっくの昔に出発しましたよ……さっさと準備なさい!!」
「わ、分かった。ちょっと着替えるから部屋から出てってくれへん?」
「……分かりました、部屋の前で待つわ。行きましょ、ナジミさん」
「はい」

 ジャイナとナジミが部屋を出ると、武光はドアを閉めた。

 ……準備なさいと言われても。

 本当は……一睡いっすいも出来ていなかった。命のやり取りなんぞ、こちとら舞台の上でしかした事がないのだ。しかもその命のやり取りも所詮しょせんは芝居、斬られようが刺されようが死ぬ事は無いが、ここから先は斬られたり刺されたりしたら……本当に死ぬ。
 しかも、今度はアナザワルド城に登城した時とは違い、相手は最初からこちらを殺す気満々なのだ。口八丁手八丁くちはっちょうてはっちょうが通じる相手ではない。

 武光は大急ぎで着替えると、宿屋の窓をそっと開けた。とにかく怖かった……とてもじゃないが神殿に向かう気になどなれない。自分はただの斬られ役で、勇者でも戦士でも何でもないのだ。
 一階の部屋だという事が幸いした。っ取り刀で竹光一振りを持って窓から外に出た武光だったが、外に出た瞬間に、誰かに声をかけられた。

「あら? 田舎っぺのお芋ちゃんじゃない。田舎者は窓と扉の区別もつかないのかしら?」
「げっ、金ピカナルシスト……」

 ジャイナは他の連中はとっくの昔に出発したと言っていたが……この金ピカナルシスト共はまだ街に残っていたのか。

「何しとんねん……山に向かったんとちゃうんか?」
「ふふん、私達の見た所……あの山は簡単には攻略出来ないわ。聖剣に目がくらんで我先にあの山に突撃した連中はきっと今頃大苦戦しているでしょう。そうして、有象無象うぞうむぞうちゃん達が絶体絶命の危機におちいった所で私達、麗しの黄金騎士団が颯爽さっそうと登場して……優雅にッッッ!! 華麗にッッッ!! 美しくッッッ!! 敵を蹴散らし……私達の戦いを人々の記憶と心に刻みつけるのよ!!」

 恍惚こうこつの表情を浮かべ、嬉々として語るシルナトスに、武光は強い嫌悪感を抱いた。

「ふざけてんのか!! 皆……命がけで戦ってんねんぞ!!」
「だからこそよ!! 貴方の国で語り継がれている有名な戦いはあるかしら?」

 シルナトスの唐突な問いに戸惑いつつも武光は答えた。

「えっ……そらあるけど……だんうらの戦いとか、関ヶ原の戦いとか、大坂冬の陣・夏の陣とか……」
「その戦いの勝者の栄光や、敗者の生き様は今もきっと語り継がれているのでしょうね。戦場に散った者達は今もしのばれているかもしれないわ……でも」

 シルナトスの表情がどことなく暗くなった気がした。

「……名前も無いような戦いで散った者達はどうかしら……彼らの戦いは? 散りざまは? 戦士の魂は? 誰かがたたええてくれるかしら? 誰かがしのんでくれるかしら?」
「そ、それは……」
「だからこそッッッ!! 私達、麗しの黄金騎士団は……優雅にッッッ!! 華麗にッッッ!! 美しくッッッ!! 命の限りに戦場を舞うの。人々が戦士達の戦いを語り継がずにいられなくなるように……全ての戦場を伝説に!! 全ての戦士に栄光をッッッ!!」

 黄金騎士団の三人はポーズを取った。

「ま……美しさの欠片も無い田舎者には難しい話だったかもしれないわね。そろそろ頃合いね、私達も華麗に出陣──」
「た、大変だーーーっ!!」

 シルナトスの声は、街の東口の方から走ってきた男の叫びにかき消された。

 16-②

「お待ちなさい!!」

 東の入り口の方から武光達の方に走ってきた街の住人を、シルナトスが止めた。

「一体どうしたの?」

「ま……魔物だ……魔物の群れが……《オーク》の大群がこちらに向かって来てる!! に、逃げないと!!」
「落ち着きなさい!! 大群ってどれくらいなの!?」
「や、櫓の上から見た限りだと、少なくとも五十匹はいたように思います。あ、あと10分もすれば街の東口に到達します」

 五十匹を超えるの魔物の群れ、それを聞いて武光は身震いした。

「この街の守備隊は!?」
「か、風の神殿を奪還する為に街を出て行ってしまいました……戻ってくるには時間が……も、もうダメだ!! みんな殺され……あうっ!?」

 シルナトスは男にビンタをかました。

「しっかりしなさい!! 良い事、貴方は街のみんなに家に篭って絶対に出てこないように伝えるの!! 返事は!?」
「は……ハイ!!」

 男は転びそうになりながら再び走り出した。

「五十匹ね……私達だけじゃちょっとキツいかもしれないわね……お芋ちゃん、アンタ達も手伝いなさい!!」

 死の恐怖に怯える武光は思わず後退あとずさった。

「む……ムリや……俺にはでけへん!!」
「やらなきゃ皆、殺されるのよ!? この街の皆も…………アンタの仲間のあの芋巫女も!!」
「皆……殺される……? ナジミも……?」

 逃げ出そうとした武光の脳裏に、アスタト神殿の少年の顔が浮かぶ。


 ~~~~~

 
「ナジミの事……ちゃんと守ってくれよな」
「ああ、ナジミは俺が守ったる。その代わり、カザンはネーアちゃん達をしっかり守ったれよ」


 ~~~~~


 ……心の中で、刀のつばが音を立てた。

「う……うぉああああああーっ!! く……くそったれがぁぁぁーーー!! やったらぁボケェェェーっ!!」
「ちょっ、お芋ちゃん!? どこ行くのよ!?」

 もはやヤケクソである!! 武光は半泣きになりながらも、自らを奮い立たせるように、雄叫おたけび上げて一目散に走り出した。

 目指すは街の中央広場だ。魔物の群れは……すぐそこまで迫っている。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

お持ち帰り召喚士磯貝〜なんでも持ち運び出来る【転移】スキルで異世界つまみ食い生活〜

双葉 鳴
ファンタジー
ひょんなことから男子高校生、磯貝章(いそがいあきら)は授業中、クラス毎異世界クラセリアへと飛ばされた。 勇者としての役割、与えられた力。 クラスメイトに協力的なお姫様。 しかし能力を開示する魔道具が発動しなかったことを皮切りに、お姫様も想像だにしない出来事が起こった。 突如鳴り出すメール音。SNSのメロディ。 そして学校前を包囲する警察官からの呼びかけにクラスが騒然とする。 なんと、いつの間にか元の世界に帰ってきてしまっていたのだ! ──王城ごと。 王様達は警察官に武力行為を示すべく魔法の詠唱を行うが、それらが発動することはなく、現行犯逮捕された! そのあとクラスメイトも事情聴取を受け、翌日から普通の学校生活が再開する。 何故元の世界に帰ってきてしまったのか? そして何故か使えない魔法。 どうも日本では魔法そのものが扱えない様で、異世界の貴族達は魔法を取り上げられた平民として最低限の暮らしを強いられた。 それを他所に内心あわてている生徒が一人。 それこそが磯貝章だった。 「やっべー、もしかしてこれ、俺のせい?」 目の前に浮かび上がったステータスボードには異世界の場所と、再転移するまでのクールタイムが浮かび上がっていた。 幸い、章はクラスの中ではあまり目立たない男子生徒という立ち位置。 もしあのまま帰って来なかったらどうなっていただろうというクラスメイトの話題には参加させず、この能力をどうするべきか悩んでいた。 そして一部のクラスメイトの独断によって明かされたスキル達。 当然章の能力も開示され、家族ごとマスコミからバッシングを受けていた。 日々注目されることに辟易した章は、能力を使う内にこう思う様になった。 「もしかして、この能力を金に変えて食っていけるかも?」 ──これは転移を手に入れてしまった少年と、それに巻き込まれる現地住民の異世界ドタバタコメディである。 序章まで一挙公開。 翌日から7:00、12:00、17:00、22:00更新。 序章 異世界転移【9/2〜】 一章 異世界クラセリア【9/3〜】 二章 ダンジョンアタック!【9/5〜】 三章 発足! 異世界旅行業【9/8〜】 四章 新生活は異世界で【9/10〜】 五章 巻き込まれて異世界【9/12〜】 六章 体験! エルフの暮らし【9/17〜】 七章 探索! 並行世界【9/19〜】 95部で第一部完とさせて貰ってます。 ※9/24日まで毎日投稿されます。 ※カクヨムさんでも改稿前の作品が読めます。 おおよそ、起こりうるであろう転移系の内容を網羅してます。 勇者召喚、ハーレム勇者、巻き込まれ召喚、俺TUEEEE等々。 ダンジョン活動、ダンジョンマスターまでなんでもあります。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

処理中です...