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用心棒編
斬られ役、弟子入りを志願する
しおりを挟む48-①
武光とナジミはカラマク寺院にて、無事に地の神ラグドウンから異界渡りの為の力を分けてもらう事が出来た。
そしてその翌朝、武光とナジミはボゥ・インレの南口、コウカツ軍迎撃の為に築いた防塁の辺りまでやってきた。
ラグドウンによって引き出されたという神の力を試す為だ。ちなみにミトは激しい二日酔いの為、宿屋でダウンしている。
「武光様、ここまで離れる必要あるんですか?」
術の練習なら、宿屋の近くの空き地でも借りれば良いのに、とナジミは思ったが、武光はヤレヤレと言わんばかりに両肩を竦めた。
「今の俺には神の力が宿ってんねんぞ? せっかく守り抜いたボゥ・インレが吹き飛んだらどないすんねん」
「は、はぁ……」
「よっしゃいくで!! はぁぁぁぁぁ……」
武光は腰を深く落とし、深く息を吐いた。
「か……み……か……ぜ……波ァァァァァ!!」
“ぴゅぅーーー”
すかしっ屁みたいなそよ風は……微風に進化していた。
「ぷっ……くくく……武光様、ボゥ・インレ……吹き飛ばなくて良かったですね?」
「ぐぬぬ……ま、まぁ力を引き出してくれたんは地の神さんやし? 風術じゃなくて地術やったらいけるはず!! …………はぁぁぁぁぁっ………地術・ランドウォール!!」
武光はあの時のキサンを真似て地面に手を着き、力を込めたが、地面から20cmくらいの高さまで土煙りが巻き上がっただけだった。
「…………ふむ」
何を思ったのか、武光は一つ頷いた後、突然真上にジャンプした。着地と同時に武光の周囲に土煙りが上がる
「デュアッ!!」
突然の奇行と共によく分からない掛け声を上げて構えを取った武光にナジミは戸惑いながら聞いた。
「えーっと……武光様、何をしてるんですか……?」
「いやー、俺が子供の時好きやったヒーローがな、こういう感じで登場すんねん」
「はぁ……」
「ギリギリまで頑張っても、踏ん張っても、ピンチのピンチのピンチの連続でどうにもこうにもどうにもならん……そんな時に助けに来てくれるねん」
その “ひぃろう” とやらの名前なのだろうか、『がいあー!!』という謎の叫びを上げている武光を見て、ナジミは内心(子供か!!)とツッコミつつ、アスタト村に置いてきたカザンの事を思い出していた。
あー、そう言えばあの子もおとぎ話に出てくる勇者ごっこをしてる時はこんな感じだったなぁ……と。
「うーん、やっぱあかんか……正直あんまり強くなった気せぇへんもんなー」
「やはり、ちゃんと術を使える人から、術の使い方を教わった方が良いのでは?」
「じゃあ、ナジミお前教えてくれ。あの怪我治せる術とか」
「ごめんなさい……癒しの力は、自然の力を操る《術》とは違うものなので……」
「うーん、術を使える人なぁ……そや!!」
とある人物を思い浮かべた武光は、街に向かって走り出した。
「あっ、武光様どちらへ!?」
「ちょっとヴァっさんの所行ってくるわ」
48-②
「わ、私に弟子入りですかー?」
「はいっ!! 俺に術を教えて下さい!!」
リヴァル戦士団が宿泊している宿屋で、武光はキサンに頭を下げていた。
「うーん、でもー、どうしようかしらー……」
突然の申し出にキサンも少し困惑気味だ。
「これからの旅、自分の身とあいつらを守る為にも術を覚えたいんです!! お願いします…………先生!!」
「い……今のをもう一度」
キサンが武光の目をじっと見つめる。武光は困惑しつつも先程言った言葉を繰り返した。
「えっ、えーっと……これからの旅、自分の身と──」
「そうじゃなくってー、最後ですー、最後ー!!」
「……先生?」
「も、もう一回」
「……先生」
「もう一回っ!!」
「先生っ!!」
キサンはぶるりと身震いした。
「あぁ……何て魅惑的な響きなのかしらー? うん、いいですねー、先生かぁー……ウフフ」
「じゃあ、俺を弟子にしてくれますよね? ……先生!!」
「……駄目だぞ、キサン」
うっとりした目で、武光の弟子入りを許可しようとしたキサンをヴァンプが制止した。
「ええー」
「何でですかー?」
キサンと武光がブーイングしたが、ヴァンプは静かに首を横に振った。
「……すまない武光。我々は次の任務で今日の昼にはこの街を出て、一旦クツーフ・ウトフ城塞に戻らねばならん」
「そうですか……ほんなら仕方ないですね、俺らと行き先が違うみたいやし……」
「ちなみに武光さん達は次は何処に向かうように言われてるんですかー?」
「ええと……たしか、ジューン・サンプとか言う街やったと思います」
それを聞いたキサンは、ぱんと手を打った。
「そうだ武光さん、ジューン・サンプならあなたに術を教えてくれそうな術士が一人いますよー、ちょっと待ってて下さいねー、紹介状を書きますからー」
「ほんまですか!! ありがとうございます!!」
「出来ましたー、ジューン・サンプに着いたらこの人を探して下さいねー」
キサンから手渡された紹介状の宛名を武光はじっと見た。
「えっと……リョエン=ボウシン?」
「はいー、私の……兄ですー!!」
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