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復活の聖剣編
斬られ役、成敗する
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「へっへっへ……可愛がってやるぜ、お姫様よお……おらぁぁぁ!!」
一人の男がミトに真っ向から斬りかかったが、ミトはそれをひらりとかわして後ろに回り込むと、剣の柄頭で相手の後頭部を思いっきり殴りつけた。殴られた男は、ぐぅと呻いて、その場に崩れ落ちた。
「くっ、このアマ!! ……ぎゃっ!?」
「てめぇ!! ……ぐはっ!?」
「くそっ!! ……がはっ!?」
兵士達が次々とミトに襲いかかるが、ミトは敵の斬撃を華麗にかわして、柄頭を相手の後頭部や鳩尾に叩き込んでゆく。次々と倒される兵士を見て、アクダは声を荒げた。
「ええい、何をしておる!! 囲んで討ち取るのだ!!」
剣を構えるミトに対し、アクダの部下達がミトをぐるりと取り囲んだ。兵士達は剣を前方に向けたままジリジリと包囲の輪を縮めてゆく。
この状況はマズイ、武光はそう思った。
オーク達との戦いで痛感した事だが、現実の戦いでは時代劇のように順番に斬りかかってきてくれたりはしない。このままではミトは、寄って集って滅多刺しにされてしまう!!
「う……うおおおおおーーーっ!!」
……自分を頭数に入れても2対20である。あの輪の中に飛び込んだりしたら、自分もズタズタに斬り刻まれてしまうかもしれない。
それでも武光は、ちっぽけな……しかしありったけの勇気をで必死こいて捻り出し、背中のイットー・リョーダンで手首を後手に縛っている縄を切ると、ミトを救出すべく、彼女を取り囲む兵の一人に、背後から飛び蹴りを食らわし転倒させた。
「だぁぁぁりゃぁぁぁぁぁっ!!」
すかさず転倒した敵の左に立っていた奴の剣を袈裟懸けに切断し、返す刀で倒れた敵の右に立っていた奴の剣を下から上へ斬り飛ばす。
「はあっ……はあっ……お前ら全員、呪われろぉぉぉぉぉっ!!」
イマイチ締まらない叫びを上げて、武光は包囲の兵士達に襲いかかった。兵士達の剣をイットー・リョーダンで次々と斬り飛ばす。
「お、俺の剣が切られたー!?」
「……何て切れ味なんだ!!」
「ま、魔剣だ……あいつが持ってるのは聖剣なんかじゃない、恐ろしい魔剣だ!!」
剣が使い物にならなくなったとしても、寄ってたかってタコ殴りにすれば良さそうなものだが、イットー・リョーダンのアホみたいな切れ味に度肝を抜かれ、戦意を喪失した兵士達の一部が包囲を解き、逃げ出した。
包囲の崩れた場所を突いて、包囲の輪の中から抜け出したミトは、武光と背中合わせになった。
「大丈夫ですか、えっと……姫様」
「当然です!! さぁ、一緒にこの雑兵共を蹴散らして、アクダに正義の鉄槌を下すのです!!」
「無茶言わんとって下さい!! こっちは2人、相手はまだ10人近くおるんですよ!? あの壁を突破するなんて無理──」
その時、ナジミの悲鳴が聞こえた。武光が悲鳴のした方に視線をやると、アクダがナジミを人質に取ろうと追いかけ回していた。
「姫様、背中……預けても良いですか?」
「……ええ」
「後ろの敵は任せます!! ……あと、右の敵と左の敵と出来れば前も!!」
「えっ、ちょっ!?」
「このクソデブが……ナジミに何しとんじゃコラァァァァァ!!」
武光はイットー・リョーダンを左脇に構えると、敵兵の壁目掛けて、雄叫びをあげながら突撃した!! ミトも慌てて後を追う。
「てめぇら、あいつを串刺しにしちまえ!!」
敵兵が剣先をずらりと並べて迎撃の構えを取ったが、武光は走る勢いを止めなかった。
「邪魔すんな……ボケぇぇぇぇぇっ!!」
イットー・リョーダンを左から右になぎ払って相手の剣先を切り飛ばし、武光は敵兵の群れへと突入した。
そこから先は大乱闘だった。敵兵の群れに飛び込んだ武光は、剣の柄で目に付いた相手を片っ端からぶん殴り、そして、相手からぶん殴られ、蹴り飛ばし、蹴り飛ばされ……泥仕合の様相を呈していたが、ミトが追いついてくると、剣を折られて丸腰にされていた敵兵達は、散り散りになって逃げ出した。
所詮はアクダにくっついて甘い汁を吸おうとしていただけの連中である。
いざという時に、命を張ってアクダの盾になろうとする者などいなかったのだ。
武光は遂に敵兵の壁を突き抜けた。
「うおおおおお!! 聖剣……パァァァンチ!!」
「ぐへぇ!?」
武光は、右手のイットー・リョーダンを逆手に持ち替え、うつ伏せに転倒したナジミに馬乗りになろうとしていたアクダを、思いっきり殴り飛ばした。
「無事か!?」
「は……ハイ!!」
ナジミに駆け寄った武光は、イットー・リョーダンでナジミの手首を縛る縄を切った。
「よっしゃ。それじゃあ後は……」
「ええ。あの悪漢に一発ぶちかますだけですっ!!」
「そうね、王家の者に刃を向けた罪は重いわ」
三人は地面にへたり込んでいるアクダをキッと睨みつけた。
「さて、どうしましょうかねぇ……やっぱり風神ドルトーネ様への生贄ですかねぇ……?」
「おう、手足を切り落として、火あぶりにした後な」
「ちょっと待ちなさい、この男は王家の姫であるこの私を亡き者にしようとしたのですよ? それでは罰が軽すぎます!!」
「ひぃっ、助けて……」
すっかり腰を抜かしてしまったアクダは必死で手足をばたつかせて逃げようとしたが、すぐさま武光達に取り囲まれてしまった。
「おっさん……話し合いの結果、『面倒臭いから、今すぐぶっ殺す』って事になったわ。イットー・リョーダンも血を吸いたがってるし……」
〔血を……我に血を吸わせよォォォォォ!!〕
「ま、そういう事やから」
武光はイットー・リョーダンをゆっくりと上段に構えた。
「ま、待て!! 待って──」
「……成敗っ!!」
「……どりゃあああああっ!!」
ミトの言葉を聞いて、武光はイットー・リョーダンを振り下ろした。
「ひっ……ひぃぃぃぃぃっ!?」
アクダは白目を剥いて気絶してしまった。振り下ろされたイットー・リョーダンはアクダの鼻先数cmで止められている。
「ふふん……なかなかの演技やったで、ナジミもイットー・リョーダンも」
「武光様こそ」
〔そうであろう、そうであろう〕
武光とナジミは互いに顔を見合わせ、ニヤリと笑った。
「……それじゃあ、次は手足を切り落として火あぶりね」
「は? いやいやいやいや、しませんよそんな事!!」
「そうです、神聖な場所で血を流すなんていけません!!」
「えっ、風の神の生贄にするんじゃないの?」
「そんな事するわけないでしょう!? 大体、生贄なんて風習は大昔から廃止されているんです!!」
「なぁんだ……つまんないの」
……ガチでやる気だったのか。武光とナジミ、イットー・リョーダンはドン引きした。
その後、三人と一振りは、気絶したアクダをパンツ一丁にひん剥いて近くの木に縛り付け、眉毛や髭を片方だけ剃り落としたり、顔や腹に落書きしたりした。
「さてと……それじゃあ、ドルトーネ様にお力添えを賜りましょう!!」
「せやな」
武光とナジミはアクダへの制裁に夢中になっているミトを残して、神殿内部に戻った。
「二人とも無事だったかい?」
「はい、おかげさまで」
「じゃあ、さっきの続きだ。異界渡りの書を出して」
「はい!!」
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