斬られ役、異世界を征く!!

通 行人(とおり ゆきひと)

文字の大きさ
24 / 180
復活の聖剣編

姫、暴れる

しおりを挟む

 24ー①

 武光とナジミの二人は、両手をうししばられて、神殿前の広場に引きずり出された。

「貴様が余計な事をしたせいでわしの栄達の道は閉ざされた……そのむくいを受けさせてくれる!!」

 アクダが下卑げびた笑いをあげる。武光達は必死で言い逃れようとした。

「だーかーらー、何べんも言うてるやないですか、人違いなんですってー、あっしは水戸山田みとやまだ 金之助きんのすけっていう、越後えちご縮緬問屋ちりめんどんやの三男坊で遊び人なんですってー!?」
「そ、そうですっ!! 人違いですっ!!」
「二人して変顔で誤魔化そうとするな!! 貴様らのような黒い髪の人間はこの国にはそうそうおらん!! それに貴様が背負っているのは聖剣イットー・リョーダンであろうが……貴様は手足を切り落とした後、背中の呪われし聖剣もろとも火あぶりにしてくれる!!」

 武光がイットー・リョーダンを背負ったまま縛られているのは、アクダ達が『触れたら自ら死を望む程の地獄の苦しみに襲われる』という聖剣の呪い(嘘っぱちだが……)を恐れた為だ。

〔ひ、火あぶりだと!? ま、待て!! 我は何の変哲も無いただの丸太だ!!〕
「何の変哲も無い丸太が喋るかーーー!!」
「くっ、この外道、鬼畜、アホーーー!! それでも軍人かー!?」
「ふん、貴様は特に念入りに拷問ごうもんして殺してやる!!」
「げふぁっ!? ゴホッゴホッ!!」

 腹を蹴り上げられた武光は激しくき込み、転げ回った。

「武光様っ、大丈夫ですか!?」

 心配そうに近付いてきたナジミに、武光は小声で言った。

「……心配すんな、俺らみたいな斬られ役は、殴られたり蹴られたりした瞬間に、相手の動きに合わせて体を曲げる事で体へのダメージを最小限に抑えて、相手の攻撃をさも痛そうに観客に見せる技を持ってんねん……………ミスったけどな!!」
「ダメじゃないですか!?」
「うん……めっちゃ痛い。くっそー、あのデブ」
「さて……右手と左手どっちから切り落として欲しい?」

 アクダが目を血走らせながら腰の剣を抜いたその時だった。

「お待ちなさいッッッ!!」

 捕らえられた武光達の前にジャイナが現れた。

「ジャイナさん!?」
「た、助けて下さいー!!」

 ジャイナはアクダに捕まった二人を見ると、アクダを “キッ” とにらみつけた。

「アクダ=カイン……既に調べはついてます。軍令を盾にした街の人々への略奪・乱暴狼藉らんぼうろうぜきの数々!! 更には、私怨で国王より任命された魔王討伐兵を謀殺ぼうさつしようとしたその行い……断じて許せません!!」
「フン、一介の監査武官ごときが何を抜かす!! 儂は……セイ・サンゼンの代官だぞ!!」
「……それがどうかした?」

 そう言って、ジャイナは仮面を脱いだ。

「なっ!?」
「私の顔……見忘れたとは言わせませんっ!!」
「み……ミト姫様!?」

 ジャイナの正体を知ったアクダとその部下達が剣をさやに納め、大慌てでひざまずく。

「アクダ=カイン……貴方の悪事は数々の証拠と共に、お父様に報告させて頂きます、覚悟しておきなさい!!」

 アクダ達は一言も発する事無く、青くなってぶるぶると震えている。この光景を前に、武光は思わず叫んでしまった。



「ええい……狼狽うろたえるな!! 姫様がこのような所におられるわけなかろう!!」



 条件反射とは恐ろしいものである。

 悪役の悲しきさがでうっかり発してしまった武光の言葉にアクダ達が反応する。

「フフフフフ……そうだ。王家の姫君がこのような所におられるはずがない。皆の者、此奴こやつは偽者だ!!」

 立ち上がり、一斉に抜刀したアクダ達を見て武光は絶叫した。

「や……やってもうたあああああーーーーー!!」
「ちょっ、武光様!? 何言ってるんですかっ!?」
「す、すまん……つ、つい……」
「武光様の……バカーーーーーっ!!」
「痛い痛い痛い!!」

 武光はナジミに鬼のようにローキックされまくった。

「皆の者……ミト姫様の名をかたる不届き者を斬り捨てよ!!」

 ミトは小さく息を吐くと、剣を抜き八双に構えた!!

「仕方ありません、私自ら成敗してあげます……光栄に思いなさい!!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

完結【真】ご都合主義で生きてます。-創生魔法で思った物を創り、現代知識を使い世界を変える-

ジェルミ
ファンタジー
魔法は5属性、無限収納のストレージ。 自分の望んだものを創れる『創生魔法』が使える者が現れたら。 28歳でこの世を去った佐藤は、異世界の女神により転移を誘われる。 そして女神が授けたのは、想像した事を実現できる創生魔法だった。 安定した収入を得るために創生魔法を使い生産チートを目指す。 いずれは働かず、寝て暮らせる生活を目指して! この世界は無い物ばかり。 現代知識を使い生産チートを目指します。 ※カクヨム様にて1日PV数10,000超え、同時掲載しております。

貧弱の英雄

カタナヅキ
ファンタジー
この世界では誰もが生まれた時から「異能」と「レベル」呼ばれる能力を身に付けており、人々はレベルを上げて自分の能力を磨き、それに適した職業に就くのが当たり前だった。しかし、山奥で捨てられていたところを狩人に拾われ、後に「ナイ」と名付けられた少年は「貧弱」という異能の中でも異質な能力を身に付けていた。 貧弱の能力の効果は日付が変更される度に強制的にレベルがリセットされてしまい、生まれた時からナイは「レベル1」だった。どれだけ努力してレベルを上げようと日付変わる度にレベル1に戻ってしまい、レベルで上がった分の能力が低下してしまう。 自分の貧弱の技能に悲観する彼だったが、ある時にレベルを上昇させるときに身に付ける「SP」の存在を知る。これを使用すれば「技能」と呼ばれる様々な技術を身に付ける事を知り、レベルが毎日のようにリセットされる事を逆に利用して彼はSPを溜めて数々の技能を身に付け、落ちこぼれと呼んだ者達を見返すため、底辺から成り上がる―― ※修正要請のコメントは対処後に削除します。

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

処理中です...